『9.11事件の真相と背景』(6)

「テロ」か? 自作自演の戦争挑発謀略か?
アメリカ=イスラエル=世界支配構想の核心を突く

電網木村書店 Web無料公開 2006.2.2

第3章 イスラエル秘密情報機関モサド・アメリカ軍部・極右の自作自演説 2(後半)

日本国内向けの米軍放送「傍受」による「初動捜査」の成果続々

 私は、「はしがき」にも記したように、9・11事件発生直後から、この事件の真相解明は、拙著『湾岸報道に偽りあり』の延長線上の「自分の仕事」と思い定め、まずは私なりの可能な限りの定石通りの「初動捜査」を開始した。

 その内の最も重要で、しかも、日本の大手メディア報道ではまったく出てこない「現地情報」の源は、湾岸戦争以来続けている日本国内向けの米軍放送「傍受」であった。

 「傍受」はもとより大袈裟な表現だが、自宅で簡単に聞けて録音もできる。米軍放送は今、全世界の衛星放送網になっている。事件直後から1週間ほどは、音楽番組もアメリカ人が三度の飯よりも好きな冗談番組も「自粛」していた。ほとんどの番組が9・11関係になってしまった。私は、それを時間の許す限り聞きながら録音し、重要な部分は録音を何度も聞き直して英文に起こし、一部は日本語に訳して電網に発信した。米軍放送には、アメリカの各種のラディオ放送が入ってくるので、どちらかと言うと体制派的な大手系列から、どちらかというと体制に批判的な公共放送ラディオ網の加盟各局の独自ルポまで聞くことができる。この独自ルポには、時折、自主規制の網にかからない面白い情報が入ってくる。全体として、アメリカのおおよそのメディア状況を比較しながら知る上での指針となる。

 これらの「傍受」情報の中には、いくつかの極めて重要で、しかも日本国内ではまったく報道されていない情報があった。

 直後の公共放送ラディオの加盟各局独自ルポでは、インタビューに応じた元CIA要員とイラク問題の作家が、異口同音、「ビンラディンには、あんなに洗練された工作を行う実力と資金、組織はない」という主旨のことを、確信に満ちた口調で語っていた。元CIA要員は、アフガン工作に同時期に参加していたので、ビンラディンをよく知っており、軽く、「そんなに大した戦士(warrior)ではない」と言い放った。イラク問題の作家は、「あれは国家規模の組織でないとできない作戦だから、山の中に隠れているビンラディンにできるはずがない、イラクがやった可能性が高い」と強力に主張していた。

 日本では、ハリウッド映画の封切りもあって、事件直後のアメリカで「真珠湾攻撃」が想起されたとして、自国の戦争犯罪を気に病む向きが多かったが、実は、米軍放送を聞くと、まったく逆の意味で、「パールハーバー」を口にしたアメリカ市民もいたのである。真珠湾攻撃を予知しながら放置したローズヴェルト大統領の戦争介入策略を知るアメリカ市民が、「政府はまたやったな」と疑っていたのである。つまり、名うてのCIAを抱えるアメリカ政府に事件を予知できないはずはないので、またもや知りながら放置し、利用したなという疑いである。

 この疑いに関しては、後に、アメリカに電波が届くカナダのヴァンクーバー放送が、9-11 and Pearl Harbor(私の命名は「9・11と真珠湾攻撃の相似形」)と題するテレヴィ番組を放映している。その電網短縮版には、わが電網宝庫の亜空間通信TVの国際支局から到達できる。

 その他、事前情報の有無から始まり、事前情報があふれ返っていた状況の奇妙さへの疑惑の声が、かなり多かった。最も特徴的なものは、私が事件直後に発した疑惑、「モサド謀略説」に関する現地アメリカでの対談による公共放送ラディオ録音構成番組である。

 以下は、わが通信の抜粋である。軽い早口のアメリカ人のアナウンサーと、アラブ訛りの強いエジプト人のしゃべり言葉を、わが貧しき耳、鬼畜米英時代、英語は敵性言語として教えず、聞いたことなど一度もなかった時代の育ちの耳で解読し、急ぎ文字化し、訳したものの抜粋改訂版である。当然、若干の誤りを含むとは思われるが、大意は間違っていないと確信する。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/akuukan-01-11-95.html
『亜空間通信』95号(2001・11・13)
【アメリカのラディオ放送がアラブ人の声と9・11モサド謀略説アラブ諸国蔓延報道】

2001・11・10(土)午前7:00~8:00
米軍放送に入っているアメリカの公共放送ラディオ録音構成番組。

公共放送アナウンサーの質問 ここアメリカには、様々な報告が入っているのですが、……その報告では、アラブ諸国の全体を通じて、9月11日(の事件)に関して、多くの人々が謀略だとする説明を信じていて、あれはビンラディンではなく、アルカイダでもなく、サウジアラビア人やエジプト人でもなく、むしろ、イスラエルの秘密情報機関モサドがやったのだと言うのですが。

モハメッド [中略]この説は、むしろ、アメリカ人が提供したものです。私たちは、すべてについて、結論を出せるような確実な証拠を持っていません。たくさんの情報が流れてきます。そして、それらの情報には、たくさんの矛盾があります。いくつもの仮説がまだ可能です。調査なしにすべての仮説を完全に排除することはできません。つまり、謀略の諸説が存在し得ることが理解できます。

公共放送アナ 貴方は、イスラエルのモサドが飛行機をハイジャックして、世界貿易センターに衝突させたという説を排除してはいないということですか。

モハメッド 私は、何らの明確な証拠もなしに結論に飛びつくのは好みません。

公共放送アナ モハメッド・セダフマンは、カイロの『アルアハラム』のコラムニストです。[後略]

 以上は、アメリカとアラブの両「現地」の声である。刑事事件の定石の「初動捜査」の最初は、事件現場周辺の「聞き込み」である。9・11事件を「テロ」と疑うのであれば、「テロ」は国際警察の縄張りである。殺人であれば被害者の地元の警察、加害者の疑いがある人物の周辺の地元の警察、この両者の「聞き込み」を抜きにした「初動捜査」はあり得ない。

アラブ諸国の主要メディアが「背後にモサド」説を発表

 ところが、9・11事件の場合、事件発生直後からアメリカ当局が喧伝し始めた「加害容疑者」の地元、アラブ・イスラム圏の声、つまりは、言うならば、肝心要の加害容疑者の地元の「初動捜査」の「聞き込み」が、まったくと言って差し支えないほど無視・蔑視されたのである。

 以下に抜粋再録する私の通信の内容も、その現地情報の典型である。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/akuukan-01-11-87.html
『亜空間通信』87号(2001・11・7)
【全文日本語訳/アメリカ・テロ攻撃の背後にモサド/サウジアラビア紙/社説】

 リヤド発/サウジアラビアのある新聞は土曜日[11・03]、何千もの人々を殺したニューヨークとワシントンへの9月11日のテロ攻撃の背後に、イスラエルの秘密情報機関モサドがいたとして告発した。

 発行部数の多い大手紙の『オカーズ』は社説で、あのようなスケールの攻撃を、あのような精度で的確に行うためには、アメリカ合衆国の内部の関係者の援助、あるいは、ワシントン政権との強い連携なしには不可能だと論じた。

 「アメリカでは、ニューヨークとワシントンへの襲撃への関与を疑われた6人のイスラエル人が逮捕されたが、その後に釈放されている。これは、この醜い犯罪へのイスラエルのモサドの関与についての我々の強い疑いを確かなものにする」と、『オカーズ』は論じた。

 「我々が慎重にこの問題を観察するならば、我々は、イスラエルの秘密情報機関モサド以上に、これだけの浸透能力と効率の高い実行能力を持ち、影響力がある組織を、アメリカ国内で発見することができない」と、この日刊紙は論じた。

 この新聞は、アラブ人とイスラム教徒が攻撃の背後にいたという十分な証拠がないと論じたが、しかし、モサドがこの極悪な計画を実行するためにイスラム教徒を徴発したかもしれないという可能性を、除外はしなかった。

 「陰謀(攻撃)の主な目的は、アラブ人とイスラム教徒の間の関係、特に穏健な諸国との関係、その一方ではアメリカとの関係を、徐々にむしばむこと、さらには、イスラム教圏とキリスト教圏の文明の関係を対立的なものに変えることによって、それぞれの信奉者の間の憎悪を刺激することにあった」と、同紙は論じた。

 中東の和平に対するワシントンの方針の積極的な変化と、独立したパレスチナ国家の設立への支持の表明は、アメリカ合衆国が、この攻撃に関するモサドの直接の役割を示す重要な手がかりを入手したことを確証するものだと、同紙は断言した。

 「我々は、(アメリカ合衆国が)この結論に達するまでに、あまり長期間、待つことになると思わない。この犯罪は、『ばかな』手先に焦点を当て、気を逸らされて済むものではなくて、その実際の立案者を確認せずに大目に見て、見逃すわけにはいかないものだ」と、『オカーズ』が論じた。

 サウジアラビアの新聞は、しばしば、リヤド[王国政権]の公式の考えを表す。王国はすでに、アメリカ・メディア作戦を組織化しているとして、アメリカ国内の親イスラエル・ロビーを告発していた。[後略]

タリバン政権大使会見報道(毎日新聞)も「ユダヤ人関与の可能性」指摘

 次に抜粋、紹介するのは、日本国内の『毎日新聞』に載った記事の論評であった。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/glo-74.html
『亜空間通信』19号(2001・9・28)
【毎日新聞が「テロ、ユダヤ人が関与?」の見出しでタリバン政権大使会見報道】

 ついに日本の大手メディアにも溢れ出てきたアラブ・イスラム側の主張を、急遽、説明抜きで紹介する。

『毎日新聞』(2001・9・26)7面の記事
[タリバン]代理大使との1問1答/「テロ、ユダヤ人が関与?」

【イスラマバード=春日孝之】アフガニスタン・タリバン政権のソエル・シャヒーン駐パキスタン代理大使との1問1答は次の通り。

質問 米国の対タリバン政策をどうみるか。

◆我々はいつも対話の窓を開けているが、米国は閉ざしている。高慢で、非妥協な姿勢からは何も得られない。

質問 同時多発テロはだれが起こしたか。

◆ウサマ・ビンラディン氏には今回のような大規模テロを行う能力はない。ユダヤ人関与の可能性がある。まず、テロ当日の9月11日、世界貿易センタービルには通常勤務しているはずの約4000人のユダヤ人が不在だった。さらに、シャロン・イスラエル首相が、モサド(イスラエル情報機関)の助言で米国訪問を急きょ中止した。米国はこうした事実に目を向けようとしない。

質問 ユダヤ陰謀説が真実なら、目的は。

◆ユダヤ人は米国の力を利用し、イスラム社会の破壊をたくらんでいる。この事件を機に、イスラムは米国への支持、不支持をめぐり混乱し分断の事態に陥っている。

質問 米国のアフガン攻撃が迫っているが。

◆アフガン侵攻は容易だが、居座ることは困難だ。英国(19世紀)、ソ連(1979~1989年)と、当時の超大国でさえアフガン征服に失敗した。米国がカブールにかいらい政権を打ち立てても安定政権は望めない。国外のイスラム教徒1万人が対米ジハード(聖戦)に参加したいと申し出ている。米国はピクニック気分で臨む雰囲気だが、数年後、アフガンは彼らの墓地と化す。

質問 同時多発テロ自体をどう見るか。

◆我々はテロを認めない。

◆米国は反タリバン連合などと「タリバン後」の政権構想について議論を始めている。米国の本当の標的はビンラディン氏ではなく、タリバン壊滅にあるのだろう。[後略]

 ではなぜ、これらの疑惑情報が、日本の政界で、ろくに議論にならなかったのか。それには、いくつもの理由がある。基本的な理由は、判断の材料となる情報にあり、それを提供するメディアの状況にある。肝心な時に必要な情報が伝達されない理由は、メディア関係者が常に抱く「恐怖」にある。もっともらしく言うと「自主規制」、実は、自己中心、御身大事の商売人根性にある。それでもなお、克明に記事を読み直すと、意外にも際どい言葉が、以下のように、アラブ人、しかも、「親米国家」に分類されているサウジアラビアの有力者の口から出ていたのである。

『朝日新聞』(2001・9・30)
私の視点・特集・米同時多発テロ/過激派生む貧困、一掃が必要

駐日サウジアラビア大使モハメッド・バシール・クルディ

 サウジアラビア・メディナ生まれ。シリア・ダマスカス大法学部卒。1961年サウジアラビア外務省入省、1963年駐日大使館総務および文化担当官。その後駐スペイン大使などを歴任し、1998年から現職。65歳。[中略]

 今回の事件は、狂信者集団の犯行に見せかけた国家的背景を持つテロの可能性をぬぐえない。米政府の情報秘匿にはやむを得ない面もある。[中略]今は世界が力を合わせ、闇の勢力と闘うときだ。[後略]

 以上のような9・11事件への「イスラエル秘密情報機関モサド」関与の疑いの根拠は当初、「4000人のユダヤ人が不在」という形で伝わり、即座に「ユダヤ陰謀説」の非難を浴びた。「モサド関与説」の「切り捨て」論者は、すべて、この「不在」情報を「デマ」と決めつけるだけで、いかにも決定的だと言い張り、居丈高に振る舞っていた。

 ところが、この「4000人」「不在」の情報源は、「ユダヤ陰謀説」を流すような組織どころか、むしろ、まったく逆の立場だったのである。

モサド関与説の根拠「行方不明のイスラエル人」はイスラエル外務省発表!

 私が最初に、その事実を知ったのは、アメリカの独立系の電網宝庫の掲示板の議論を見た時なのだが、何と、その情報源はイスラエルの外務省だったのである。そのアメリカの独立系電網宝庫の所在は、私の「お気に入り」(bookmark)に次のURLで記録されているが、 1年近くを経て、2002年9月24日現在、私自身の確認によると、「接続に失敗」のエラーとなる。事情は分からない。

 しかし、その「行方不明」の電網宝庫掲示板、

http://forum.samfrancis.net/Forum5/HTML/001427.html
Samuel Francis On-line

から取り込んだ次の題名の英文、

Unreported News
Evidence of Mossad Treachery in the WTC Attack

は、以下のわが通信記録としてわが電網宝庫に保存されている。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/akuukan-01-11-110.html
『亜空間通信』110号(2001・11・25)
【9・11世界貿易センター攻撃に関するモサドの欺瞞の証拠・敵性証拠による立証】

 問題の用語は「ユダヤ人」(Jews)ではなくて「イスラエル人」(Israelis)だった。アメリカのユダヤ人またはユダヤ系アメリカ人は、ほとんどイスラエルと二重国籍のようである。公式のデータは見ていないが、イスラエルは、それを国策として奨励しているのである。

 アメリカのユダヤ人、特に最大の商業都市のニューヨークに住み、働くユダヤ人の多くは、世界貿易センターのような商業の中心地区に通勤している。ニューヨークはユダヤ人の人口比率が最も高い都市だから、ニューヨークをふざけて「ジュウヨーク」と呼ぶ人もいる。これも正確な数字は見ていないが、おそらく万単位のイスラエル人が、あの双子ビルに職場を持っていたと考えられる。

 当然、事件発生と同時に、二重国籍を含むイスラエル人の安否に関しての緊急調査活動が開始され、わけてもイスラエルの外務省および現地の領事館は、奮闘したに違いない。

 そこで話を戻すと、イスラエル外務省発表として、世界貿易センタービル「周辺」の「4000人」に関して「行方不明」と報道したのは、事件の翌日、9月12日付のイスラエルの英字紙、『エルサレム・ポスト』だったのである。 1年有余を経て、2002年9月24日現在、私自身の確認によると、この記事は、以下のURLに存在し続けている。

http://www.jpost.com/Editions/2001/09/12/LatestNews/LatestNews.34656.html
Thousands of Israelis missing near WTC, Pentagon

 この記事の核心部分は以下の通りである。拙訳とともに原文を添えておく。

 「エルサレムにある外務省は、これまでに、攻撃時にWTCとペンタゴン周辺にいたと信じられる4000人のイスラエル人の名前を受け取った。このリストは、いまだ友人や家族と連絡が取れていない人々からなると、軍の放送は報道した」

(The Foreign Ministry in Jerusalem so far received the names of 4,000 Israelis believed to have been in the areas of the World Trade Center and the Pentagon at the time of the attack. The list is made up of people who have not yet made contact with friends and family , Army Radio reported.)

 前記のアメリカの独立系の電網宝庫の掲示板には、この記事を掲載する紙面の電網リンクがあったので、私は、直ちにたどって到達し、色刷り複写を確保した。

 ところが、このことが広く各種の電網情報で流れているにもかかわらず、また、私自身が直接、何度も随時教えているにもかかわらず、日本の大手メディアはいまだに、まったく、そのことを報道していないのである。私は、手をこまねいているわけにもいかず、その後の情報も合わせて、今年の1月、以下の通信を発した。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/akuukan-02-01-145.html
『亜空間通信』145号(2002・1・19)
【なぜ報道せぬか/イスラエル紙「行方不明減」中間数入手:3000/13、140/18】

 以下、その他の関連情報も合わせて、整理し直す。

 9・11事件の「行方不明」数は、翌日の9月12日付のイスラエルの英字紙『エルサレム・ポスト』による数字、イスラエル外務省発表の4000から、その翌日の9月13日付『エルサレム・ポスト』では3000へと減り、18日付のイスラエルの大手英字紙『ハアレツ』(2001・9・18)では140となっている。

 これらの数字が、9月22日付の『ニューヨーク・タイムズ』では、「行方不明」ではなくて「死者としての確認」と表現が変化はしたものの、イスラエルの総領事アロン・ピンカスの言として、「たった3人」(only three)、しかも、その内の2人は飛行機の乗客、1人は仕事であのビルを訪問したという「劇的な減少」となったのである。つまり、WTCに職場を持っていたイスラエル人「死者」は、1人も確認されていないのである。

 その間、9月21日付の『ワシントン・ポスト』が、ブッシュ大統領の「報復決意表明」演説の中の台詞として、130以上と報じていた。この130以上は、上記の途中経過の数字、140を踏まえたものであろう。

 ところが、この件では、さらに驚くべき「情報の改竄」操作を発見できたのである。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/akuukan-02-01-146.html
『亜空間通信』146号(2002・1・20)
【イスラエル報道前号訂正増補:「行方不明を殺して」報復絶叫のブッシュと共犯】

 〔前記のイスラエルの大手英字紙『ハアレツ』(2001・9・18)記事の〕原文を読み直してみて、新たに気づいた重要問題があった。原文を添えて示すと、見出しでは、

 「行方不明のイスラエル人140」(140 Israelis missing)

 となっている。本文でもそれが繰り返され、「アメリカにいたのにイスラエルの家族といまだに連絡がつかない」と具体的に書かれている。つまり、この数字はあくまでも「行方不明」(missing)であって、「死亡」ではないし、事件の現場にいたはずのイスラエル人とは特定されていないのである。ところが、21日付『ワシントン・ポスト』掲載のブッシュ大統領の「報復攻撃決意」演説の文句では、重々しい演説向きの口調で、

(Nor will we forget the citizens of 80 other nations who died with our own. Dozens of Pakistanis, more than 130 Israelis, more than 250 citizens of India.) 

 つまり、「130以上のイスラエル人を含む外国人の死者をも忘れんぞ!」となっているのである。これは間違いなしに、いつもの通り、ブッシュ坊やの演説原稿の下書き役が力んで作った演説の台詞である。この演説では、「行方不明」者を全部「殺して」しまって、アフガン石油利権確保のための口実の「報復」を誓う絶好の材料に使っていたのである。しかし、この間、18日から22日までの間に、イスラエル側の調査が進み、ついに「死者はたったの3人」の確認となったのである。[後略]

 前出のイスラエルの大手英字紙『ハアレツ』(2001・9・18)には、それだけでなく、以下のように決定的な記述もある。

 「領事館によれば、攻撃が起きた時に双子ビル周辺にいたことが分かったイスラエル人は約30人だけである」

(According to the consulate, only about 30 Israelis are known to have been in the vicinity of the Twin Towers when the attack occurred.)

 このようなイスラエルとアメリカでの報道状況は、アメリカに数百人も特派員を置き、世界各国の主要通信を有料で受けている日本の大手メディアなら、簡単に入手できたはずである。噂も流れていたはずである。「やる気」がないか、逃げたか、なのである。

 ともかく、呆れたことに事件発生後、4か月も経ってから、「テロはイスラエルの陰謀でユダヤ人はあの朝は出勤しなかった、というデマを信じる人も多かった」などと記す大手紙の社説が出現した(『朝日新聞』2002・1・3「異文化の理解を超えて」)のである。朝日は2001年12月12日の連載「テロリストの軌跡」13回でも、同趣旨の特派員報告記事を掲載していた。

 その記事の方では、御丁寧にも、「貿易センタービルで働く4000人のユダヤ人があの日出勤しなかつた理由は?」とのエジプト紙の見出しを「あのテロで実際には100人以上のイスラエル人が死んでいる」、「意図的で根拠のないうわさ話のたぐいではないのか」と、おちょくり、エジプト人編集者の弁、「われわれは国民の求める記事を提供しているのだ」を、わざと歪めて注釈し、「アラブ各国に根づく『ユダヤ陰謀説』を指すらしい。大きな災禍や事件に見舞われると、根拠なくユダヤ人を『悪者』に仕立て上げて流布される説のこと」などと得意気に腐していた。

なぜイスラエル人だけに直前の「警告」が届いたのか?

 ではなぜ、事件当日、双子ビル周辺にいたことが分かったイスラエル人が「約30人だけ」で、イスラエル人の死者が、「たったの3人」だったのかと言えば、イスラエル人に事前警告が発せられたからである。このことは、今や疑いもない事実として断言できることであり、そういう主旨の情報は、事件直後からあふれ出ていたのである。イスラエルの大手紙『ハアレツ』(2001・9・18)も、イスラエル系企業オディゴが、通報を受けると同時にFBIに連絡したと報じていた。朝日記事の方こそが事実を偽る「デマ」なのである。

 その後も私は、以下の通信の中で、このオディゴへの事前警告のことを、すでにアメリカの大手紙『ワシントン・ポスト』までが報じたことを指摘し、2時間前に従業員に対して警告を発したイスラエル系通信会社「オディゴ」の存在を再度、強調した。

http://www.asyura.com/2002/war10/msg/364.html
『亜空間通信』193号(2002・3・14)
【イスラエル系「オディゴ」の9・11事前警告問題を米ポスト報道で日本どうする?】

 この件では、その後に決定的な情報が、当の『朝日新聞』の紙面に、まったくの論評抜きで、堂々と出現した。私は、ここでも「イスラエル?」と表現したが、以下の朝日記事のごとく、今年の4月末にニューヨーク市が発表した世界貿易センタービルの確認された死者数の報告の中には、「イスラエル」の国名すらなかったのである。

『朝日新聞』(2002・4・23夕刊)
テロ犠性者115か国/NY市発表/米除いて日本5番目

 【ニューヨーク22日=山中季広】ニューヨーク市は、去年9月11日の同時多発テロで亡くなった人々の出身国や年齢などを調べ、中間集計をこのほど発表した。犠牲者の出身国は115か国に及び、米国以外では日本生まれの犠牲者が5番目に多かった。

 世界質易センタービルの崩壊で亡くなったのは推定2825人。中間集計では、このうち1月末時点で死亡が確認されたか死亡宣告を受けた2617人が対象とされた。

 出身国では米国の2l06人が最も多く、次いで英国53人、インド34人、ドミニカ共和国25人、ジャマイカ21人、日本の20人が続いた。アジア圏ではほかに中国18人、フィリピン16人、韓国が9人など。[後略]

 いわゆる「事前警告」の問題について私は、9・11事件の10日後に、以下の通信で、何で、あの「偽イスラエル」が知っていたのか、という問いを発している。犯罪者の「自覚」に関する中国の諺に曰く「天知る。地知る。我知る」である。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/akuukan-01-09-11.html
『亜空間通信』11号(2001・9・21)
【イスラエルが「200人のテロリスト」大規模計画を米に警告?】

 『日本経済新聞』(2001・9・21)のベタ記事、「イスラエル、事前に警告」によると、 西海岸の有力紙『ロサンゼルス・タイムズ』の興味深い報道がある。要約すると、「8月」の段階で、「イスラエルの情報機関」が、CIAとFBIに対し、200人ものテロリストが大規模テロを計画と連絡していた。情報源は「司法当局」となっている。これが本当だとすれば、何で、あの「偽イスラエル」が知っていたのか、が問題となる。[後略]

 この件では今更、これ以上、付け加える必要はないと判断する。

 問題は、むしろ、なぜ、これだけの事実、報道が、そこらじゅうにあふれていたのに、大手メディア報道を媒介として状況を知り、意見を発表する「専門家」たちが、異口同音、「イスラム過激派の犯行」「テロ」と言い出したのか、その仕組みの方にある。

 まずは、情報の流れ方を点検しなくてはならない。


第4章 右往左往「テロ糾弾」合唱と条件反射の基底にアメリカ発テレヴィ動画