『電波メディアの神話』(6-7)

第二部 「多元化」メディアを支配する巨大企業

電網木村書店 Web無料公開 2005.4.7

第五章 「打って返し」をくう「公平原則」信奉者 7

資産売却やレイオフやり放題のアメリカ式残酷物語

 新経営者たちのもとで展開された「ザ・ネットワーク残酷物語」に関しても、現地取材をしたいのはやまやまだが、急場の議論には間にあわない。とりあえず『巨大メディアの攻防』からめぼしい数字をひろいだしてみる。

 重役クラスの動きを中心とする小説風のニュージャーナリズム手法だから、経費や人員数は系統的でない。「NBCが全米放送技術者労連のストライキに四苦八苦していた」事情も、「新しい人事部門のボス」起用の背景としてえがかれている。一九八七年十月、ストライキは五ヵ月目を迎えて」いた。NBCはABCやCBSの先例にならい、パートタイマーやロボット・カメラの導入、賃下げ、就業規則「緩和」の契約をのぞむが、NBCの社員二八〇〇名が加盟する全米放送技術者労連は不満だった。「NBCが実働部隊の三分の一に当たる労働者に譲歩を求めたことは、労連を憤らせた」。十月末のストライキ終結時点で「新しい人事部門のボス」が「労連の所属する社員の約一二%を解雇し、二五〇〇万ドルを節減したいと語った」とあり、どうやら、三分の一のレイオフという「譲歩」に反対して、長期ストライキにはいったようだ。

 どのネットワークでも、ニュウズ部門が経費削減の対象になった。一九八七年の冬に、「ABCニュースはスタッフを一四五〇人から一〇五〇人に削った。八七年三月に大きな騒ぎになったCBSニュースの削減より、このスタッフの削減数の方が多かった」。「NBCの社員がもっとも衝撃を受けた(中略)ラジオネットワークの売却」のせいで、合併以前からNBCニューズ部門社長だったラリー・グロスマンは「ひどく落ち込み」、「GEは投機資本会社だ」などとかたる。


(8)ケーブルテレヴィとCNNの台頭によるはさみうち