聞き書き『爺の肖像』11

●11 引揚げ2

(今回手抜きです。)

 爺の著書の一つに『最高裁長官殺人事件』という推理小説がある。執筆当時の1988年は、長年の労働争議が終ろうとしていた年であった。これからの人生をどうするか思いを巡らせ、小説家に狙いを定めたのだ。

 当時も今も、小説家として売り出すためには、どこかの賞をとらねばならない。出版社勤務の友人の助言を得て、当時書いていたものを切り詰めて応募したのが『最高裁長官殺人事件』である。最終選考にまで残ったが、賞は逸した。(一九九一年に汐文社から発行されている。)

 せっかくの大作を切り詰めたのが爺には大いに不満であった。後年自分自身のメディア(ホームページ)を持つと、当然のごとく発表した。これこそが本物だと。

 『煉獄のパスワード』である。
 http://www.jca.apc.org/~altmedka/rengoku/rengoku-0-2.html

 が、言ってしまうと、出だしがへっぽこで女性の描写が類型的で、先に読み進む意欲がいきなり喪失する。女を書かせれば話にならないのは、女をよく理解できていないからであろう。爺の大好きな百科事典の中に女は住んでいない。

 しかし、その門前払いの神宿るような導入部を我慢して突破すれば中味は濃い。というか、ぎっしり詰めすぎているのだが。関東軍の生アヘンがテーマで、とすれば、日中戦争が当然重要な要素となる。爺の実体験が変形されてあちこちに織り込まれる。

 こんな具合である。

(『最高裁長官殺人事件』もホームページに掲載しています。)
 http://www.jca.apc.org/~altmedka/saikousai.html

聞き書き『爺の肖像』12 九州