ユーゴ戦争ユーゴ人道介入の口実「虐殺」デッチ上げ

ユーゴ戦争:報道批判特集
コソボ「ラチャク村住民虐殺」デッチ上げ

1999.7~2000.5《特別緊急連載》

(その1) わが介入への逡巡と周辺徘徊の経過

 ことの発端だが「コソボ虐殺“演出説”」と題する『読売新聞』(1999.1.24)の記事を地元の図書館の縮刷版で発見した時には、いわゆる発見の喜びを味わったのではなくて、実は何を隠そう「嫌な予感」が当たったという重苦しい気分に襲われてしまった。
 要約して説明すると、NATO軍がユーゴ空爆開始の最大のきっかけとした「ラチャク村のアルバニア系住民45人の虐殺事件」の報道が、実は嘘で、欧米が後押しをする「コソボ解放軍」によるNATO軍呼び込みのための「演出」だったという疑問提出の記事である。⇒全文を読む

(その2) 情報収集の基本:「ありとあらゆる手段を尽くす」

 前回の最後に記したように、私は、NHKが、5月14日、夜10時から45分間の3チャンネル「海外ドキュメンタリー」の枠で放映したBBCのユーゴ問題特集、「コソボ紛争・その構図と歴史的背景/民族運動の起源」に出てきた奇妙な映像を見て、即座に、「ラチャク村の『虐殺』事件」はデッチ上げに違いないと確信した。⇒全文を読む

(その3) 野次馬ジャーナリズムがメディアの正統派

 今回のラチャク村「虐殺」事件報道では、『潮』と『読売新聞』の記事が、私の資料探索にとっての決定的な手掛かりとなった。特に『読売新聞』には、私自身の湾岸戦争報道、カンプチアPKO報道などを通じての経験から見て、この種の、こぼれネタ報道の例が多い。あれ、またかいな、と思わず膝を叩きたくなるような、最早、法則的と言えるほどの状況なのである。⇒全文を読む

(その4) 情報収集と分析に当たっては「味方」をも疑え

 1999.7.31。私は、炎暑(摂氏36度)のニューヨーク市を訪れ、「NATOを裁く独立国際戦争法廷」に参加した。開廷前から終了に至るまで、すべてをヴィデオ収録してきた。本誌でも別途、「ユーゴ戦争特集」の単発記事によって報告を続ける。本連載の方では、それ以前からの経験と、さらには法廷前後に垣間見た部分的な事実を手掛かりとして、アメリカの市民運動における情報収集と分析の状況を、一応、論じてみることにする。⇒全文を読む

(その5) 100年前の至言「嘘のニュースは世界を一周」

日本の新聞で、フランス3紙による「ラチャク村『虐殺』事件」報道への疑惑を、まともに紹介していたのは『読売新聞』(1999.1.24)だけだった。私は、その記事、「コソボ“虐殺”演出説」を図書館の縮刷版で発見する以前に、何人もの市民運動家、大手メディア記者などに、いわゆる「民族浄化」の実態を知っているかと聞いたのだが、誰もまるで知らなかった。ただ、そういう記事、放送にふれて、どうやら事実らしいと感じているだけだった。
 誰も、上記の『読売新聞』記事を読んではいなかった。「ユーゴ空爆反対!」などのスローガンを掲げる集会などに参加する日本の平和主義者は、戦争放棄の9条の改正を中心とする改憲論を掲げる「右翼」の『読売新聞』を敵視しているから、読むわけがない。⇒全文を読む

(その6) 髪の毛もよだつ偽情報を貪る商業メディア

 もともと、お粗末な当局発表頼りの大手商業メディア報道が、この種の「髪の毛もよだつ」(英語でもhair-rasing)偽情報に対して、さらに、なりふり構わず争って飛び付く理由は、最早、論評の必要もないことであって、商業性の剥き出し暴露に他ならない。アメリカの放送では、ABCのニュース解説者が、実は自分たちの仕事のことなのだが、blood-thirty-media(血に飢えたメディア)とさえ表現していた。この種の特ネタがちらつくと、もともと薄い「理性」の仮面が、バラリと剥げ落ちるのである。
 放送が特に批判されるべきであるとすれば、その記録の非公開性である。特に日本がひどい。⇒全文を読む

(その7) 軍事の経済的土台:石油資本帝国に臆する報道

 前世紀から世界有数、今もなお、ますます埋蔵量豊富情報乱れ飛ぶカスピ海の石油を、南側の反米国家、イランやイラクには絶対に渡さずに、アゼルバイジャン、チェチェン、ダゲスタン経由、黒海を渡ってバルカン半島経由で、途中でしっかり稼ぎながら、ヨーロッパにパイプラインで運ぶ。これが現在進行中の国際戦争の真の経済的土台なのです。早い話が、ユーゴ戦争が停戦になった直後に、チェチェンの北側のダゲスタンのゲリラ掃討作戦が報道され始めました。落ち目の元宗主国、ロシアとしては、最後の石油利権の確保に必死なのです。⇒全文を読む

(その8) Annex-Bの主任務は自国民対象の「謀略」

 この「合意文書」の主たる任務は、到底応じられない無理難題を吹っ掛け、ミロシェヴィッチに拒否させることによって、主戦派の大将、オルブライト国務長官の足元のアメリカ人に、「頑迷な独裁者のミロシェヴィッチが『和平』合意を拒否したのだ」と思い込ませ、怒らせることにあった。謀略の対象が、敵軍でも、敵国民でもなく、自国民だったことにこそ、この謀略の現代的な腐朽の度の深さがあるのである。⇒全文を読む

(その9) アルバニアがコソボを合併:米21世紀予測地図

 マジックペンによるらしい乱暴な手書きの太い矢印が、ヨーロッパの地図の「コソボ州」の真ん中から、アルバニアの真ん中まで引かれている。その右に並んだ手書きの線が真下へ伸びて、そこに四角の白い紙片が貼られている。手書風の細文字で3段。
     Kosovo
   becomes part
    of Albania
(コソボはアルバニアの一部になる)
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(その10) 東チモールでもアメリカの本音は石油確保

 アメリカの本音は石油確保と見抜け」を予定していたところ、「東チモール」内戦が勃発した。軍事科学でも両面作戦を戒めているので、そちらの最新情報収集は諦め、その代わりに急ぎ、ユーゴ戦争と共通する石油資源が、インドネシアと東チモールの命運を握る旨の注意だけを、mailで流した。
 ところが、この件では、直ちに、まさに「アメリカの本音」の最新版が、しかも、東チモールとユーゴを結び付ける形のインターネット情報として伝わってきた。⇒全文を読む

(その11)「米ロ覇権争い」カスピ海石油の報道状況

『日本経済新聞』(1999.9.20) 9面・国際14版 NEWSインサイト イスラム原理主義/過激に ロシアで国際テロ網構築進む
カスピ海石油めぐる武装勢力と大国の思惑
「(チェチェン武装勢力の)目標はチェチェンとダゲスタンをともに独立させ、連邦国家を創設することだ」
「ロシアのカスピ海沿岸部の3分の2を占めるダゲスタンを取り込めばこの連邦国家はエネルギー資源の宝庫とされるカスピ海に権益を持つことになる」
「武装勢力は、カフカス・中央アジアの資源に関心を示す外国の関与を嫌っている。昨年までチェチェンのマスハドフ政権との協力に関心を示した英国は現地で英国人技師が誘拐、殺害された後、手を引いた」⇒全文を読む

(その12) カスピ海石油争奪戦の経済誌記事

 前回も、チェチェン攻撃の背景にカスピ海の石油資源争奪戦ありと報ずる『日本経済新聞』記事を引用したが、その後、インターネットに転載されるチェチェン関連記事を見ると、まるで石油の匂いがしない。やはり、経済紙ならではの報道例なのであろう。しかも、それさえも非常に珍しいのだから、メディア報道には受け身の一般人にとって、本音の現代史が理解し難くなるのは無理がない。
 以下も、その非常に珍しい記事の一例である。⇒全文を読む

(その13) 森はおろか木も見ぬ風評報道の代表:朝日新聞

「もう一方の世論は、空爆に矛盾を感じながらも理解を示そうとする批判的知識人の立場です。一番典型的なのが『朝日新聞』4月16日の『ペストかコレラか』と言う社説です。」
 この岩田の文章を見て、その社説を図書館でコピーしてきた。いやはや、改めて驚いた。まともに論ずるのも阿呆臭くなる程度の駄文だった。
 「社説」を書くのは「論説委員」という肩書きのベテラン記者ということになっている。ところが、この某論説委員は、自分では何も調べずに、現場取材は疎か、資料調査すら全くせずに……⇒全文を読む

(その14) ラチャク村「虐殺」訂正を渋る「沽券」習性

 なぜ、特に『しんぶん赤旗』と『朝日新聞』だけに記事訂正を求めたかという理由は、後に具体例に基づいて詳しく述べるが、ともかく両紙とも、いまだにラチャク村「虐殺」の訂正記事を掲載していない。両紙を自宅配布で購読している読者が、このところ必ず、関連記事を切抜いて我が家に送ってくれているが、報道検証をした気配も見えない。
 まず、上記の『しんぶん赤旗』に関する読者からの意見についての経過を述べると……⇒全文を読む

(その15) 喧嘩両成敗に陥る不精な自称平和主義者

 「喧嘩両成敗」とは、簡単に言うと、セルビア人とアルバニア人の「歴史的な民族の相剋」に問題を狭め、現在の国際政治状況を無視した無責任な「解決」を論ずることである。
 「喧嘩両成敗」は、幕藩体制などの封建的支配の制度を維持するために、ことの理非を問わずに争いを禁ずる秩序の表現である。こともあろうに、この封建思想に、現代の自称平和主義者たちの多数派が陥っているのだから、NHKなどが安心して、その種の「ルポ」と称する狭い「KLA発表報道」を流しては、得々としているのである。⇒全文を読む

(その16) ユーゴ侵略vsチェチェン侵略&カスピ海石油パイプライン

 面白いのは、上記の『日本経済新聞』記事の真下に、「カスピ海石油パイプライン/トルコ・ルートで合意」と題する記事が載っていたことである。元ソ連領土でありながらも、すでに独立してアメリカの影響下にあるアゼルバイジャンとグルジアから、トルコ経由で地中海に抜けるルートに、トルコとアメリカが合意したというのである。この記事の最後は、次のようになっている。
 「企業連合が一時、コストの安いグルジア西部の黒海に抜けるルートに傾いていたが、米国はロシアの影響を受けにくいトルコ・ルートを推進してきた」⇒全文を読む

(その17)「角が立つ」恐れて歪む平和論の矯正法

 昨年10月に山形市で国際映画祭があった。その企画の1つとして、民衆のメディア連絡会が中心となって結成した市民制作ヴィデオの流通組織、VIDEOACT!のプログラムが組まれた。それを見た「スカイパーフェクトTV/750ch」の『Jドキュメント50』のチャンネル担当者から、3か月で13本の1時間枠、「ワンクール」の申込があった。担当者は気軽に「内容は任せる」という主旨の口約束をしたそうだが、最終段階でスポンサ-が予定表だけを見て、つまり題名だけで判断して、『NATOの標的~ユーゴ“空爆”の実態』を含む半分以上の作品を拒絶した。VIDEOACT!の有志スタッフは、スポンサ-が認める作品群の編成をも議論したが、それでは運動の主旨に反するとの意見が大勢を占めて、断念した。スポンサ-は凸版印刷マルチメディア事業部である。⇒全文を読む

(その18) 悪魔化謀略を見抜けず反省せず惚け通す厚顔無知

 その経歴を奥付に記すのは、専門家を信じやすい一般人向けの出版商法の常である。そして、上記の厳めしい肩書きが物語るように、これが日本共産党の公式見解なのである。自分達が犯した垂れ流し報道の誤りは検証の埒外に置くという方式の、奇怪、いや、ありきたりの自称「報道検証」なのではあるが、もう、同じ批判を繰り返えす気にはなれない。ともかく、こんな厚顔無知な商売人どもを、平和勢力と勘違いしている善意の人々は、実に、実に、気の毒である。⇒全文を読む