木村愛二の生活と意見 2003年11月 1件のみ

78歳マハティール「ユダヤ人が世界支配」発言紛糾し激動の半月の間にアラブ語の歌も覚えたわがイスラム体験の躍動

2003年11月6日(木曜日)

 似非紳士こと朝日新聞(電網版)が、10月17日の日付で、以下のごとき典型的な痴呆記事を掲載した。この日付は、わが新著『イラク「戦争」は何だったのか?』の発行日の10月25日から数えて、8日前のことであるから、私は、超多忙中であった。

 なお、日本語の大手紙報道によれば、マハティールは77歳なのであるが、英語の記事では78歳となっている。大差はないが、私は、今、66歳なので、78歳だと、十二支で言うと、ひと回り年上になるから、覚え易くて都合が良いので、とりえず、そちらを採用する。

 以下が、問題の朝日新聞の典型的な痴呆記事の主要部分の抜粋である。

---------- 引用ここから ----------
「ユダヤ人が世界支配」 マレーシア首相発言に抗議続々

 マレーシアのマハティール首相がイスラム諸国会議機構(OIC)首脳会議で「ユダヤ人は世界を支配している」と発言し、欧米などから激しい非難を受けている。首相は同総会を政界引退の花道とする考えだったが、大きな影を落とす結果となった。

 問題の発言は16日の開会演説。「ヨーロッパ人は、1200万人のユダヤ人のうち600万人を殺した。しかし、今日、ユダヤ人は代理人を使って世界を支配している。彼らは他の国を(イスラムと)死ぬまで戦わせる」と述べ、イスラエルと対抗するためにイスラム教徒の団結を求めた。
---------- 引用ここまで ----------

 この件で私は、超多忙中にもかかわらず、以下の3つの通信を発した。いずれもURLと見出しのみを列挙するに止める。

1)・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.jca.apc.org/~altmedka/2003aku/aku678.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/662.html
『亜空間通信』678号(2003/10/22)
【イスラム長老マハティール演説を概略すら報ぜずイスラエル寄りで斬った似非紳士朝日の深層】

2)・・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.jca.apc.org/~altmedka/2003aku/aku679.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1071.html
『亜空間通信』679号(2003/10/30)
【「ユダヤ人は代理人を使って世界を支配」批判でシオニストの攻撃を呼んだマハティール演説】

3)・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.jca.apc.org/~altmedka/2003aku/aku680.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1113.html
【米歴史見直し論者マハティール演説賛同しシオニスト法師クーパー謝肉祭示唆強烈皮肉に一部留保】

 この最後の『亜空間通信』680号で私は、以下の留保を記した。ただし、以下のごとく、歴史見直し論者の中には、私と同意見の「留保」もある。拙訳は、「私はマハティール演説を読み、ホロコーストに関するたわごとを除けば、そのすべてに賛同する」である。

---------- 引用ここから ----------
http://www.biblebelievers.org.au/nl296.htm
Bible Believers' Newsletter #296
[中略]
Having read Dr. Mahathir's speech I agree with everything he said except the holocaust baloney.
[後略]
---------- 引用ここまで ----------

「ホロコーストに関するたわごと」(holocaust baloney)に相当するのは、以下の拙訳の中間の部分である。

---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/2003aku/aku679.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1071.html
『亜空間通信』679号(2003/10/26)
 [中略]
39.(この部分は全訳)われわれは実際には非常に強力なのである。13億人の民は簡単には一掃できない。ヨーロッパ人は1千2百万人のユダヤ人(ユダヤ教徒)の内の6百万人を殺した。しかし現在、ユダヤ人は代理人を使って世界を支配している。彼等は、他の者が自分たちのためにに戦って死ぬようにしている。
 [後略]
---------- 引用ここまで ----------

 この39.の原文は以下である。

---------- 引用ここから ----------
39. We are actually very strong. 1.3 billion people cannot be simply wiped out. The Europeans killed 6 million Jews out of 12 million. But today the Jews rule this world by proxy. They get others to fight and die for them.
---------- 引用ここまで ----------

 私は、以上の部分を原文に忠実に訳し、特に自分の解釈は付け加えなかった。しかし、マハティールが、「ホロコーストの大嘘」を知らないわけはないのだし、聴衆のイスラム諸国の首脳も同様である。私は、もともと個人崇拝は好まないし、マハティールにも、政治家の「古狸」の要素ありと見ている。

 マハティールは、上記のような留保をも含めて、議論を呼ぶことを狙ったと考える。できれば全文を、少なくとも、わが抄訳を読み、大いに議論されることを願うものである。

 ところが、「旬日を経ずして」どころか、「即座に電網応答あり」の典型で、わが上記投稿の日付と時刻は、阿修羅戦争41掲示板の電網記録によれば、「2003年 10 月 31 日 11:05:5610」なのであるが、約半日後、その午後の4時過ぎには、以下の投稿が出現した。

---------- 引用ここから ----------
ホロコーストは「言訳け」にはならない -マハティール 【ハレアツ】
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1117.html
投稿者 ドメル将軍 日時 2003 年 10 月 31 日 16:08:38:thBqtlf63WYzY
(かいつまんで)
ヨーロッパでの受難は、アラブの土地を占領し、ムスリムを虐げることの理由にはならない。
ユダヤ人は自らが「選民であり、批判されてはならない(存在)」などと決して考えてはならない。
ユダヤ人・ムスリム間の問題の根本は宗教ではなく(アラブの)土地の占領
である。

http://www.haaretz.com/hasen/spages/355666.html
Holocaust is `no excuse,' Mahathir says
By Reuters
 [中略]
"It is not religion at all.
It is territorial.
You take somebody's land and they will fight for it."
http://www.haaretz.com/hasen/spages/355666.html
 [後略]
---------- 引用ここまで ----------

 やはり、マハティールは、反撃の準備十分だったのである。私は、このマハティール演説が行われる直前、現代史研究会が10月13日の「体育の日」の休日に開いたイスラム理解のための例会で、アラブ人のモロッコ大学哲学教授に会った。

 このアラブ人哲学者との遭遇に関しては、前回の「日記風」、実は「月記風」、2003年10月19日(日)の日付けで、新著発行で3時間講演決定の新局面を前に「まだ生まれてない」アラブ人哲学者には「負けた!」と記した。

 以下は、その「月記風」からの抜粋である。

---------- 引用ここから ----------
 [前略]
 このアラブ人の哲学者に関しては、後に詳しく記すが、ともかく、彼は、私と同様に、生死を超越した哲学を体得しているのである。

 先に記した12月19日の講演では、冒頭に、このアラブ人の哲学者との遭遇体験をまず語り、大きな歴史的視野からの話しをする予定である。
 [後略]
---------- 引用ここまで ----------

 このアラブ人哲学者の名前は、名刺から正確を期して写すと、ローマ字綴りで、Mahdi ELMANDJRAである。発音は、カタカナで書くと、マフディ・エルマンドジュラで良いらしい。1933年生まれで現在は70歳、私より4歳年上である。会話の言語は英語である。

 二次会の懇親の場で、私は、エルマンドジュラの隣に座り、1枚のA3判の紙片を示した。上記の12月19日の講演の冒頭で歌う予定で鋭意練習中のアラブ語の歌のアラブ文字による歌詞である。彼は即座に頷いて、これは廃墟(Ruin)という有名な歌だ」と言い、私と一緒に最初の部分を歌った。

 これでもう、バッチリ、親友になれた。続いて私は、当日の集会の重要な鍵言葉、「意味論の戦争」(semantics War)を持ち出し、「意味論の戦争」なら、「ジェノサイド(Genocide、大量虐殺)、ホロコースト、ショアが、最も重要ではないか」と切り込んだ。彼は「わが意を得たり」とばかりに大きく頷いた。

 私は、当日の集会の主役の彼、エルマンドジュラの話を聞きながら、拙訳『偽イスラエル政治神話』の以下の部分を想い出していたのだった。

---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-27.html
『偽イスラエル政治神話』(その27)
 3章:諸神話の政治的利用(その4)
  2節:フランスのイスラエル=シオニスト・ロビー(その1)
[イスラエル支持報道による事件の意味の逆転現象]
 何よりの証拠は、メディアのほぼ全体に及ぶ横並び現象であり、イスラエルを支持する立場から、事件の意味が逆転して報道されている。典型例を挙げれば、メディアは、弱者の暴力を“テロリズム”と報道し、強者の暴力を“テロリズムに対抗する戦い”と報道するのである。
 虚弱なユダヤ人が、PLOの背教者の手で“アキレ・ラウロ”号の船外に投げ出されると、これは確実にテロリズムであり、その報道には誰も異議を唱えられない。ところが、その報復として、イスラエルがチュニスを爆撃して五〇人を殺し、その中には何人かの子供までいても、これは“テロリズムに対抗する戦いであり、法と秩序の防衛である”と報道されるのである。
 [後略]
---------- 引用ここまで ----------

 モロッコは、ヨーロッパ列強によるアフリカ植民地分割支配の時代に、フランスの保護領を経て、仏領、スペイン領、国際連盟の管理下のタンジール地区に分かれていたから、フランス語が知識人に通用する。だから、エルマンドジュラは、アラブ語訳が出る以前に、『偽イスラエル政治神話』の原著を読めたはずなのである。

 そこで私は、さらに切り込み、『偽イスラエル政治神話』の原著者、ガロディの名を出した。

 おお、この時のアラブの先輩の興奮振りたるや、薄暗い神田の居酒屋の畳の上で、ぐいと、その顔を私に近寄せ、名刺を取り出し、お前の名刺を寄越せ、と言うのである。

 なぜか。彼は上記の本のアラブ語版に序文を書いたと言うのである。だから、そのアラブ語の本を、お前に送ると言うのである。私は、ちょうど、自分が集会で売る本の入れ物の移動式バッグを持っていたから、早速、わが拙訳を取り出し、「これはプレゼント」と言って献上した。表紙にはフランス語の題名が入っているから、彼はすぐに分かり、彼は、ますます興奮し、裏表紙に、自分へのプレゼントとして名前を書けと来た。

 もちろん、即座に応じた。当日、急いで出たので、名刺入れを忘れていたが、手持ちの紙切れにローマ字で住所、氏名、電話番号を記した。ああ、酔いが醒めたので、また飲み直した。

 当日の現代史研究会主催の集会では、彼と板垣雄三が、中心的なパネラーだった。板垣は、以下の電網書店情報で紹介する。1931年生まれだから、アラブ人哲学者より2歳年上の勘定になる。

---------- 引用ここから ----------
編集部だより 岩波新書編集部
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0201/sin_k48.html
「対テロ戦争」とイスラム世界  板垣雄三編
 [中略]
■著者紹介(執筆順)
板垣雄三(いたがき・ゆうぞう) 1931年生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒。現在は東京大学名誉教授・東京経済大学名誉教授。『歴史の現在と地域学』(岩波書店)、『石の叫びに耳を澄ます』(平凡社)ほか。
---------- 引用ここまで ----------

 板垣雄三とは、何度も会っているが、その後、11月2日、以下の通信で論評した集会でも、パネラーだったので、集会の前後に直接話す機会があり、休憩時間に新著『イラク「戦争」は何だったのか?』を献呈した。

---------- 引用ここから ----------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/2003aku/aku682.html
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1325.html
『亜空間通信』682号(2003/11/05)
【天木直人前レバノン大使を迎えた「総花」シンポが象徴する日本反体制総崩れ「反戦」空洞化】
---------- 引用ここまで ----------

 この件は、また記す予定である。


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