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アメリカの世界戦略/米国重要技術報告書/復活へのカルテ
(1)総論/譲れない22分野強化

政策提言他
復活へのカルテ
(1)総論/譲れない22分野強化
(2)材料(上)電子・光の遅れ深刻
(3)材料(下)民生分野では劣勢に
(4)生産技術(上)制御装置がカギ
(5)生産技術(下)柔軟な経営必要
(6)情報・通信(上)日本がライバル
(7)情報・通信(中)困難な民生転用
(8)情報・通信(下)農業などに応用
(9)バイオ・生命科学/エイズの予防も
(10)航空・陸上輸送/総合力でリード



日経産業新聞(1991.5.21~6.3)

これを読まずに日本のIT革命を論ずる勿れ

[1991.5.21(5)]

[写真説明]:湾岸戦争で米軍が使用した巡航ミサイル「トマホーク」

 ブッシュ大統領は米国が優位を維持すべきハイテク分野・産業を明確にした「国家重要技術」報告書をまとめ、議会に提出した。ホワイトハウスが任命した特別委員会の作成した報告書で、米国にとって重要性の高い22の技術をリストアップし、戦略的な強化を訴えている。

 報告書は米国の産業競争力が低下し、ハイテク製品や国家安全保障にかかわる兵器さえも完成品や主要部品を他の国に頼る例が増えて米国の産業や安全保障の基盤が脅かされているとの分析に基づき、ほかの国に譲るわけにはいかないハイテクを明確にした。米政府は報告書に沿い22技術で強化策を進めることになりそうだ。また、海外からの競争で22技術の産業基盤が浸食されるようだと、対外的なハイテク摩擦につながる可能性が強い。

 報告書は米国の大統領科学技術顧問が任命したメンバーで構成された委員会が作成し、米国の経済繁栄と国家安全保障の観点から重要とみられる22の技術を選びだして分析している。報告書は「技術自体は経済的な繁栄や国家の安全保証を保証するわけではなく、それを効率的に使うことを学びとらない限り、米国の将来に役に立たない」として、分析をもとに、ハイテク利用に向けた開発努力を説いている。

 この報告書とは別に商務省、国防総省はそれぞれ、重要分野を明らかにしているが、今回の報告書は民生、安全保障の両面から重要なハイテクを洗い出したといってよい。その意味で米国が戦略的に強化策をとる分野を明記したというこどができ、国家的な指針となる。報告書に盛り込まれた内容の要旨を連載の形で紹介する。

◇  ◇

総論

 世界的に競争が激しくなるにつれ、技術の展開は国際市場で戦略性を求められるようになってきた。成功する業界というのは最新の技術革新の覇者であるばかりでない。その派生製品をいち早く市場に投入できる必要がある。

 米国が将来の競争で成功を収めるには、産業界の市場での競争のやり方を抜本的に変えなければならない。つまり、米国の研究機関、産業界は新技術の展開にもっと重点を置く必要がある。さらに発見から開発、応用までを統率を取って進めるべきだ。役員室から工場までが一体となって製品や生産工程の改善に取り組まなければならない。重要技術を選ぶに当たって委員会としては新製品を生み出し、それを生産する工程を特に重視した。これは製造工程や製品設計、性能、品質、それにコストを総合的に考えることにつながる。

 この総合的な考え方は国防、民生の両方に応用が効く。技術的な優位というのは長い間、軍事力の基本と見られてきた。湾岸戦争は先端技術が国家安全保障を維持する上で重要であることを思い起こさせた。技術革新が急ピッチになる一方で国防予算は削減されており、米国産業界が技術進歩を手中にして高品質、高性能の兵器システムに転ずることができるようにするのは国家的な優先課題といえるだろう。

 技術はそれ自体で経済的繁栄や国家安全保障を約束するものではない。技術は革新的で高品質、価格競争力のある製品の開発に効率的に使われてこそ役立つ。米国は強力な科学的基礎を保つ一方で、その知識を逞しく開拓していかねばならない。

 重要技術として選んだ22の技術は大きく分類すると(1)材料(2)製造技術(3)情報・通信(4)生命工学(バイオ・テクノロジー)・生命科学(5)航空宇宙・陸上交通(6)エネルギー・環境……の6つに分けられる。委員会は約百の技術を検討し、22を重要として選んだ。この技術のなかには核融合など長期課題のような技術は含まれていない。

 国防総省は米国の兵器システムの質的な優位を維持するのに必要な重要技術のリストを作っている。その中の技術の多くは国防ばかりか民生にも恩恵をもたらす両用技術といえる。

 一方、商務省は1990年の春に「新技術」と題した報告書をまとめ、2000年までに新製品や製品改良につながる可能性のある12の技術を特定している。報告書は新技術の開発、実用化について米国と日欧の競争力の対比をしている。このほか、民間団体でも技術比較の報告書をまとめるところが続いている。

 今回の報告書ではこうした報告書を念頭の置いている。商務省や国防総省の報告書は大いに参考にした。3つの報告書で重要とされた技術の比較をすると、重なり合いが多いあが分かる。

 この報告書に盛り込まれた技術の多くは、ほかの重要技術の実現を左右する。例えば、ソフトウェア技術の進展はシミュレーションやモデル計算、高性能計算などの能力向上に欠かせない。電子技術や光電子技術、材料などの技術はほかの新技術の開発にかかわつている。

 委員会は、米国が技術やその応用で世界の先端を走るには科学・数学教育が重要であることも十分に認識している。

以上で(1)終り。(2)に続く。

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2007.10.25改訂