ユーゴ空爆の背景 利権と歴史と謀略と侵略とメディアの嘘と(11)

ユーゴ戦争:報道批判特集

判定:アメリカ敗れたり!

1999.5.21 WEB雑誌『憎まれ愚痴』21号掲載

1999.5.19.1:30AM発mail再録。

 自称名探偵の木村愛二です。

 いくつかの情報の総合分析の結果、この度のユーゴ航空戦争(英語でair warと呼んでいる)に関し、標記の通り、「アメリカ敗れたり!」の判定に確信を抱きましたので、判定の事実と日時を公式記録にとどめる目的で、急ぎ、mailにしたため、発信します。

 私の、この種の判定に関しては、広く評価されているものとして、湾岸戦争の「油まみれの水鳥」事件の犯人探しがあります。その際の判定には物的証拠が残っています。直後に発売された月刊誌『創』(1999.4)に、次のように断言する記事を寄稿したのです。

「最初に、この事件報道に関する私の結論を述べておこう。アメリカは、イラクの石油タンカーと原油貯蔵タンクなどを1月22日前後に爆撃し、大量の油の海への『流出』を招いた。3日後の25日になってから、イラクの『放出作戦』だとスリカエ、デマ宣伝に居直ったのである」(拙著『湾岸報道に偽りあり』p.28に収録)

 もう1つの著名な事件にかんする判定については、残念ながら、物的証拠が残っていません。ペルーの日本大使館ゲリラ襲撃事件の際、政府軍が街中で行進曲を終日流した日に、地元の武蔵野市の市民運動グループの会合の2次会で、私は、「トンネルを掘っている」という判定をしゃべったのですが、その時には、ペルーには5回も行ったという環境工学のプロですらが、「木村さん、映画の見過ぎですよ」などと笑いました。しかし、これも見事、的中していました。地元では「どうじゃ」と威張ってますが、あっという間に真相が判明して、いわゆる「同時代」の文字記録を残すことができませんでした。

 その後、インターネットを始めてから、ああいう時にはインターネットで記録を残して置けば「予言者」としての評判が高くなったのに、と、悔やみに悔やんだものでした。それがmailの最後の「署名」の「自称名探偵」の所以でもあります。そこで、今回は、急ぎ、証拠mailを発信する次第です。

 ただし、「予言」とはいっても、それは言葉の綾に過ぎないのでして、正確な情報収集と分析の結果なのです。「油まみれの水鳥」の件は、拙著をお読み下さい。ペルーのトンネルの件では、まず最初に、南米のゲリラ事件のこれまでの傾向と、ペルーの藤森大統領の性格、マフィア的軍部に関する予備知識などから、必ず武力を用いると予測していました。つまり、突入作戦です。ゲリラの方は、隣家から塀を破って突入しました。つまり、横からです。残る突入方法は、上下しかありません。下からならば、トンネルを掘る以外の方法はありません。これは別に、「トロイの木馬」のような特殊な戦法ではありません。銀行強盗もやる単純な侵入経路です。そこへ「行進曲」ですから、あっ、掘削機の音を消しているなと、ピンときました。こんなに簡単な推理はないのです。

 ユーゴ航空戦争に関しては、すでに米軍放送でも、表現の仕方には色々ありますが、実質的には、セルビア政府軍がKLA(コソボ解放軍)の掃討作戦を終了したと認めています。空爆の結果についても、まだセルビアの戦闘能力の20%しか破壊できていないと認めています。軍事評論家は、砂漠のイラクよりも山地の多いユーゴの方が、陣地、武器、兵員を隠して置くのに有利だと認めています。

『ニューズウィーク』の日本語版には、セルビア軍の平均年齢が35歳で老化しているし、ナチスドイツと戦った山地ゲリラの伝統は消えているとか、アメリカ側に都合の良い「希望的観測」が記されていました。しかし、寄せ集めの未熟な若者の都市ゲリラよりは熟練度が高く、地上戦はセルビア軍に有利に展開したと判定できます。

 さて、すでに「地上戦」と記しましたが、ここが重要なのです。いわゆる空爆、航空爆撃、または航空戦争は、アルバニア系ゲリラのKLAによる「地上戦」との共同作戦だったのだと判定します。

 実は、わが判定の最後の決定的情報は、1999.5.18.早朝に聞いた米軍放送の中の現地ルポの中の発言なのです。現地のセルビア人が、かなりドスのきいた声で、「彼らは5日ぐらい爆撃すれば、我々が根を上げると思っていたようだが、我々は最後まで戦う」という主旨の発言をしていました。5日(five days)と言ったのですが、実は、それ以前に私は、イラクへの威嚇爆撃などの実例から判断して、おそらく1週間の攻撃予定だったのではなかろうかと推測していたのです。アメリカで追加予算を請求したことも、その推測の根拠の1つです。3月24日開始、現在、5月19日、もうすぐ2ヵ月になります。つまり、予定よりも相当に長引いているという判定です。

 1週間の爆撃の間に、地上では、NATO軍ではないが、NATO軍が後押しをするKLAがアルバニア系住民の協力を得て、コソボ州を実質的に制圧するというのが、ヴェトナム戦争の「輝ける嘘」と同様のアメリカ軍の将軍の勲章欲しさの希望的観測だったのではないか、というのが、私の推理です。

 作戦編。孫子曰、[中略]故兵聞拙速、未賭巧之久也[後略]。(孫子は言う。戦争には下手でも素早く勝つ例はあるが、上手に長引かせて得をする例はまだない)。

 アパッチも、現地で2機墜落したとの報道だけで、戦闘には参加していません。日本では単に、「アパッチ・ヘリコプター」と記していますが、米軍放送では、時折、凄んだ声でgunship(砲艦)と言います。地上の戦闘を上空から支援するのが主任務です。ところが、支援すべき地上のKLAが敗退してしまったのですから、仕事がなくなって格好が付かず、今や、難民の輸送に当たっているようです。

 もともと、アメリカ国内でも、「空爆だけでは戦争は終わらない」という当然の意見が出ていました。だから、今度はKLAに望みを託したのだと判定しますが、これも裏目にでたのでしょう。最早、残る手段が無いどころか、中国大使館の誤爆まで仕出かして、ABCのニュース解説では、ポール・ハーヴェイが、現在、北京の映画館ではハリウッド映画の上映は中止され、朝鮮戦争当時の中国が参戦してアメリカ軍を破った際の古い映画がリヴァイバル上映されていると、声を落とした嘆きのニュアンスで語っています。

 同じく、アメリカのニュース解説では、最初から「モニカ戦争」(monika's war)と呼ばれていた戦争は、ついに、アメリカの面目丸潰れの局面を迎えていると判定します。

 以上。


(12)アルバニア系10万人の不明が殺害?!
ユーゴ空爆の背景
ユーゴ戦争:報道批判特集
WEB雑誌『憎まれ愚痴』21号の目次に戻る