武蔵野版『不祥事隠し』独自捜査シリーズ(その23)

委員長の餌で裏切り21民主の賛成と共産・市民のみ反対で
詐欺含み決算承認に社民党市議の監査委員も賛成

2000.12.3

 最早、年末。師走の忙しさに紛れ、本シリーズのドタバタ結末を駆け足で報告する。

 事実経過の順序とは逆になるが、武蔵野市議会の決算承認の状況を先に記す。12.8.全体会議で、採決に加わる必要のなかった自民クラブ出身の議長1名を除く29名の内、23名の賛成、6名の反対で、決算特別委員会の報告が承認された。

4,300万円の総額を公金横領として処理を多数で決定

 決算報告の中には、本シリーズの主題の税金横領事件の処理が含まれている。約4,300万円の総額を公金として受け取ったとし、それが横領されたので、盗難金と同様に処理するというのである。

 決算特別委員会では、市当局の説明に加えて、監査委員の監査報告が行われたが、本シリーズの前回で紹介した監査委員の仕事であるから、当然、同様の中味の実に白々しい報告振りで、臆面もなく、適法だとしていた。ただし、報告に立った監査委員の鈴木昭司の声が極端に小さかった。実は、臆病者なのである。だから、私が、傍聴席から、再三再四、「声が小さい!」と叱り付けざるを得なかった。

 決算特別委員会の「討論」も、擦れ違いのままだった。元納税課員の細川受刑者が代理人の弁護士を通じて、自分が横領したのは約2千万円、残りの金額については、「関係者に依頼されて発行した空領収証の金額が合算されているのかもしれないが、それは自分の横領した金員ではない」本シリーズ21「求釈明」より)と述べている「詐欺」の疑惑の解明は、ウヤムヤのままになった。

 全体会議での6名の反対の内訳は、共産党3名と市民の党3名であるが、両党は、このところ毎年、決算報告に反対しているから、今年の反対の内容に税金横領事件の処理問題が含まれているのかどうかは、鮮明ではない。いずれにしても、両党はともに、その後、自分たちが反対した決算の「不当性」を、市民に訴えたりはしていない。特に共産党は、これまでにも一度も、一般向けの政策宣伝紙などで、税金横領事件の疑惑を追及したことがない。議会で疑問が出ている問題を市民に知らせようともせず、少数で採決に負けると泣き寝入りするだけなら、今後は、やたらに、少数野党の存在意義を主張すべきではない。「主権者」たる市民は、依然として蚊帳の外である。

どこが野党かと驚くのは市民ばかりなりの社民と民主

 賛成23名の中には、市長の公然たる与党、自民クラブと市民クラブ以外に、公明党、社民党・市民会議、21民主の全員が加わっていた。

 社民党・市民会議は、かつての社会党の流れであるが、20年前の「革新市長」時代の勢いはどこへやら、凋落に継ぐ凋落の果てに、今や、たったの2名の最小会派である。社民党議員は1名で、もう1人は市の税務部の出身で無所属である。たったの1人の社民党議員、たき美也子の媛は、2年前には、社民党の党首、土井たか子の写真入りのポスターで選挙の宣伝をしていたが、かつての戦う社会党の面影を残すどころか、完全に市長の腰巾着に成り果てている。理由は実に簡単である。この媛の出身は、社会党というよりも、今や連合傘下の御用組合の自治労である。保谷市の市職労の書記から転じてマドンナ候補で武蔵野市の議員になったのだそうで、典型的な就職または転職組の議員なのである。別途、本シリーズ(その22)でも、議会選出の監査委員として、澄んだ発音の「たき」(戸籍上は「瀧」)よりも、濁った発音の「唾棄」の方が相応しい状態にあることを暴露したばかりである。

 21民主は、民主党を中心とする寄せ集めの会派で、自民クラブの8名に次ぐ7名を擁し、野党会派では最大である。昨年の真相解明決議に際しては、市民の党の呼び掛けに応じ、共産党と同様に賛成していた。今回の決算特別委員会でも、無所属で21民主に加わった新人の松村勝人議員が、税金横領事件の疑問点を質問しているし、何人かは私に対して直接、疑惑を覚えると認めていたし、この問題で市長選に向けて野党共闘を組むなどとも表明していた。ところがどっこい、全員が、轡を並べて、賛成に回ったのである。完全な裏切り行為であり、欺瞞の固まりである。信用できる連中ではない。

 決算特別委員会の委員長、古林わか子の媛は、21民主に属している。「無所属」で、いわゆる新左翼の「生活者ネット」出身の2期目の議員である。こんなつまらないことは記したくはないが、私は、決算特別委員会の傍聴席に座った直後、古林わか子の媛の厚化粧に気付いた。「生活者ネット」は、生活クラブ生協を基盤として各地で地方議員を出しているが、なぜか2期で交替と定めているのだそうである。2期目の古林わか子の媛にとっては、数ある特別委員会の内でも別格の決算特別委員会の委員長の椅子は、まさに花道であろう。

 以上、監査委員と決算特別委員会の委員の餌に釣られた自称野党、社民党・市民会議と21民主は、本当の田舎には申し訳ない田舎のドタバタ芝居で右往左往、竹光さえ振り回せず、目は眩み、よろける足元、ついには、御殿様の御家来衆に紛れ込んだのである。

「空領収証」無視の共産党の質問に質問した結果の質問

 私は、税金横領事件の処理に関わる部分についても、全部は傍聴しなかった。最初は別途の集会出席のためだったが、最後には、予想以上の醜態に呆れ果て、馬鹿馬鹿しくて時間の無駄、最早、聞く気が、まるでなくなってしまったのである。しかし、議員や事務局員からの事情聴取によって、主要なやり取りについては、確認している。いずれ議事録を見て、正確に論評する予定である。

 ここでも議事の順序とは逆になるが、やっとのことで、「空領収証」のキーワードが、市民の党の議員の山本ひとみの媛以外にも、日本共産党の議員の口から、議場内で発せられるに至った。

 この問題では日和見に終始していた共産党が、「空領収証」に言及するに至った経過には、私が直接関係している。

 これまでの経過と異なる条件は、日本共産党が決算特別委員会の委員に割り振っていたのが、犯人の細川受刑者の上司を夫とする本間まさよの媛ではなくて、議員としては新人の梶雅子の媛だったことにある。梶雅子の媛は、市議会議員としては新人であるが、本間まさよの媛よりは年長で、日本共産党系の新日本婦人の会の幹部であり、一度は市長選の候補者になったこともある。私は、この媛とは、地元の東京電力武蔵野支社への差別事件解決要請行動などで行動をともにしたこともあり、一応は旧知の関係にある。簡略に評価すると、いわゆる奥様出身ではあるが、PTAの役員などを勤めたこともあるとのことで、年齢並の常識は身に付けているようである。

 ただし、もちろん、まだまだ素人である。同委員会の場で冒頭に、さっと挙手して指名され、質問の先頭に立った際には、「横領事件の処理問題を抜きにした決算は有り得ない」などと、一見格好良く切り出したものの、「事件の核心は空領収証」などと決め付けるどころか、市長に対して、「分からないことが多いから明らかにしてほしい」などと要望していた。これでは、まるで話にならない。相手は、海千山千というほどではないにしても、「俺は村中で一番……」はぐらかし常習犯の市長である。土屋正忠の彦の下手糞ながら図々しくも不様に惚け通す作戦が、悪臭紛々、醜くも展開されるに決まっており、時間切れの延長なし、決定打には至るわけがない。もっとも、この田舎(本当の上品な田舎には失礼!)議会の風習では、何が決定打になるのかは、まるで定かではないのだが……。

 梶雅子の媛が、やっとこさ、「空領収証」のキーワードを含む質問を行ったのは、決算特別委員会ではなくて、その報告の承認を求める本会議になってからである。その経過については、本人の口からは何も明らかにされていないが、私は、上記のような決算特別委員会における梶雅子の媛の質問を傍聴した後、つぎの質問状を、梶雅子の媛に郵送している。


日本共産党・武蔵野市議会議員・梶雅子殿

2000.12.02.
武蔵野市西久保1-49-16
インターネット総合誌『憎まれ愚痴』編集長・木村愛二

 前略。私は、さる11月29日、武蔵野市議会の決算特別委員会を傍聴させて頂きました。貴殿は、日本共産党議員団を代表して質問をなされましたが、その際、横領事件問題に関する疑問を呈し、決算の前提としての決定的な重要性を指摘し、さらなる情報公開を求めながらも、事前の資料請求では全く横領事件関係資料の提出を求めておらず、議員には渡っているはずの別紙『求釈明』の存在を指摘もせず、この別紙で公的な資格のある原口弁護士が開示を求めた資料を、市当局が議会に提出していないことを、非難なさいませんでした。

 私は、この別紙『求釈明』の前提をなす『退職手当返納命令書』『公金横領金弁済請求書』『回答書』『回答及び抗議』『通知書』を入手しており、これらが横領事件に関わる疑惑の核心を突く公表資料であることを確信しております。

 貴殿が、以上の公文書の存在を指摘せず、活用されなかった理由について、是非とも御教示下さい。もしも、その理由が、日本共産党とは対立関係にある市民の党の山本ひとみ議員が、上記資料の存在に関わりを持つことにあるとすれば、1960年安保闘争以来、日本のいわゆる左翼諸党派の醜い「ジコチュー」の実態を、下から観察し続けてきた職人肌の私としては、許しがたい背信行為と存じますので、心して回答されるよう、伏して、お願い致します。以上。


 梶雅子の媛からの返事はなかった。私の質問は皮肉たっぷりだったから、返事がこなくても非礼を咎める気はない。私は、この質問によって、「空領収証」のキーワードが、武蔵野市議会の議事録に記録されさえすれば、それで一応の成果と判断する

 議会での経過の要点を繰り返すと、梶雅子の媛は、文中の「11月29日、武蔵野市議会の決算特別委員会」の席上では、「空領収証」のキーワードを含む「求釈明」その他の公文書の存在については、まったく何の指摘もしなかったのである。梶雅子の媛が、「空領収証」と言う言葉を発したのは、決算特別委員会の席上ではなくて、その決算の報告を承認するための全体会議においてだけだったのである。

 つまり、梶雅子の媛は、自分が特別委員会では発言しなかったことを、特別委員会の報告を受けて承認するための全体会議の場で、初めて発言したのである。これは、少数にしぼって集中的な議論を比較的に長時間行う特別委員会の制度の主旨から言うと、おかしなことなのである。では、梶雅子の媛が、それ以前に「空領収証」のキーワードを含む「求釈明」その他の公文書の存在を知らなかったかというと、ちゃんと知っていたのである。それらの文書は、市当局の手で議員の全員に配布されていたのである。

 だから、その間に私が送った上記の「質問状」の存在を抜きにすれば、まるでチグハグな話になる。だから、「空領収証」のキーワードが、梶雅子の媛の口から議場で発せられたのは、私の皮肉が通じた結果であると判断しているのである。ああ、しんど………。

以上で(その23)終わり。(その24)に続く。


(その24)横領発覚の連絡が「相次いだ理由は先方に聞け」と珍答弁で市長は逃げたが
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