武蔵野版『不祥事隠し』独自捜査シリーズ(その15)

2度が3度の横領で
月(小金井)とスッポン(武蔵野)対照鮮明

2000.9.9

 首都圏の地方自治体の滞納税横領事件が、立て続けに報道され、昨年来の武蔵野市と合わせて一挙に3件に増えた。最新の新聞報道を日付順に記すと、9.9(土)に武蔵野市の隣の小金井市、9.19(火)に埼玉県の北本市である。

 現状分析の結論を先に言うと、他の道府県の地方自治体でも発生している可能性が高いが、こうなった以上、監督官庁の自治省も「防止マニュアル」の議論をせざるを得ず、メディア報道でも昨年以来の武蔵野市の事例を再び取り上げざるを得ないだろう。いや、この私が、総力を挙げて、自治省をもメディアをも、そうせざるを得ないように追い込んでやる。

9.20.(水)丸一日、小金井市議会傍聴で痛快体験

 新しい宣伝の武器は、小金井市の事件対応振りである。詳細を知るために、9.20.(水)丸一日、小金井市議会を傍聴してきた。実に痛快な体験であった。

 その痛快体験を説明する前提として、上記2件の新聞報道について、まずは、わが読者から頂いた切抜きの見出しだけ紹介する。

『朝日新聞』(2000.9.9)「小金井市/納税課員58万円着服/議会が調査、近く告発も」

『読売新聞』(2000.9.19)「埼玉・北本市/市税など200万円着服/処分なく退職金満額/市長『勤務ぶりで情状』」

 私の取材結果の順序を逆にして、北本市の方から報告する。

 上記の記事では「一昨年6月から昨年6月まで」の着服に関して、昨年の「7月2日までに着服した全額を返済」していたのだから、以後、1年と2ヵ月半以上、隠蔽されていたことになる。私が電話で、北本市の広報課員および、この事件の対外担当になった人事担当の総務課員に確かめたところ、毎日と読売の記者から質問されたので答えたとのことである。犯人の元主査は、200万円の全額を返済した後、退職金1,300万円を受けとっている。毎日と読売は詳しい続報をしているとのことだが、忙しくて、そこまで手が回らない。

 以下、武蔵野市の場合と比較対照できる点だけを要約する。

 北本市の場合の「着服した金額は、消費者金融空の借金の返済などに充てていたという」点は、武蔵野市の事件にも小金井市の事件にも共通している。北本市では誰かが介在して「200万円の全額を返済」させ、退職金で弁済させたに違いない。「退職金満額」の受け取りは武蔵野市と同様である。当然、武蔵野市の場合にも、誰かの介在を疑ってしかるべきである。

 小金井市の場合は、この点、まったく様相を異にしている。直ちに懲戒処分の免職で、退職金は支給しない。その他、武蔵野市とは「月とスッポン」「雲泥の差」である。

 最も重要な相違点は、事件の発覚直後に議会に報告している点である。上記の新聞報道では、「事件が発覚したのは今月6日」となっているが、議会での納税課長の報告によると、その前日の5日に「不審な行動が見られた」ので「6日に詳しく調べた」とのことであった。「不審な行動」とは、滞納者への臨戸徴収の地区を担当替えしたのに、前の担当地区の滞納者を訪ねて2万円を受け取ったことである。

 6日に事態が判明して、8日に市長が議会で中間報告をした。これを武蔵野市の場合と比較すると、市長報告の「発覚」が昨年の5月17日で、議会での「行政報告」は7月1日だから、1ヵ月半後である。

 9.11(月)、小金井市議会の事務局に電話をして上記新聞報道を確かめると、「今議会中に設置される特別委員会が調査に乗り出す」とあったのは、勇み足のようだった。事務局が、20日に市長が詳しい報告をするというので、私は、朝10時の開始時間より45分も早く小金井市議会のある旧市庁舎に到着した。早く行った理由は、議会運営委員会(議運)が早くから開かれる場合があるからであるが、議運が開かれたのは、いったん議会が開会してからであった。

 しかし、早く行ったのは無駄ではなかった。議員の会派別控室の様子を見ると、日本共産党の部屋が明るい。照明の蛍光灯が点灯しているのだ。軽くノックして入る。二人いた。二人に名刺を渡して、武蔵野市の横領事件をインターネットで報道していると告げ、日本共産党から除籍になっていることも話し、武蔵野市の日本共産党市議会議員は弛んでいるなど、本シリーズ既報の問題点を列挙した。さほど驚く様子も見えないのは、どうやら、先刻承知の事実だったからのようである。

 というのは、この時には日本共産党の控室で見掛けなかった市議会議長の日本共産党の議員が、その後、休憩時間に私が市民の党の控室にいたところへ、ふらりと現われ、私に対して「武蔵野市と比較して、どうですか」と質問してきたのである。この態度は、次の項目で記す状況とも合わせて見ると、日本共産党に関しても、小金井と武蔵野とでは、「月とスッポン」「雲泥の差」であって、実に痛快な体験となったのである。

「市長が直後に相談」「バッチリ質問を」と市民の党に発破

 日本共産党の議員が市議会の議長になるなどという事態は、武蔵野市では全く考えられない。論外である。

 日本共産党が反主流だからではない。小金井市でも、市長は保守派で、先の衆議院議員選挙では自民党候補を推薦した。武蔵野市の土屋市長と三鷹市の安田市長と、3人が並んで自民党候補を囲み、握手する写真のポスターが、武蔵野市でも、そこら中に貼られていた。

 問題の基本は思想と実践である。武蔵野市では、日本共産党議員が6名から3名に減り、市民の党議員が1名から3名に増えた。日本共産党は市民の党を目の敵にしている。この状況は各所に見られ、「近親憎悪」と言い習わされているが、私は、ダーウィンの進化論の「生存競争」論を補完する「住み分け」論を援用して、「餌場が同じだから争う」のだと喝破する。論より証拠、武蔵野市の日本共産党議員は、市長とも、保守派とも、実に実に、なごやかに談笑し、仲良くしているのである。そちらは「住み分け」である。

 小金井市で4名を擁する日本共産党の議員の一名が市議会の議長になることができるのは、市民の党2名を含めて、他の野党の支持を取り付けることができるからに他ならない。56歳の議長は、見るからに、そのような風格の幅のある小太りだが健康そうな中年男であった。腹の幅だけではなさそうだった。市民の党の控室に入ってきての最初の発言は、市民の党の議員に、「締めのバッチリした質問を」と発破を掛けるものだった。

AからLまで、個人別、9回にまで及ぶ徴収金額、日付けを明記

 議会に提出された「市長報告資料」の数々も、武蔵野市とは「月とスッポン」「雲泥の差」だった。武蔵野市では、ABCDEF氏に関するA4判たったの一枚の「元市職員による横領事件資料」[本シリーズ(その6)「『元職員による横領事件資料』の縦横解読」参照)が配布されたのは、市長発表の「発覚」から数えても、7ヵ月と3週後である。

 小金井市の場合は、発覚後、8-9の両日、納税課員が全員で調査した資料が公表された。「氏名」はAからLまでの仮名だが、個人別に、徴収の回数が一番多い例では9回にまで及ぶ徴収金額、日付けを明記した数表、A4判で9頁が、20日の議会で、傍聴者にも配布された。その他の関連資料もA4判で18頁ある。

 そこで私は、20日の朝10時から午後5時半まで続いた濃密な小金井市議会傍聴の疲れにもめげず、翌日、21日、上記の武蔵野市と小金井市の「未曾有の情報落差の裏に潜む政治犯罪と詐欺」を、資料の2分の1縮尺、貼り込みで一目瞭然の比較対照をする『武蔵野市・野人1号』改題創刊号外を作成した。22日には、10時開会の市議会定例会の前、朝9時に市議会議員の個人別ポストに同上の刷りたてコピーを配布、市役所前で40分の演説をした。以下は、貼り込みの隙間に記した記事である。本シリーズ向けに若干補正した。

隠すより顕る矛盾にピタリ空領収書

 わがホームページ「武蔵野市不祥隠し事件独自捜査」の14の記事の内、最初の10を印刷した小冊子を八王子の検察庁支部担当検事に送り、保険年金課時代の横領分と称する分も起訴するよう求めたが、実現しなかった。求刑は3年半の実刑で細川被告の代理人は重すぎると怒っていた。

 最終論告では総額4300万円と言ったが、閉廷後、代理人は、細川被告が「そんなに多くない。空領収書を渡した」と語っていると教えてくれた。このキーワードは、それまでに組み立てていた疑問のジクソーパズルの空白にピタリと嵌まった。

 土屋市長は「武蔵野警察署と相談の上で職務権限があった納税課時代の業務上横領だけを起訴した」と言い張ってきたが、その理由は、最早、間違いなしに、保険年金課時代にも続いた「犯行」の結果と称する3200万円には、滞納者が「空領収書」に勝手に金額を記入して「市に納入」と居直っている部分が含まれていたからなのだ。

 土屋市長の議会発言によると、武蔵野警察署だけでなく、警視庁も加わって捜査したというのだから、最初から、この臭い問題点は見抜かれていたに違いない。だから市長は、「相談の上」、議会で野党が何を言おうとも、「業務上」部分のみの告訴、送検、起訴の「警察と検察もグル」方針を貫いたのだ。

 武蔵野市の市側発表の「元市職員による横領事件資料」のDEF氏は、市長の有力な支持者の大地主の次男坊、井野光章と彼が代表者の2法人のことだ。井野は私が電話で空領収書のことも含めて疑問があるから自分で詐欺と訴えてみろと言ったのに対して、怒るどころかマゴマゴし、土屋さんと相談すると言った

 最早、白状したも同然なので、私は、「名誉毀損で訴えてくれれば法廷で証拠を付き合わせることができる」と通告し、街頭演説にも踏み切った。本音を語ると健康にも良い。

 DEF氏に対する不動産の差押通知の日付は、昨年4月25日の市長選挙の半年前である。「選挙が終わるまで伏せてくれ」と頼んだ時、市長は不祥事隠しの政治犯罪者と同時に空領収書利用の詐欺の共犯者にもなったのだ。

 なお、その他にも三鷹駅北口、市役所前の演説を何度か行ったが、その件は、新発明の「空中回転プラカード」追加作成などの状況とも合わせて、別途、報告する。

以上で(その15)終わり。(その16)に続く。


(その16)「公金横領金弁済請求書」「回答及び抗議」他の情報公開で当然の勝利!
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