憎まれ愚痴入口木村書店戻る┃  項目別案内

米国重要技術報告書/復活へのカルテ
(2)材料(上)電子・光の遅れ深刻

政策提言他
復活へのカルテ
(1)総論/譲れない22分野強化
(2)材料(上)電子・光の遅れ深刻
(3)材料(下)民生分野では劣勢に
(4)生産技術(上)制御装置がカギ
(5)生産技術(下)柔軟な経営必要
(6)情報・通信(上)日本がライバル
(7)情報・通信(中)困難な民生転用
(8)情報・通信(下)農業などに応用
(9)バイオ・生命科学/エイズの予防も
(10)航空・陸上輸送/総合力でリード



日経産業新聞(1991.5.21〜6.3)
[1991.5.22(5)]
………………………………………………………………………………………
[表]:国家重要技術と商務省・国防総省の重視技術との比較(材料分野)

国家重要技術 商務省 国防総省
材料合成・加工
電子・光材料

セラミックス 
複合材料
高性能金属・合金
新材料
新半導体素子

超電導
新材料 

復合材料
半導体材料
集積回路
超電導 
複合材料

(注)商務省の技術リストは昨年の「新技術報告書」、国防総省の技術リストは昨年の「重要技術計画報告書」に基づいている。

………………………………………………………………………………………

【材料の合成・加工】=材料合成で重要なのは(1)原子レベルで機能性材料を仕立てる組成制御技術(2)欠陥のない素子づくりのカギを握る超高純度材料(3)新合成法……の3分野。
 一方、加工の分野では(1)初めの段階から製品の最終形状に近い形に材料を作り上げるる技術(2)溶融金属から高性能材料をつくる急速冷却処理技術(3)高温材料を加工する電子ビーム処理技術(4)局所的な熱処理の出来るレーザー焼き入れ技術……が必要だ。
▼技術選択の理由・国際傾向=新物質の合成は電子、航空宇宙、交通、エネルギーなどの主要産業の技術的な進展の基本となる。米国ではこの分野の研究が欧州や日本ほど人気がなく、競争力維持には教育や応用を相当、重視する必要がある。
 米国の科学者は伝統的に新材料の性質の研究に関心が集中し、合成には目を向けなかった。だが、合成に重点を置いてきた外国の研究所も新材料の性質の研究力をつけてきている。米国産業界の基礎研究にかげりが見え、しかも短期的な製品開発に傾斜して、材料合成力をさらに弱くしてきた。
 材料加工、特に商業的な成功のカギを握る大量加工では米国の見通しが明るくない。これに対して日本人は産業界で幅広く生産や材料加工関連の技術を身につけてきた。韓国やブラジルなども日本に追随している。ただ、米国は航空宇宙などの用途で開発、企業化が先行している。
【電子・光材料】=電子・光材料は通信、画像処理、情報処理の分野の発展のカギを握る。電子工学と光学を融合する材料の開発が課題となっている。
 電子材料の代表、半導体は情報社会の基礎を築く。なかでもシリコンは電子分野の技術革新の主役を務めている。シリコンに代わる最も有力な半導体はガリウムひ素で、高速、低発熱、耐放射線性がある。
 一方、光材料では光通信やCD(コンパクトディスク)プレーヤーなどに用いられる半導体レーザーが電子素子のなかで重要。また、光信号を電気信号に変える光検出器も材料としてはシリコン、ガリウムひ素、セレン化合物などがあり、高性能素子にはインジウム・ガリウム・ひ素などが重要だ。
▼技術選択の理由・国際傾向=革新的な電子・光材料は、安全保障、経済の両面に恩恵をもたらす。電子工学はある程度限界が見えているが、工学と結びつくと情報処理能力が一段と向上する。その例としてシリコン基板にガリウムひ素結晶をつくる試みが出ている。長期的には超電導材料を使うことにより、速度や消費電力などで飛躍があるかもしれない。
 米国は電子・光材料の開発でほかの国との競争上、深刻な危機に直面している。米国のシリコン基板作成技術は日欧と同等だが、市場占有率は1985年の60%から1989年の10%に低下した。米国はこの重要分野で技術的優位を保つのが困難なうえ、ガリウムひ素材料では明らかに後れをとつている。
 日本は光材料にも強く、米国が最初に開発した半導体レーザーでも生産力が世界一になっている。米国は光ファイバーしか競争力がない。日本の優位性は光電子集積回路の開発で決定的な強みになる。産官共同の研究が日本で運んでいるが、この試みが成功すれば米国の電子、電算機産業は打撃を受けよう。
【セラミツクス】セラミックスの製法は最近になって洗練されてきた。強度と信頼性を高めるため、こわれれやすいセラミックスに繊椎やウイスカー(ひげ状化合物)を入れるマトリックス材料が有望となっている。セラミックスによる被膜で耐熱性の要求を満たそうとする応用もある。
▼技術選択の理由=セラミックスは摂氏1600度の高温に耐えるため、軍事・航空分野ではタービンの比推力向上に役立つ。重さは合金類より40%も軽い。また、陸上輸送分野では、自動車のエンジンに利用すると、燃費の向上が見込める。現在はセラミックス部品が高く付くが、将来は重要な役割を担うだろう。生産技術でもセラミックスは重要。カッターとしで強力耐熱合金と競合できる。熱交換器にすれば工業炉の熱効率を高める可能性がある。このほか、電子分野では、ICパッケージに利用され、将来はセンサー、光ICなどに応用されよう。
▼国際傾向=米国はセラミックスの研究開発で先導的立場にある。航空分野とつながりが深い高性能マトリックス材料の開発と製造では抜きんでている。しかし、航空分野以外では企業化の動きが鈍い。しかも日欧の企業に高品質のセラミックス粉末と強化繊椎の供給の大半を依存している。
 日本はモノリシックのセラミックスの加工で米国に勝る。半導体のパッケージ市場を支配し、自動車エンジンヘの導入でも米国より進んでいる。日本は自動車産業と素材産業が連携しており、技術に磨きをかけている。ただ、マトリックス材料では日本より欧州勢の方が開発力が高い。

以上で(2)終り。(3)に続く

(3)へ

WEB雑誌『憎まれ愚痴』
バックナンバー
目次一覧
連載記事一括
各号時事論評&投稿一括
亜空間通信
亜空間通信項目別分類


憎まれ愚痴入口木村書店上に戻る 戻る亜空間通信メール

2007.10.25改訂