一坪反戦通信 Vol.81 一坪反戦通信 86(1997.8.1)

軍用地を生活と生産の場に!
No. 86
1997年8月1日
東京都千代田区三崎町
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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック


◆本号の記事 ◆


 浅井基文氏(明沿学院大学教授)の話を聞いた。特措法(もちろん米軍用地についての)改正について、同氏のもとで研究しているアメリカからの留学生は「沖縄がアメリカの一州であったら、このような法律の改正は議会を通過しないだろう」と語ったという。市民の財産権を侵害することを、アメリカの市民は許さないという意味である。

 中央マスコミは沖縄の事態を無視しているが、収用委員会による公開審理は8月12日に第六回を迎え、8月下旬には収用委員と反戦地主の基地内立ち入りも予定されている。普天間飛行場の代替施設である海上ヘリポート基地の建設反対運動も盛り上がりを見せ、県知事や名護市長のあやふやな態度を糺(ただ)す市民投票のための署名集めが、8月7日を期限として進行中である。

 一方、政府は「沖縄問題」は片づいたとして、新ガイドライン(日米防衛協力指針)を謳いあげ、日米安保条約の実質的強化に走り出し、日米両軍一体となっての戦争準備体制の構築が進められている。公海上での外国船に対する臨検、港湾・空港の軍事利用等、日常生活が太平洋戦争前のように軍事規制されようとしている。しかも国会は政府の暴走をチェックする能力を失いつつある。

 民衆の力を発揮するのはこれからだ、暑さを吹き飛ばして、もう一踏ん張り頑張ろう。(U)


第5回公開審理

聞け! この声 この叫び

 7月3日に開催された第五回公開審理では、伊江島の反戦地主ら九人が発言、涙ながらに土地を米軍に強制接収されたいきさつについて訴えた。情け容赦なく住民を叩きだし、家を焼き払って軍事基地にした事実の訴えが、公開審理の場では初めて実現したことになる。最後に阿波根昌鴻(あわごん しょうこう)さんのメッセージが映画で写し出された(高岩仁さん撮影)。

 特措法改悪(4月17日成立)によって、審理中で裁決が出なくても暫定使用できるようになったが、収用委員会は強制使用の対象になっている施設それぞれについて地主の意見を聞くという実質審理を続行。従来の公開審理で起業者側に肩をもったり地主側の意見を述べさせなかったり、だったのとは大違い。去る5月9日の一部却下裁決につづいて、地権者の主張の内容いかんで残る使用申請についても却下裁決が出る可能性も十分だ。

 なお収用委員会は来たる8月下旬、土地収用法に基づいて12施設の基地内立ち入りを行う予定と伝えられる。




公開審理の報告会に150人が参加

知花昌一さんが唄う

 第五回公開審理の報告会は去る7月10日夜、関東ブロックが主催して全水道会館で開かれ、会員など150人が参加した。ゲストに沖縄から知花昌一さんが参加、聞いていて涙をこらえられなかった公開審理の様子の他、象のオリの明け渡し要求裁判について報告。さらに前回公開審理では実現しなかった沖縄口説演奏。

 公開審理の報告では、上原成信さんが克明に平安山良有さんら伊江島の反戦地主の意見表明を報告。公開審理を録音したテープの一部再生やスライドでの説明もあった。

 基地依存的になっているかに伝えられる伊江島にも、実は多数の反戦地主が存在しており、伊江村総所得のうち基地関連収入は10%に満たない――と報告された。

 次回の第六回公開審理は8月12日午後2時から、豊見城村立中央公民館で行われる。関東ブロックでは8月29日に報告会を行う予定(午後6時30分から、中野勤労福祉会館 3階会議室)。ヘリポート基地建設阻止の報告もあります。


普天間の移設先・辺野古ではいま

(第2信)  

 もし海上ヘリポートができたら、地元の辺野古は陸のキャンプ・シュワプと海上基地にはさまれて、まるで基地の中に生活するようなものと言う人がいる。本当にそうだと思う。地元住民にとって、海は全てのものを含んで命であり、命を守るためにこそ海を守ろうと思う。

監視小屋の完成を祝う

 「命を守る会」がテントを張り事前調査の監視活動を始めて二ケ月余りが過ぎた。メンバーは今もローテーションを組み、午前七時から午後七時まで待機している。この間に訪れた人はのべ二千人に近い。カンパや差し入れも多く、支援の輪は確実に広がっている。

 7月に入りテント小屋はプレハプ事務所に生まれ変わった。資料の保管や台風に備えて、そして何よりも長くなるだろう闘いを見すえて。約百坪の土地は、元ひめゆり学徒の生き残りでメンバーの宮城清子さん提供による。7月末には県によるボーリング調査の許可が出されようとしている。調査開始と同時に船による抗議行動を繰り広げる方針だ。

名護の人たちだけにまかせてはいけない

 宜野湾市と名護市、普天間基地移設候補地の当事者が一緒に考える勉強会をもった。6月29日のことだ。仕掛け人は「県民投票ってなんだったばー」の高橋宏明さん。

 普天間高校の与儀さんは「こちらでは移設反対運動が起こらないけれど、これでいいのだろうか?」と疑問をもつ。新城さんも「美しい辺野吉の海が害を与える基地になるのはいや。自分たちも運動に加わることが大切」と提案した。

 名護からは許田(きょだ)さんが「やるべきことをやらない政治家がいるから、自分たちがやらなければならない」と移設反対運動真只中から発言。隣の大宣味村に住む我喜屋(がきや)さんは「名護市の外からもどんどん支えていくべき」とした。期せずして中・南部からも「海上基地を許すな〜島ぐるみネットワーク」が声をあげるなど小さなシマから発信された大きな問題が少しづつ人々をとらえているようだ。


署名活動がスタート

市民投票条例制定に向けて

 “住民の命にかかわる大事な問題は住民自身が決めよう”を合い言葉に、へリポート建設の賛否を問う市民投票実現をめざして、熱い(すでに十分暑い!)闘いが始まっている。

 7月8日、市は推進協議会に、制定請求代表者証明書を交付し、同時に告示した。有権者数は3万8000人で、制定請求には760人(50分1)が必要とされる。

法定一ケ月の勝負

 8月8日までの一ケ月間、1万3000名の署名を目標に推進協は動き出した。市内でビラをまき、宣伝カ−を走らせて協力を呼びかけた。署名簿の作成に追われながらも、受任者たちは“七つ道具”(名簿・地図・朱肉等)を手にカンカン照りの街へ出ていく。名護市全五十五区に人が配置された。地元辺野吉を含む東梅岸では再び反対の想いを込めた署名が集められるだろう。

 13日現在で1700名集約と発表された。順次報告予定という。受任者は現在600名。6月末には学習会を開いて備えた。顔を合わせられれぱ九割方署名をしてくれるという。だから留守がちなアパートや団地にどれだけ根気強く足を運ぶか、一人一人の受任者にかかっている。

県内移設反対の原点に戻ろう

 推進協の運動が現実味を帯びてきた6月末、比嘉市長は「住民投票はやらないで、市民融和の中に前進することを願っている」と言い出した。なぜ住民投票までやるのか!市長と市議会が二度の決議を軽んじ、地元住民の反対を無視してきたからであり、知事も県議会も県内移設反対を明確にしなくなったからである。

 今、日本政府が沖縄に難題を押しつけているやり方を、県が市に、市が地元にしているのではないだろうか。しかも戦後初めて沖縄が新たな基地を承認するかどうかが問われている。事は重大である。

(文責・野口)



調査=建設ではない?

 この言葉を錦の御旗にいま、市と県は二人三脚でヘリポート建設への道を歩もうとしている。それに助けられて政府は順調にことを運んでいるかに見える。

 市長は“建設を地元の頭越しには着手しない”という橋本首相の言葉を担保に言い逃れをし、最後は知事の判断に委ねるとして、後は北部の振興に全力を注ぎたいと逃げを決めこんでいる。頼りにされる県は“一義的には国と市の問題”から“市の意向を尊重して容認”ヘと積極的(?)に踏み込んだかと思いきや、もうお手上げ状態と言ってみたりする。

 一人「静観」をきめこむ政府は、今後の手順として米軍が運用に必要な要件を夏までに提示し、10月までに三工法(杭式桟橋・ポンツーン・セミサブ)の指定業者が設計図を作成、11月には工法選定を予定している。

 唯一、キャンプ・シュワブ沖の調査が進められる中で、“調査=建設ではない”という言葉ほど空々しく聞こえるものはない。政府の思惑は梶山官房長官が市長に伝えた間接的な言い回しの中によく表れている。「全体あげて市の要請(国立高等専門学校の誘致)に応えたい。普天間を返還し、国際都市形成構想の中核とすることにすべての力をそそぎたい。」

ボーリング調査を凍結すべき!

 那覇防衛施設局がボーリング調査のため、県に申請していた公有水面使用許可が、7月初めの予定からかなり遅れている。

 7月14日には「市民の会」が知事に公開質問状で、16日には「推進協」が県河川課にそれぞれ調査の凍結を申し入れた。“審査は行政事務的に淡々と進められている”とする県に抗議をしたところ、美里英明・河川課長は県による現場調査を18日に行うと言明した。

 果たして1・2時間の調査で許可するかどうか判断できるのか?アリバイづくりだとする声しきり。結果をぜひ公表してほしいものだ。


  

ヘリポートはいらない!

関東ブロックの呼びかけで首都圏初の集会

 米軍基地の整理・縮小をSACO(日米特別行動委員会)の最終報告で一段落としたい政府。面積で20%も返還するのだから最大の譲歩とうそぶく米軍。その流れに沿うようにマスコミ報道もさっぱりの今日この頃。

 そんな一件落着ムードを吹き飛ばし、現在進行形の新たな基地建設に待ったをかけているのが、山原(ヤンバル)・名護の市民たちである。

 梅雨の合間の7月12日、「名護市民の会」から代表世話人の許田清香(きょだ きよか)さん、同世話人の安次富(あしとみ)浩さんを迎え、200人余りの仲間が南部労政会館(品川区)に集まった。

 あいさつにたった上原成信さん(関東ブロック)は「いま、多くの沖縄県民の意思に反して普天間返還のツケが名護市東海岸に回されようとしている。『本土』にいる私たちにできることは何か、一緒に考えていきたい」と呼びかけた。

 ところでキャンプ・シュワブってどこ?辺野古は、どんなところ?から話は始まる。現地を写したフィルムや地図を0HPで拡大しながらの解説があった。

 次に安次富さんから1)一年前にキャンプ・シュワプ案が浮上してから最終決定されたSACO報告の中身、2)名護ぐるみの二度の反対決議、3)4月に発足したゆんたく(「おしゃべり」の意)フォーラム > 名護市民の会 > 市民投票推連協への結集――について経過を話していただいた。

 ホールの外では「市民の会」会報『ひろば』と山原藍(やんばるあい)染めのバンダナを販売。

 そして清香さんが語る。海を見たくてシマ(沖縄島)に戻ってきた自分をみつめる中で、海に生かされていることに気づいたこと、そして久志の海を抱く菩薩を描くまでの想いを訥々と。「国隆郡市形成構想にかける大田知事の頭の中に(沖縄の)北部は存在していないのでは?だからこそヘリポート建設は絶対に認められない!限止するまでトコトンやります」と決意を述べる彼女の言葉は、この日の集会をしめくくって余りあるものとなった。

休憩時間にパネルを使って説明する安次富さん


 名護市の市民投票推進協議会が出している協力要請書。現地では市民投票に向けて必死の運動を展開中だ。なお、この推進協の構成団体・「ヘリポートいらない名護市民の会」では名護市在住以外の「賛同会員」を募集している。年間会費は2000円。申し込み先は関東ブロックまたは現地:

 郵便振替01790−8−62747
 リポートいらない名護市民の会 宮城康博

 905 沖縄県名護市名護1591
  電話:0980-54-3634 ファックス:0980-51-1170

 ホームページ:http://www.jinbun.co.jp/heliport/index.html


1997年7月   

 各位

ヘリポート基地建設の是非を問う
名護市民投票推進協議会(印) 
代表 宮城康博 
〒905 名護市大東1丁目19−4 
電話:0980(53)6992  

市民投票成功に向けて
(協力要請)

拝啓 盛夏の候、ますますご隆盛のことと慶び申し上げます。当推進協結成当初よりご指導ご鞭撻をいただき誠に感謝にたえません。

 すでにご承知の通り、普天間基地返還に伴う代替ヘリポート基地の建設をめぐって、去る4月18日に名護市長による突然の「事前調査受け入れ」がなされ、国による調査が強行されています。これはいったいどういうことなのでしょうか。まったく理解に苦しみます。

 名護市では、市長を大会実行委員長として2度にわたる市民大会(96年7月10日、及び11月29日)を開催して、「代替ヘリポート建設断固反対」を確認してまいりました。また名護市議会においても、2度にわたる全会一致での反対決議(96年6月28日、同11月18日)を行っております。

 このように、ヘリポート基地建設反対は、民主的ルールに則って示した名護市民の総意であります。普天間基地は無条件で返還されるべきであり、県内移設はどこであれ反対であることは自明のことと思います。ここに至り、私たち名護市民は、市民自らが政策決定の主人公だという認識に立ち、「名護市、名護市民にとってヘリポート基地は本当に必要か否か」を直接市民自らが決定する方法として、「市民投票」を提起しました。

 去る7月8日、条例制定請求代表者の告示がなされ、市民投票への第l歩が本格的にスタートいたしました。当面8月8日までの1か月間、条例制定要求のための法定署名獲得活動に全力をあげています。

 しかしながら、この市民投票の試みは、広報や手続きの面などで行政も積極的にバックアップした昨年の県民投票の時と違い、市民のボランティアが主体で、ビラや立て看板などもほとんど手作りで行っています。市民投票実現まで1干万円程の経費を見積もっていますが、今、推進協構成団体の負担金等でなんとかやりくりをしながら活動を展開しているのが現状です。

 つきましては、市民投票の意義をご理解され、市民投票の成功をかちとるために、物心両面にわたる全面的なご支援を賜りたくここに要請する次第です。よろしくご高配のはどお願い申し上げます。

敬具  


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