日本経済再生資料「米国重要技術報告書/復活へのカルテ」

2000.7.4

日経産業新聞[連載(1)-(10)]一括リンク
これを読まずに日本のIT革命を論ずる勿れ

 ブッシュは、湾岸戦争直後に『国家重要技術』報告書を議会に提出した。日経産業新聞はその報告書の概略を、「米国重要技術報告書/復活へのカルテ」(1991.5.21~6.3)と題し、「米国が優位を維持すべきハイテク分野・産業を明確にした」というリードではじまる10回の連載で報じた。その内の3回分は「情報・通信」であった。「ソフトウェア」などの小項目のいずれにおいても「日本」の動向が注目されている。[中略]アメリカ系多国籍巨大企業が、日本を[アジアへの]飛び石の基地として再占領しなおすために研究した大戦略の、ごくごく一端といっても過言ではない。
 ところが、この「日経産業新聞」の連載記事のことに触れる論文が、まるでないので、日経のデータベース担当者に聞いたところ、インターネット以前なので、キーワードのITは愚か、情報ハイウェイでも、出てこない……『電波メディアの神話』第七章-2)

⇒1991:米国重要技術報告書/復活へのカルテ
(このページ「政策提言資料:日経産業新聞[連載]一括リンク」とほぼ同じ内容)

(1) 総論/譲れない22分野強化

 報告書は米国の産業競争力が低下し、ハイテク製品や国家安全保障にかかわる兵器さえも完成品や主要部品を他の国に頼る例が増えて米国の産業や安全保障の基盤が脅かされているとの分析に基づき、ほかの国に譲るわけにはいかないハイテクを明確にした。米政府は報告書に沿い22技術で強化策を進めることになりそうだ。また、海外からの競争で22技術の産業基盤が浸食されるようだと、対外的なハイテク摩擦につながる可能性が強い。(日経1991.5.21)⇒全文を読む

(2) 材料(上)電子・光の遅れ深刻

 米国は電子・光材料の開発でほかの国との競争上、深刻な危機に直面している。米国のシリコン基板作成技術は日欧と同等だが、市場占有率は1985年の60%から1989年の10%に低下した。米国はこの重要分野で技術的優位を保つのが困難なうえ、ガリウムひ素材料では明らかに後れをとつている。(日経1991.5.22)⇒全文を読む

(3) 材料(下)民生分野では劣勢に

 日本は、成熟した航空機産業をもたないために、一般の民生品市場に力を入れてきた。日本企業は土木や建築などの分野に高分子材料が利用できるとみて活発な研究を続けている。将来、航空宇宙以外の分野では、有利な立場に立つだろう。(日経1991.5.23)⇒全文を読む

(4) 生産技術(上)制御装置がカギ

米国で稼働しているフレキシブルCIMの数は日本の2倍以上にもなるが、日本はこの分野で非常に進んでいる。日本ではこのシステムをファクトリーオートメーション(FA)と呼び、世界最大の自動機械産業や優れた情報通信技術、設計・製品改良の思想に支えられて伸びている。(日経1991.5.24)⇒全文を読む

(5) 生産技術(下)柔軟な経営必要

 日本の高度な生産技術は将来、米国を超える可能性がある。米国の経営者は自動機器・システムを全く新しい生産システムづくりと見ず、古い機械の更新と考えがちだ。この態度は知的生産システムの開発、導入を遅らせる。経営者はこうしたシステムの優位性を認識できるようにならなければいけない。(日経1991.5.27)⇒全文を読む

(6) 情報・通信(上)日本がライバル

 しかし、米国以外の地域の競争力も高まっている。欧州は1992年の市場統合に格み規格統一で力をつけそうだ。労働コストの安い第3世界の国々も競争に加わる。また日本は最大のライバルになりそうだ。いくつかの日本企業は、製品製造工場と同様にきちようめんなソフトづくりを高度に組織化し、膨大なソフトづくりを進めている。(日経1991.5.28)⇒全文を読む

(7) 情報・通信(中)困難な民生転用

 米国企業は高性能センサー技術で優れているようにみえるが、外国との競争は激化している。外国企業は技術をすぐに市場に持ち込める能力がある。たとえば日本は軍事技術と縁がないのに、第2世代の赤外線イメージングと光電子センサー技術を確立した。(日経1991.5.29)⇒全文を読む

(8) 情報・通信(下)農業などに応用

軍事、製造業、農業、天気予報、気候変動予測など様々な分野で活躍する技術である。もともとは軍事用に開発され、戦闘を模擬したり、武器のモデルづくりなどに使われていた。10年後にはこの技術が発展して、設計、受注、出荷などをコンピューターが一括して管理する統合生産システム(CIM)につながり、普及するものと思われる。農業はシミュレーション技術の新しい応用分野の一つで、肥料の適切な量や与える時期が分かれば、収穫量も増えるし土壌汚染も防げる。(日経1991.5.30)⇒全文を読む

(9) バイオ・生命科学/エイズの予防も

 一方、米国のライバル国が地歩を固めつつある。医療技術分野でのドイツとの貿易バランスを見るとドイツが優勢である。日米間では米国が優位ではあるものの、米国は日本製の医療電子機器の主要輸入国である。日本の科学技術庁が最重視視しているのが医療技術とバイオテクノロジーである。各国間の開発競争は厳しさを増し、低コスト高品質な製品だけが成功するであろう。(日経1991.5.31)⇒全文を読む

(10) 航空・陸上輸送/総合力でリード

 多くの陸上輸送技術は、材料、通信、エレクトロニクスなど国家的に重要な技術に依存しており、欧州と日本は大掛かりなインテリジェント高速道路計画に着手している。米国では連邦や自治体のほか民間でもインテリジェントカー・高速道路システムを進めている。電気自動車は電池の寿命と低出力が依然として難関となっている。 (日経1991.6.3)⇒全文を読む

以上。


政策提言集ほか
WEB雑誌『憎まれ愚痴』56号の目次