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読売グループ新総帥《小林与三次》研究 終章-3

終章《マスコミ独占集中》

新聞の「専売」、電波免許の「独占」、マスコミの系列支配、この巨大グループのおごりを撃つものはだれか

3 どうする?! ピストル・マニアの“元”拡販団長

 だが、新しいかどうかは別として、小林時代の読売新聞は、正力時代の再現で終るわけはない。部数世界一は務台時代に達成されたものだし、専販店支配とヤクザ拡販は、どちらかといえば務台の遺産といえよう。小林は正力・務台の跡を追わねばならない立場にある。小林は、

《新聞の宅配制度にふれ、わが国の新聞を支えている最大のものが宅配制度であり、それをどう維持していくかが重要だ、と強調した。しかし「販売とかヘチマとかいうのは、それは簡単なことなんですよ」と言い、いわゆる新聞販売の正常化については、あまり話さなかった》(『現代』’81・10)

 というのだが、まさかピストル密輸事件の関係者までが「ヘチマ」で済むものではあるまい。

 というのは、「小林与三次新社長も頭が痛い」という写真説明つきで、『週刊文春』(‘81・9・10)が、特集記事を組んでいるからだ。

 題して

「なぜ新聞に一行も出ないのか
 読売新聞拡販団長が
 ピストル二〇〇丁密輸事件で逮浦」

 記事内容には若千の誇張ありとはいえ、やはり大問題なのである。

 とくに問題なのは、読売の圧力によるものか、それとも各紙自身の思惑によるものか、ともかく朝日は、当の「団長」さんの肩書きを「会社役員」でごまかし、毎日は、あっさりと名前そのものまでねぐってしまったことだ。わたし自身も調べたのだが、警視庁記者クラブで、逮捕者の一人である矢野武久(朝日では公久)が、レッキとした「読売新聞拡販団長」であることを、だれ一人として知らぬものはなかったというのに、それが報道されていないのだ。こんな有様で、「国民の知る権利を守る」などと、一方的な請負いをされたままでは、まさに身の危険を感じないわけにはいかないのである。

 記者クラブの実状は、あちこちで批判の的となっているが、警視庁でも御多聞に洩れず、封建支配そのままの「言論差別構造」が築かれている。

《警視庁には、次のような名称でクラブが三つも存在している。

 七社会=朝日、毎日、読売、日経、東京の五大紙と共同通信社との六社で構成、会員数六〇名

 警視庁記者クラブ=NHK、サンケイ以下六社、四五名

 警視庁ニュース記者クラブ=民放を主とする五社、三〇名

 なお、これら三クラブについては、クラブというものの性格からしても、相互の間に格差などあるべきはずはなく、当事者はいずれも口をそろえて「全く平等」といっているが、現実には、暗黙のうちに格付けが決まっているようで、伝統を誇る「七社会」がトップ、以下右にならべたとおりの順位とされている。

 たとえば警視総監の記者会見は、時間的にこの順序で行われるし、七社会のメンバーといえば庁内でも通りがよく、それなりの顔もきくというわけである。NHKとサンケイはこれまでに度々七社会への入会を要請してきたが、七社会側は頑としてこれを拒否しつづけてきたといういきさつもある》(『新聞社』)

 先を急ぎ過ぎたが、事件の経過は、つぎのようなことらしい。

 朝日新聞(’81・9・2)によると、広域暴力団・住吉連合の米国ルート短銃密輸事件で、第二次摘発があり、逮捕者は合計二八名、押収した短銃は四三丁。担当の捜査四課は、密輸された短銃の総数について、「百丁は越す」と見ているらしい。そこで『週刊文春』は、「二〇〇丁」としたわけだ。また、第二次の逮捕者、の中に、「杉並区阿佐谷四丁目、会社役員矢野武久(四二)と書かれていたのが、「武蔵野総合企画社長」であり、この「会社」が、読売の「城西地区」(杉並、中野、渋谷)をエリアとする拡張販売団だったのである。また、矢野は、テキ屋、宮崎組のナンバーツーだというし、容疑は「銃刀法・火薬取締法違反」であり、「自動式挙銃四丁と実弾二百発」を所持していたらしい。

 さて、報道上の問題のポイントのひとつには、警視庁の発表の仕方もある。

 そこで、「読売新聞幹部が警視庁に“圧力”をかけた」(『週刊文春』(’81・9・10)という「噂」の真否を確かめるため、警視庁広報室に電話をしてみた。やはり、大体において、一市民を見くびった返事しかなかった。そして、「読売拡販団長」という矢野の「職業」について、「内偵の結果」を発表しなかったのかと聞くと、「いえッ「警視庁は、不必要なことは発表しません!」などとふざけたごまかし方。そこで、朝日の記事をよくみると、「新たに捕った」ものの発表は、こうなっている。

  住吉連合池田会佐久間組組長佐久間国夫(三八)

  同会宮島組組員大塚宣夫(三三)

  会社役員矢野公久(四二)

  ポルノ雑誌販売杉山昭夫(三六)

 ほかの、すでに逮捕されていた共犯者については、

  元貿易商石戸勝夫(三六)

  池田会官島組組長の宮島裕(四二)

  元留学生、三浦誠(二四)

 といった具合である。このように、「組」の名称か職業の内容が、全員について明らかにされているのに、ただ一人、矢野だけが、ただの「会社役員」とぼかされているのだ。とくに「ポルノ雑誌販売」の杉山は、住所が鳥取県となっている。警視庁が住所・氏名・年令だけを発表し、あとは各社の取材によるものとは、どうしても考えられないのだ。この矛盾を追求すると、警視庁広報マンは、「うッ」とつまって返事なし。ごまかしに、「いやッ、週刊誌はあることないこと……」とばかりに話をそらしてきたものである。

 この件では、明らかに、読・朝・毎の各紙と警視庁とは、グルであった。わたしの自宅は、かの矢野兄貴の拡販エリアである。そして、この一年間に三回も拡販団員の御訪問を受け、家人がおそるおそるの御引取りをお願いしている。わたしが在宅の時に来てくれれば、今後の紙面研究のために、自転車一台で一年契約をしようかと考えているところだ。しかし、契約書にハンコをついたあとで、ピストルをチラチラ、自転車は一目見ただけの泣きの別れか、などと愚考中。いやはや、これでよいわけはないのだが、警察と巨大マスコミがグルで見逃すというのでは、だれを頼りにすればよいのだろうか。

 ともかく、新聞と自動車会社と電機メーカーという巨大グループが、競って専売ルートを拡げるという、日本独特の押し売り構造は、地元民には迷惑千万である。

 しかもその元凶が、テレビもラジオも配下に組み込み、さらには雑誌にまで“売り込み企画”。そうやってまで拡張した読者からの収入の一部が、テキ屋と広域暴力団の資金源になっているのだ。

 その際、内藤国夫は、「新聞自滅の道」(『宝石』’81・10(を憂い、「拡販団を利用しているつもりの大手・中央紙が、実は、拡販団によって足元を食いつぶされていることに気がつかないのだろうか」、と問い掛けている。だが、事態は、そんなに単純なものではない。かつての読売争議では、務合光雄自身の現場指揮で、あのヤクザ共が、ストライキで輪転機を守る労組員に殴り掛り、重傷を負わせ、労組員を社屋からたたき出すという荒仕事をやってのけたのだ。そしていまや、新聞だけの問題ではない。一九八一年中に右翼があつめた資金は、二五億円と試算されている。これが、レーガン=鈴木(直角)政権の暗流であり、そして、小林は、その日米反動体制の支えとなるべく「新聞報国」の宣言をしているのだ。新聞界のトップに「正常化」を期待するの愚は、最早、明らかではなかろうか。読者と新聞労働者、ジャーナリストが、自ら闘う以外に「道」は開けないのではなかろうか。


4 ジャーナリストいま立たたずんば、いつ?