編集長の辛口時評 2006年2月 から分離

ホロコースト認めて禁固刑逃れを狙ったアービングの失敗は醜態

2006.02.21(2019.8.22分離)

http://www.asyura2.com/0505/holocaust2/msg/717.html
ホロコースト認めて禁固刑逃れを狙ったアービングの失敗は醜態

 デビッド・アービング被告(67)は、オーストリアの首都ウィーンの裁判所で、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を否定したとして、禁固3年の有罪判決を言い渡された。

 旧知のフランスの見直し論者、フォーリソンは、イギリスの作家、デビッド・アービングについて、「資料を注意深く読んでいないので、論敵に攻撃されては撤回することを繰り返し、簡単に負け続けている」と批判し、見直し論者でないといっている。デビッド・アービングは、シオニストにとって非常に好都合な「見せしめ」の裏切り者にされたのである。

 以下は、本日の日経夕刊の印刷物にも掲載されていた短信である。


http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060221AT2M2100G21022006.html
オーストリア裁判所、ホロコースト否定の英歴史家に禁固刑

ウィーン=共同】オーストリアの首都ウィーンの裁判所は20日、英国の歴史家デビッド・アービング被告(67)に対し、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を否定したとして、禁固3年の有罪判決を言い渡した。オーストリアやドイツでは、ホロコースト否定は法律で禁じられている。

 同国司法当局は1989年、アービング被告がオーストリア国内での講演などで「アウシュビッツにガス室は存在しなかった」などと述べたとして、逮捕状を出した。アービング被告は昨年11月に講演のため同国を訪れた際に逮捕された。

 同被告は法廷で罪状を認め、過去のホロコースト否定は誤りだったとして「後悔している」と表明。判決に対しては「ショックだ」と述べ、控訴する意向を示した。 (10:54)


 以下は、非常に慎重な田中宇の通信からのデビッド・アービング関連部分の抜粋である。


http://tanakanews.com/f1220holocaust.htm
ホロコーストをめぐる戦い
2005年12月20日  田中 宇
[中略]
 一般には「確定した歴 的事実」と考えられているホロコーストについて「別の見方」を発表した歴史学者らが、ホロコーストを否定したことを理由に、逮捕投獄されたり、強制送還されたりする事件が相次いでいる。
 [中略]
 オーストリアで逮捕されたのは、イギリス人の歴史学者デビッド・アービングで、1989年にオーストリアで行った講演でホロコーストを否定する発言をしたとして、11月14日に逮捕された。アービングは、ナチス時代のドイツの歴史を詳細に研究した人で、自らの研究の結果として「ヒットラーがユダヤ人の絶滅を命じたという定説は間違いである」などと主張していた。(関連記事)

 彼は、オーストリアに行ったら逮捕されるかもしれないと知っていたはずだが、どうしたことか右派学生組織の要請に応えるかたちでオーストリアを訪問し、逮捕された。逮捕後、弁護士に「ホロコーストはなかったという自分の以前の説は間違っていた」と述べたと報じられている。(関連記事)

(著名なリビジョニストであるロベール・フォーリソンは、2000年に「アービングは資料を注意深く読んでいないので、論敵に攻撃されては撤回することを繰り返し、簡単に負け続けている。彼は、リビジョニストの代弁者のように言われているが、それは間違いだ」と書いている)
 [後略]


 以下は、拙著『アウシュヴィッツの争点』のデイヴィッド・アーヴィング関連部分の抜粋である。


http://www.jca.apc.org/~altmedka/
憎まれ愚痴
http://www.jca.apc.org/~altmedka/hanbai.html
木村書店
http://www.jca.apc.org/~altmedka/aus.html
『アウシュヴィッツの争点』

http://www.jca.apc.org/~altmedka/aus-57.html
第7章:はたして「ナチズム擁護派」か
NHK放映『ユダヤ人虐殺を否定する人々』をめぐって

 [中略]
 画面は政治集会の会場シーンからはじまる。最初はストップモーションで、右下に「海外ドキュメンタリー」という決まり文字の番組名がスーパーされている。絵が動きはじめ、カメラが引くと、会場には何百人もの人々がひしめいている。若い男女がおおくて、雰囲気はあかるい。パーン、パーンと、調子をそろえた拍手がなりひびく。色とりどりの旗が左右にはためく。旗の波の下に「制作・DR(デンマーク 1992)」の白抜きゴシック文字がスーパーされる。

 調子をそろえた拍手は、集会の講師にたいする歓迎の気持ちを表現している。熱狂的な拍手でむかえる群衆の間から、典型的にいかつい四角の顔をした講師が、むずかしい表情ではいってくる。いかにもネオナチの理論的指導者風だが、すでに紹介ずみの(わたしの考えでは「軽率な」)イギリスの作家、デイヴィッド・アーヴィングである。

 アーヴィングの顔のうえに、丸い白地にえがいた大型の黒のカギ十字(旧ナチ党の党章)がかさなり、ディゾルヴ(溶明、溶暗)で画面がいれかわる。赤い生地にはたくさんの小型カギ十字がうすくあしらわれている。生地は幕か壁の模様のようである。さらにそのうえに「ユダヤ人虐殺を否定する人々」の筆文字(つまりNHKが日本版用につくった文字)が回転してきてかぶさる。下には副題として「~ナチズム擁護派の台頭~」という白抜きゴシック文字がはいる。

 ここまではまったくセリフがない。だが明確に、「ユダヤ人虐殺を否定する人々」と「ネオナチ」、「旧ナチ党」などの同一性を強調する画面構成である。視聴者は最初に、そういう印象、先入観念をあたえられてから、この番組の中身を見ることになる。
 [後略]


 以下も同じく、拙著『アウシュヴィッツの争点』の関連部分の抜粋である。


http://www.jca.apc.org/~altmedka/aus-60.html

 [中略]
(2019.8.22追記:以下の引用は、“NHK放映『ユダヤ人虐殺を否定する人々』”の説明部分から)

「アーヴィングは一回の講演につき、一万ドル以上の支払いをIHRから受けとっている。だが、IHRの巨額の運営資金がどのように集まるかはさだかではない。謎の鍵をにぎるのはIHRの創設者、ウィリス・カルトである。カルトは、アメリカの極右勢力の黒幕といわれている」

 [後略]


 これは、上記のNHK放映『ユダヤ人虐殺を否定する人々』の台詞であるから、逆宣伝の問題点はあるが、アーヴィングが、講演料を得ていることは確かであろう。今回の裁判も、オーストリアの刑法に違反する危険を冒して、講演をしたことが原因なのだから、やはり、それ相応の講演料を得ていたのであろう。

 そういう経過を考慮すると、罰金刑を受けても、それなりの講演料、カンパが得られれば、償えると計算して、法廷で罪状を認め、過去のホロコースト否定は誤りだったとして「後悔している」と表明し、情状酌量を狙った可能性が高い。

 フランスのロジェ・ガロディは、同じ罪で罰金刑、アラブ諸国から罰金を上回るカンパを受けたが、アーヴィングは失敗して、醜態を晒しているのである。