反FGM基金 (3/6)

反FGM基金プロジェクト報告


2009年度反FGM基金交付団体
ソマリランドSomaliland Family Health Association (SOFHA)最終報告


「FGMに関する意識向上プロジェクト」(後半)
2013年9月18日~22日、5つの地域(Sheikh, Burco, Oodwayne, Salahley, Baligubadle)
においてシェイク(地域指導者)を対象に対話型ワークショップ とビデオ上映を行った。参加者は合計100名。シェイクと良好な関係を構築することは、FGMの意識向上には欠かせない要素だ。

最初のワークショップには、首都ハルゲイサにBaliguladleのシェイクが集まった。まず参加者がコーランを唱えるところから始まり、その後SOFHAスタッフがワークショップで取り上げる議題などについて説明し、宗教省の局長が開催の言葉を述べた。ディスカッションに入る前に、スタッフは参加者のFGMに関する知識や考えについての評価シートを作成した。
他の4地域でも同様のワークショップを行ったが、発言や意見は若干違った。参加者からは、「コーランやシャリーア(イスラム法)がFGMを禁止しているという指摘に同意するが、すべてのFGMが許されないのか」「FGMは長年にわたる伝統文化でイスラムとは無関係だが、宗教指導者たちはこれまで何も言及してこなかったので今でも続いている」といった意見や疑問が挙げられた。

途中、FGMの弊害について説明するビデオを上映した。このビデオでは、ソマリランドの著名な宗教指導者が「シャリーアはFGMを認めない」と指摘し、医師がFGMは女性や赤ん坊をどれほど傷つけるものかについて解説している。参加者からは、地域でFGMについて啓発するには、こうしたビデオを活用すること、そして有名な宗教指導者が話をすることが最も有効だという声が上がった。さらに、「こうしたワークショップは男性ではなく、FGMに直接かかわり、それを行っている女性を対象とするほうがいい」という指摘もあった。最後に参加者は、「地域の指導者として、FGMはイスラムが認めるものではないことを人々に伝える」と表明した。だが、スンナタイプのFGM(一番軽いタイプ)は行ってもいいのではと疑問を持つ者もおり、「いかなる種類のFGMも許さない」と全員一致で合意するまでには至らなかった。

今回明らかになった問題点としては、
・プロジェクト期間が短すぎた。その一方で、移動にかなりの時間がかかった。
・事前に参加者にディスカッションの要点を十分に周知させられなかった。
・スタッフが足りなかった。アシスタントを補充するべきだった。
・必要な備品が足りなかった。
といった点が挙げられる。

各地で1日だけの開催であったため、ディスカッションが盛り上がり、参加者がもっと話をしたいと思っても終了しなければならなかったのが非常に残念だった。だが、FGMの抱える社会的、医学的弊害について、十分な情報を提供する良い機会となった。参加者は、今後もFGM廃絶のためにこうした活動を続けるようSOFHAスタッフを激励し、この慣習の弊害について自ら人々に教えることに同意してくれた。また、「FGMについての啓発キャンペーンをソマリ人に影響力を持つ宗教指導者とメディアを通して行う」「学校でFGMの弊害について教えるようカリキュラムに組み入れる」といった具体的な提言もあった。
(写真はワークショップの様子)




―ニュースレター68号掲載記事より抜粋―



反FGM基金プロジェクト報告


2011年度反FGM基金交付団体 ケニアSinyati Women Group(中間報告)

プロジェクトは、ケニアのバリンゴ県マリガットで少数民族のマサイ系イルチャムスに行う反FGMキャンペーンで、2012年3月から開始。

まず、5地域で女性の健康とFGMについての対話集会を行い、合計で369人の女性が参加した。参加した女性たちからは、「FGMが少女の若年結婚や学業不振の要因であることがわかってよかった」「FGMはフィスチュラ(ろうこう)や離婚の原因にもなっている」といった意見が出された。皆で一致協力してFGMをなくす必要も理解された。
「切除者の女性たちは別の仕事をしてほしい」「娘にはFGMを受けさせない」という声も上がった。FGMを受けた少女と受けていない少女の対比も明らかにされ、切除されていない少女たちが教育を受け続けているのに対し、切除された少女たちは若年結婚の犠牲となっていることが指摘された。

年齢グループ(注:イルチャムスは年齢グループによって分けられる階層社会)ごとの男性向け訓練セミナーを計画していると話すと、女性たちからは「男性もFGM廃絶を支持できるようFGMについて正しい情報を得る必要がある」と期待の声が寄せられた。
女性向けの年齢グループ別セミナーはすでにキセリアン地区で開き、自分の娘の健康やFGM廃絶キャンペーンに大きな関心を持つ女性たちから高い評価を得た。これらのセミナーをきっかけに、異なる年齢グループの女性たちが団結し、貧しい家庭の少女たちのために生活必需品購入の資金を集めたり、食料の寄付や学用品の提供をしたり、また体の不自由な女性たちのために屋根をふいたりといった互助活動を始めている。なんとうれしい展開!

男性向け年齢グループ別セミナーもキセリアン地区で開催した。“Ilmepoye”“Ilkiramat”“Ilkileku”という3つの年齢グループを対象にしたセミナーで、参加者はそれぞれ110名、89名、26名となった。ここでは、特に若年結婚や妊娠の可能性のある娘を持つ “Ilmepoye”の男性たちが格別の関心を寄せ、若年結婚に結びつくFGMを廃絶する必要性が理解された。訓練セミナーは今後、他4か所で行う予定である。
プロジェクトを実行する上での問題点としては、まず地域の安全性があげられる。イルチャムスと近隣の地域間で、家畜の奪い合いによる争いが勃発している。このような争いの結果、住民が移転を余儀なくされ、一部の地域ではプロジェクトの進行が予定より遅れている。また、道路が舗装されていないため、豪雨により移動が非常に困難になっている地域がある。その場合、遠回りになる道を行かねばならず、交通費もかさむ。

(写真は女性対話集会の様子)







―ニュースレター63号掲載―

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<Sinyati Women Group(シニャンティウィメングループ)について>
1997年設立。当初少女を小学校に通わせる運動を行い、地域との協力で保育園を創設するといった活動に従事。やがて中学校に進学できない少女が多いのはFGMを受けてすぐに結婚させられるためと知り、2004年から反FGMキャンペーンを開始。“Sinyati”はイルチャムスの言葉で「純粋」「無傷」「汚れのない」といった意味。FGM実施率は国全体で27%、プロジェクト実施地域では94%。



反FGM基金プロジェクト報告


2012年度反FGM基金交付団体 ガーナUWRWA
<プロジェクト>
地域の首長やリーダー、宗教指導者、議員、地区のジェンダー担当局など、決定権を握っている人々を対象にしたワークショップが中心。現地での意識調査も行う。
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2013年3月に実施した調査の報告

ここ20年ガーナではFGMが犯罪であるという認識が広まり、FGM実施者が起訴されるケースも見られる。2007年にはFGM禁止法が強化され、懲役が最高10年に延び、違反者の範ちゅうも拡大された。しかし、北西部においてFGMはいまだに根強く継続されており、犯罪として通報されることはほとんどない。そこで、地域の人々がFGMについてどのように考え感じているのか、その詳しい情報をFGM廃絶対策に反映させる目的でこの調査を行った。

調査地域
北西部7地域をダガーバ南、ダガーバ北、シッサラの3ゾーンに分けて調査した。

調査方法
300世帯を無作為に抽出。特に対象としたのは、若者(特に少女)、未亡人、薬草専門家、女性グループ、地域NGO、引退した切除者。訓練を受けた調査員が、FGM被害者には考慮しながら回答者と対面式で聞き取りを行った。地域のジェンダー担当官、学校管理委員会、医療専門家など地域で活動する専門家への聞き取り、オピニオンリーダーたちによる討論も行った。(写真は、対面式聞き取り調査の様子)







調査対象者の属性
[性別] 女性95.3%(286人)、男性4.7%(14人)
[年齢] 10~19歳16.2%、20~29歳17.6%、30~39歳18.0%、40~49歳19.4%、 50~59歳18.7%、60歳以上10.2%
[職業] 農業37.2%、小商い25.9%、学生20.7%、主婦・その他12.4%、裁縫師3.8%
[配偶者の有無] 既婚53.8%、未婚26.6%、未亡人6.1%、離婚2.1%、別居1.4%
[学歴] 非識字47.3%、中学校18.7%、小学校15.0%、高校9.2%、高等教育8.1%、非公式教育1.8%

FGMについての理解
ほとんどの回答者がFGMについてはよく理解しており、79.3%(238人)がFGMは「女性外性器全部あるいは部分の切除」、8.7%(26人)が「小陰唇部分とクリトリスの切除」と回答。12%は「FGMが何なのか知らない」と答えた。この12%という数字は低いように見えるかも知れないが、調査チームは驚きをもって受け止め、さらに啓発活動に力を入れる必要があると感じた。

FGMに関する態度
35.7%がFGMについては緩やかに変化することが望ましい。32.3%はFGMには全面的に反対。
FGMを支持しない理由としては、FGM禁止法がある33.7%、宗教的義務ではない33.2%、人に笑われる20.3%、合併症の危険13.7%。5.3%はどちらともいえない、2.7%はわからない。
興味深いことに、24%はFGMに賛同を示した。FGMを支持する理由は、淫乱・不貞行為を防ぐ36.0%、より良い結婚ができる23.0%、良い伝統だから17.3%、処女を守る9.7%、清潔を保つ9.3%、男性の性的快感を高める2.7%、宗教的義務2.0%。その他の理由としては、成人儀礼として必要だから、産道が広がり出産が楽になるから。

FGMの実施率
56.7%がFGMを受けていると答えた。26%がFGMを受けておらず、17.3%は受けているかどうかわからないと回答。ガーナ全体のFGM実施率は比較的低いが、調査実施地域では高かった。FGMは特定の地域や民族グループに結びついていることがわかる。

FGMの施術方法
FGM専用の「ベラ」というナイフを使ってクリトリスを切除する38.7%、腐食性の薬草などを使ってクリトリスを除去する3.4%。通常「ワンザム」と呼ばれる切除者(男性もしくは女性)が施術を行う場合が多い。FGMはたいてい5~7歳で、あるいは乳房が膨らみ始めたころに施されるので、回答者の58%はどのように切除されたのかわからないと回答。

年齢別FGM実施率
10~19歳では46%、20~29歳では50%、30~39歳は51%、40~49歳は55%、50~59歳は53%、60歳以上は29%。回答者のうち16人は年齢がわからないと回答した。40~49歳では55%だったが10~19歳では46%と、年齢による違いが見られる。ゆっくりではあるが、若い世代でFGM実施率が減少していることが示されている。

なお、この調査報告を兼ねたワークショップを翌4月に開催し、今後のFGM廃絶活動について活発な議論を行った。(写真は、地域の首長(真中)による開会挨拶の様子)
  



―ニュースレター65号掲載記事より抜粋―

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<ガーナUWRWAについて>
2000年に設立された25の地域女性団体と10の未亡人会を抱える統括組織。アッパーウエスト州の11行政区で、女性の社会経済的エンパワメントを目指し、貧しい女性たちへの少額融資、未亡人や孤児への生活支援、FGMを含む有害な文化慣習を廃止する教育、職業訓練、平和構築など、様々な分野で活動。国全体のFGM実施率は5%だが、アッパーイースト州では36%と、地域によってかなり違いがある。



反FGM基金プロジェクト報告


2012年度反FGM基金交付団体 IACナイジェリア・エド州支部(中間報告1)

<プロジェクト>
教育や啓発ワークショップなどに加え、女性向けの職業訓練を行うもの。主食のカッサバを加工する技能や小規模経営についての訓練を通して、女性たちが力をつけ、生活水準が改善することが期待される。こうした包括的なアプローチによって、地域全体に利益がもたらされ、反FGMに対する人々のより積極的、持続的な取り組みが望める。
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2013年2月、IACエド州のメンバー4人がエグバ地区のコミュニティ・リーダーたちを訪問した。
WAAF支援プログラムと、かなり大きな範囲のコミュニティに対する教育の必要性を伝えるのが目的。




村の首長(写真:右は通訳者)は非常に好意的で、プログラムは地域の人々がマーケットや畑に出かけない、休日に実行するとよいと勧めてくれた。

2回目の訪問では村人たちと広く話し合うことができた。構成は、女性50人、男性20人、若者たち15人。
コミュニティ・リーダーたちを除けば、85%の村人がセッションに参加した。コーディネーターがWAAFの支援を受けた今回のプログラムを紹介し、カッサバの加工機をしまう場所を確保しなければならないと村人たちに説明した。
村人たちからは「マーケットはとても遠いところにあるので、収穫したカッサバをどうやって運ぶのか? 村人全員がカッサバ農家になるのか?」といった質問があった。私たちの答えは、すべての村人がカッサバを植えることはできない、大量のカッサバを買いつけにくるバイヤーをみつけ、契約を交わさなければならないことなどを説明した。さらに、WAAFプログラムの信頼性についても説明した。それに対し、村の首長は全面的に協力すると約束し、FGM廃絶の必要性を言葉を尽くして村人たちに説明してくれた。

2013年3月28日、エグバの野原で女性と若者たちのためのセミナーを開いた。目的はFGMのもたらす結果について知らしめ、自分の意見をはっきり持つ教育をすること。



セミナー開催前のお祈り




人体模型を使いながらFGMの有害性を説明


収穫前のカッサバ農場も訪問した。カッサバ農場の農民にはもっと多くのカッサバを植えてもいいという方向が示された。3週間後にまた訪問するという約束を交わした。(写真は、典型的なカッサバ農場(土中の茎がカッサバ))




―ニュースレター65号掲載記事より抜粋―

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<IACナイジェリア・エド州支部について>
1993年設立(IACナイジェリアは1985年設立)。その熱心な活動により、エド州はナイジェリア国内でFGM禁止法を採択した最初の州になった。15~49歳の少女・女性におけるFGM実施率は国全体で19%(2003年DHS)。南部では60%、プロジェクト実施地域では80%。




反FGM基金プロジェクト報告


2012年度反FGM基金交付団体 IACナイジェリア・エド州支部(中間報告2)

2013年5月
カッサバの加工機を設置する土地の確保について村の長老や若者と2回の話し合いをもった。まず、選んだ土地は、加工処理したカッサバの水分を排出できる溝の近くで、規模の大きいカッサバ農家の敷地内にある。土地は関係する村々が十分話し合った結果選ばれたものである。次の段階として、その場所は掃除され2週間のうちに小屋が建てられ、運転中のエンジンの振動が床を傷めないようにセメントと花崗岩で床が打ち固められた。
備品としては鉄製の棒、セメント7袋、ブロック8個、木材、アルミ、水を入れるドラム、機械の運転中に滑車を動かすための金属、加工機を圧搾機とつなぐベルト、テーブルなどが必要であった。カッサバによるバイオ燃料は自然ガスで、停電の心配もなく発電機の経費もかからないので、購入したほうがよいとのアドバイスを受けた。

2013年5月25~31日
プロジェクト対象者の15人の女性が簿記と小規模ビジネスの運営について訓練を受けた。このようなトレーニングは、カッサバ加工のビジネスから収益が上がってもそれを適切に使用できずに頓挫させてしまうといった事態を防ぐために必要なものである。

2013年6月1~15日
14人の若者に対して起業運営の訓練と、FGMとFGM廃絶についての教育を行った。リンダ オサレンレン(IACシニアプログラムオフィサー)へ、カッサバ加工機の設置式へのゲストとして招待状を送った。

2013年6月17~30日
機械は支払いを済ませベニン市からエグバ地区の村へ運ばれてきた。設置の工程は2週間続いた。穴掘り、機械を置く土台固めなど。この時期は嵐や雷鳴もある雨季のため苦労した。

2013年7月1~10日
機械の運転について若者たちへトレーニングを行った。

2013年7月16日
安全対策について地域リーダーと会合を持った。地域リーダーたちは、機械を安全に管理することを約束し、警備員を雇ってくれた。また、農場へ行くのは決められた作業日のみとすると明言した(土地の人々は、
伝統的に決められた日以外に農場に行くと病気になったり、森の霊に会ってしまうという迷信を信じているため)。

2013年7月23日
若者、女性、男性など全部で17人が機械運転開始に立ち合った。最初にカッサバの皮をむき徐々に機械に入れ、ペースト状になるまで挽く。それを袋に入れてきつく縛り、水気を切る。完全に乾くまで数日袋のままそこへ置いておく。乾燥したら加熱し “ガリ”という食材として販売される。女性たちはこの工程に大変興奮していた。IACメンバーの何人かもこのような工程は初体験だった。祈りがささげられて、その後軽食と飲み物が振る舞われた。機械には「2012年度WAAFの反FGM基金により製造」という文字が刻まれている。



カッサバ加工機の設置式で、IACスタッフから人体模型を使ったFGMの説明を聞く聴衆




カッサバをすりおろすグラインダー、ドラム、エンジンなどのそばでFGMに関する質疑応答を行う




カッサバを機械にかける女性




皮をむいたカッサバをグラインダーにかける




すりおろしたカッサバにパーム油を加える




すりおろしたカッサバを若者の手を借りて袋につめる


―ニュースレター66号掲載記事より抜粋―



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