連載:元共産党「二重秘密党員」の遺言(その6)

マキャヴェッリが定式化した「裸の猿」組織統制の秘訣

1999.2.5 WEB雑誌憎まれ愚痴連載

 前回の(その5)発表以後、既知と未知の「現」および「元」創価学会員から私個人宛てのmailが届いた。未知の「元」創価学会員の場合は、私のことをメーリングリストで知り、わがホームページを見た上での通信なのだが、そのきっかけは、この連載の方の「元」への関心が手伝ってのことのようだった。このmailは了解を得て、別途、「読者の鍼灸」欄に投書として掲載したので、参照されたい。

 そいうことがあったので、「同時進行」も心掛けつつ、読者との交流を随時盛り込める最新の特長を誇るわがWeb週刊誌『憎まれ愚痴』の執筆者・兼・編集者・兼・発行者・兼・インターネット技術者・兼・設備所有者・兼・資金調達者としては、急遽、この「元」に関わる話題の一部掲載を優先する。

 実は、本連載開始後に、私に個人宛てのmailを送ってきた現日本共産党員も何人かいるが、現および元創価学会員も何人かいる。

 きっかけは、別途、わがホームページに途中まで入れて、その後は放置したままの「同志社大学渡辺武達教授とのガス室論争」である。この教授、様、様のことは、別途、最近の私発のmailでも紹介したが、論争の過程で私に対して「学問的素養がない」という主旨の失礼極まりない「ご批評」を、何百人もが参加しているメーリングリストに投げ込まれるような、とてもとてもお偉いお方なのである。

 この論争の方のきっかけは、創価学会御用、潮出版発行の家庭婦人向け月刊雑誌、『パンプキン』(97.12)に掲載された同教授執筆の私への誹謗記事だった。しかも、上記の失礼極まりない「ご批評」と並行して、同教授が、やはり創価学会御用雑誌『第3文明』の別冊で、「池田大作レイプ裁判」に関する提灯記事を書いていることが判明した。そこで私は、上記の私への誹謗中傷記事に関する潮出版の編集責任を問うと同時に、親元に当たる創価学会に対しても批判活動を繰り広げることを、メーリングリスト上で宣言した。さらに、その後、「創価学会そのものへの批判」と言うよりも、「レイプ魔・池田大作の独裁的支配下の創価学会への批判」と言い直すことを、同じくメーリングリスト上で表明した。

 以上のような経過が、組織問題での悩みが多いはずの「現」および「元」創価学会員の関心を引き、直接、私個人宛てにmailを送ってくることにつながったのに違いない。

 メーリングリストには、参加者の身元がまるで分からないの特徴がある。創価学会員も結構多いようだ。しかも、メーリングリストで私のことを知りながら、メーリングリスト上での意見発表ではなくて私個人宛てにmailを送ってくる例も、心なしか、比率が高いような気がする。比率だけではなくて、個人宛てmail」にしてくること自体が、一種の「匿名」希望なのであるが、その内容にも、メーリングリストの参加者全員には知られたくないに違いないような、結構、ドキッとさせられる部分が多い。

 ここへの転載は、そのごく一部だけとするが、たとえば、次のような告白である。

「長いこと創価学会にマインド・コントロールされていました」

「対創価学会の事となると、学会員は非常に卑劣な手段を取る為、それを恐れる」

「私自身も、過去において、いろいろな工作に加担しました」

「創価学会は、池田太作(大作のワープロミスではありません)の指導のもと、あらゆる分野に学会員を配置し、既に法曹関係、官僚、芸能人、マスコミ、etc、と支配が進みつつあります」

「(私がメーリングリストに送った創価学会関係の「アングラ情報」について)詳しく教えて下さい」

 こういう創価学会関係の状況を知るにつけ、思い出されてならないのは、かつて『赤旗』紙面で大きく報道された「共・創協定」の経過である。今は引退した宮本顕治が、池田大作と直接会って「和解」したのである。しかし、その後、この「和解」と「共・創協定」の話は、とんと出て来なくなった。代わりに出てきたのは、ルーマニアのチャウシェスクと宮本顕治の関係である。やはりこれも直接会って、世界平和への国際協力を歌い上げたのである。

 組織というものは似てるな、組織のトップの振る舞い方も似てるな、と思うのは、私だけではないはずだ。日本共産党員の多くが、その頃、そういう感想を、かなり公然と漏らしていたのを、当時は「現」の私は、確かに知っている。これが、上記の「元」創価学会員とも共通する「元」の「元」たる所以である。

 この種の「元」の告白または暴露に対して、確かに上記のmailの一節のように、「学会員は非常に卑劣な手段を取る」ことがあるらしい。私は、創価学会員だったことはないから、このように「らしい」としか言えない。日本共産党についてなら、私自身が経験した事実を「事実」として自信を持って言えるが、創価学会であろうとも、今は亡き日本社会党であろうとも、自分が参加していなかった組織については、残念ながら「目撃証人」の資格がないのである。

 比較のために別の例を先に出すと、私自身が、「元」日本テレビ社員でもある。だから、自信を持って日本テレビ批判をするし、日本テレビを系列支配する読売新聞社なり読売グループをも、それなりの実感を交えて批判する。そのことを誰も非難しないどころか、多くの執筆者が、資料と証言を求めてくる。私は、この場合、目撃証人であり、そのことを皆が必要としている。日本テレビに立ち寄る機会もあるが、労組関係者だけではなくて、かつては会社側として私と激しく対決した元重役なども、ニコヤカに迎えてくれる。この現象は、社会の発展の一つの道標なのではないかと思う。

 もちろん、たとえば戦前の日本では、こういう立場は、一般には許されなかったのかもしれないが、読売新聞社に関しては、プロレタリア作家として一家をなした「元」社員、青野季吉の小説などが残っている。こういう「元」の証言の積み重ねによってしか、いわゆる組織悪の是正は不可能であろう。

 ところが、創価学会の場合と同様、日本共産党にも、「元」を「裏切り者」として憎み、「反党分子」のレッテルを貼り付けては、「左」の世界からの「追放」を図るという残忍な歴史がある。つい最近にも、すぐに「市民権を与えない」などと力む地区委員長もいた。現在は少し改善されてはいるようだが、未だに餓鬼の喧嘩のような、こういう癖は抜け切れていない。

「こういう癖」がついたのは、先に紹介したフランスの「元」共産党員、ラッシニエの言うように、マルクスが「階級闘争」の概念によって「社会主義に憎悪を導入した」からなのかもしれない。だが、このラッシニエ説を紹介した際にも注記したように、同じ歴史は何度も繰り返しているのである。

 ヨーロッパでは近代政治学の祖とされるマキャヴェッリは、組織統制の秘訣として、以下の3点を挙げていた。

 1.利益

 2.信仰

 3.恐怖

 このマキャヴェッリ説をさらに敷衍した説は多数あるが、基本型は変わらない。特に3.の「恐怖」となると、マキャヴェッリの同国人の末裔のマフィアなどが、未だに続けている典型的組織統制手段である。これも実は簡単な話で、何よりも自分自身の死を恐れる裸の猿の弱みを突く決定的な統制手段なのである。

 日本共産党の場合には、「裏切り者」「反党分子」「追放」「市民権を与えない」とは言っても「死」までの脅しはしていない。戦前に宮本顕治らが「スパイ」として尋問中に疑われた党員が死んだ例があるが、殺すことを意図していたのではないと信ずる。

 しかし、長年にわたって、いわゆる「糧道を絶つ」手段を用いていたことは事実である。私は、ある古参の共産党員が、たまたま、いわゆる「反党分子」が書いた本を出した出版社から自分の本を出したところ、その本の広告を『赤旗』から掲載拒否され、カンカンになって怒っていた事実を知っている。その時は、「本部」(『赤旗』は中央委員会の発行で、中央委員会と同じ「本部」の建物に中に編集部も印刷所もある)の了見の狭さに呆れたものである。

 ところが、その後、数年して初めて、私自身も似たような目に遭ったのである。この経験、いやむしろ事件は、その後、「元」となる経過につながる決定的なきっかけともなっているのである。

 まず、『赤旗』の広告掲載拒否に関しては、まったく同じだった。月刊の「本紙」と週刊の「日曜版」に普通のサイズの1面下段書籍広告を載せるのに、当時は15万円出せば足りた。当時、朝日新聞は同じサイズの同じ位置で、120万円と「聞いた」。つまり、「聞いた」だけで諦めていた。私には、日本共産党員の友人知人が多いから、『赤旗』の広告は非常に有効だった。直接の反応もあった。『赤旗』の読者には結構固い内容の本を買う層が多いから、その点でも重要な広告媒体だった。だから当然、『赤旗』の広告掲載拒否は、私への「糧道を絶つ」手段となる。

 この広告掲載拒否の事実を私が知ったのは、その対象となった本を出してから3か月ほど後のことだった。本の題名は『マスコミ大戦争/読売vsTBS』である。当時は自宅で取っていた『赤旗』に、一度も広告が載らないのに、3か月も経ってから事情を知ったというのは、実に寂しいことなのだが、中小出版社の経済事情もあろうかと勝手に想像して黙っていた。その時の出版社は、どちらかと言うと、出版界では「共産党系」と見られていた。だから、『赤旗』の広告掲載拒否などということは、まったくもって想像だにしなかったのである。

 ところが、やっと出た時には『激争/中曽根vs金・竹・小/佐川疑獄と国際エネルギー利権抗争』という長たらしい題名になったのだが、先の『マスコミ大戦争/読売vsTBS』の筋書きの一部となっていた「佐川急便」問題を原稿にまとめて、この次作の打ち合わせのために編集者を尋ねた際に、この出版社で珍しいことに、他の社員がいる前では話しにくいような顔付きで、「ちょっと、ご相談が」と言われ、社屋の外に出て、近くの喫茶店に入ることになった。しかも、編集者は口ごもっていて、なかなか本題に入らない。私の方から、遠慮なく言って下さいと催促して、初めて明かしてくれたのが、『赤旗』の広告掲載拒否だった。次の本でも、その心配があると言うのだ。

「理由は言わない」と言うのだから、想像するしかない。色々と想像の材料はあったが、やはり不愉快でもあるので、私自身が直接『赤旗』の広告担当者に電話をして、率直に聞いてみた。しかし、返事は同じだった。「想像の材料」の内の最大のものは、宮本顕治の登場だった。『マスコミ大戦争/読売vsTBS』の主人公の一人は、ナベツネだった。元東大細胞の総細胞長だったナベツネの経歴については、色々と書かれたものが多い。しかし、もう一つ真相に迫りたいと思って、「本部」に取材を申し入れた。結果として、「当時は中央の統制委員会の責任者だった宮本顕治(現議長)も参加する細胞総会が開かれた」とか、ナベツネ自身の手記からの「代々木に喚問され、十人近くの極左派の諸君の取りまき罵倒する中で宮本中央委員、山辺統制委員に詰問」などの引用となった。

 ところが、「これか」と聞いても、やはり返事は同じである。しかも、その後に試してみたのだが、その後に出した本についても、それ以前に広告を掲載してくれた本についても、一切、広告掲載のOKが出ない。ウンともスンとも返事がない。これで怒らずにいられようか。次回には、さらに詳しく、この「糧道を絶つ」手段に関する経過を述べる。

以上で(その6)終り。次回に続く。


(その7)『赤旗』書籍広告掲載拒否で「糧道を断つ」実質処分
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