米国重要技術報告書復活へのカルテ」 5

2000.7.4

(5)生産技術(下)柔軟な経営必要

[写真説明]:半導体分野の行方を左右するのは超微細加工技術

【超微細加工技術】1ミクロン(千分の1ミリ)以下や1ナノメートル(百万分の1ミリ)の精度で材料を加工する超微細加工技術のなかでは (1)超高速素子を実現する次世代の集積回路(IC)の作製技術 (2)ダイヤモンド薄膜など材料表面にさまざまな性質を持たせる薄膜技術と表面処理技術 (3)医療分野などに応用が期待できる微小機械……の開発が重要だ。

▼技術選択の理由=情報産業の発展につながるIC分野ではミクロンレベル、ナノレベルでの超微細加工技術を利用するようになっており、米国企業は競争力を保つために開発の努力が必要だ。超微細加工では実際の素子づくりに加え、半導体製造の開発も不可欠。米国の半導体業界は製造装置の供給構造に左右されやすく、装置技術の開発で先行する国に半導体の世界市場を制覇されかねない。

▼国際傾向=米国は超微細加工技術で力を入れているものの、日本が超微細露光技術で先行している。例えばエックス線を使って回路を刻む露光技術で日本は優位に立っており、1990年代初めにはこの技術を応用した新しい半導体素子が商品化される見通しだ。

 日本企業は半導体市場でこれまでの占有率を保持し、先端的な記憶素子などの分野でさらに差を広げよう。日本にはエックス線露光により0.3ミクロンまで加工できたという報告があり、1ミクロンレベルの加工技術は熟しているといえる。ある日本企業は256メガ(1メガは百万)ビットの記憶素子の開発を開始した。

 日本はすでに世界の半導体市場で50%以上のシェア(市場占有率)がある。半導体製造装置の世界3大メーカーはいずれも日本企業で、この3社は世界トップ10社の売上高でみると43%ものシェアを占める。この売り上げをもとに日本企業は装置技術にますます巨額の研究開発費を投じている。ばく大な設備投資が必要なうえ、技術の先進性からも、米国にとって少なくとも海外の競争相手と肩を並べていないと産業界が致命的な損失を被る可能性がある。

【システム管理技術】=製造業の企業活動全般を管理するシステム管理技術で重要なのは (1)個々のコンピューター間のデータ交換技術 (2)各生産工程のデータベース (3)デザインや在庫品質管理システム (4)多様な機器の接続技術……の4つ。

▼技術選択の理由=製造業は商品のデザインから製造、在庫管理まですべての生産活動を効率化することに力点を置いている。機械を止めている時間を減らせば生産工程を効率化できるが、その一方で間違いが許されなくなり、効率的な計画・運転が必要になる。将来、経営者は単に個々の製造装置をを結合させようとするのではなく、全体としての生産システムを開発・導入する能力がなければならない。

 日本の高度な生産技術は将来、米国を超える可能性がある。米国の経営者は自動機器・システムを全く新しい生産システムづくりと見ず、古い機械の更新と考えがちだ。この態度は知的生産システムの開発、導入を遅らせる。経営者はこうしたシステムの優位性を認識できるようにならなければいけない。

 各産業にはそれぞれ固有の課題、ニーズがあり、1つの解決方法がすべての生産システムに適用できるわけではない。システム管理技術によってこうしたニーズに対応できるような技能を身につけていけば、経営者と生産専門家は将来、さまざまな問題に対応する力がついていくだろう。

▼国際傾向=世界中でシステム管理技術の改良、開発が重視されている。エキスパート(専門家)システムや人工知能は応用の試みがあるものの、その利用はそれはどでもない。

 日本の製造業は事業を統括しやすくするため、システム管理技術の開発に率先して取り組んできた。米国も日本と同様に統括技術の開発に努力を費やしてきたが、米国のこれまでの経営概念ではこれらの技術の可能性を広く利用するまでの柔軟性がないようだ。

 米国が製造業の分野で競争力を保持するには、多くの企業が文化、経営慣行を変えなければならない。この必要性は認識され始めており、業界団体や工学・経営学部は現在、技術管理に焦点を当てた教育課程を設けている。

以上で(5)終り。(6)に続く。


(6)情報通信(上)日本がライバル

WEB雑誌『憎まれ愚痴』56号の目次