『NHK腐蝕研究』(5-5)

《あなたのNHK》の腐蝕体質を多角的に研究!
《受信料》強奪のまやかしの論理を斬る!

電網木村書店 Web無料公開 2004.1.5

第五章NHK《宮廷》の華麗なる陰謀を撃つ 5

ポスト・刑事被告人”に多士済々の腕まくり

 放送衛星と対をなすのが通信衛星で、こちらの御客様は、KDDとNTT(目本電信電話公社)。そこでも、ここ二、三年、利権がらみの大騒動が続いている。小佐野賢治が電々公社経営委員だったこともある。当然、ははーん、ときて欲しい。

 こういう大規模な“近代的”事業計画があると、国民の“選良”たちは、“勉強”しなければならない。国会での“質問”にそなえて、関係者の話を“聞く”のだ。すでに一九七〇年には、自民党政調会通信部会のなかにも、電波・放送小委員会が発足していた。当初のメンバーには、KDD事件で名をあげた加藤六月がいる。第一章の上田哲“闇将軍”質問で登場したNHK・OBの水野清もいる。そして、かのヤクザ議員か議員ヤクザかといわれた浜田幸一兄貴。……それだけでは“心配”な向きもあってか、自民党内部の「科学技術特別委員会」のなかに「宇宙開発小委員会」ができたのが、一九七一年。そして、いまも衆院逓信委の筆頭格で頑張る秋田大助先生(福田派)などは「科学技術特別委員会と通信部会と両方に属して」(『放送文化』’74・3)の大奪闘だったとか。ともかく、こういうお歴々が、色々と“勉強”したらしいのだ。

 “勉強”の成果は見事なもの。国会では、時折のなれ合い質問のみ。NHKの予算案には、わずかに「なお、放送衛星についても必要な設備の整備を進める」とあるが、それは「建設計画」の項の末尾。ボンと使ってしまってから、コミコミで毎年百億円前後の減価償却を落とせる仕掛けになっている。その他にも研究開発とか、通信・放送衛星機構とやらへの出資とか、億単位の金が乱れ飛ぶ。それなのに、国会というのは野党もいながら、おうようなところ。一般の会社なら、もっと詳しいバランスシートと明細表が「一株」株主様にも配られる時代に、メモ程度の「事業収支」と「資本収支」だけでフリーパス。あとは会計検査院まかせの事後報告。半可通のいや味を我慢するだけが、NHK会長の職務らしい。

 加えて、逓信委員会には大量の傍聴動員、放送大学をNHKにやらせろとか、野党議員にも圧力をかけるという噂の日放労が、放送衛星のホの字もいわないことは確か。それが“赤字”、ひいては受信料値上げの主要な原因となっていることなど、労使ともに黙して語らない。

 その上に、国際法学者で日本を代表して会議に出席している山本草之は、「外国にもれた番組の内容がどうであれ、国際的には何ら非難されないという立場」(『ニューメディアの時代』)を表明している。つまり、周辺諸国との思想的・文化的問題をはらむのに、日放労やマスコミ・文化共闘が取り上げないのは、片手落ちの感があるのだ。

 もうひとつおかしいのは、その受信料値上げあればこそ、わずかながら洩れ伝えられる御予算の矛盾である。放送衛星関係では、何やかや合せて三年間で六百五十億円かかるという。その第一の目的は、難視聴解消というのだが、同じ目的の御予算はもう一項目ある。地上施設でも、やはり三年間に八百十億円かけるというのだ。足し算をすると、この二重投資の空陸両面作戦による「難視聴地帯掃討」費用は千四百六十億円。国家予算等のからみもあるが、これだけで、“値上げしなければ三年間で千五百九十一億円の大赤字”と騒ぎまくった金額の、ほとんどを使う計算になる。約五十万世帯とかの「難視聴地帯」の住民は、その両面作戦の救出目標なのか、はたまた人質なのか。辺地の票田を固める議員様ともども、思わぬ恩恵の押しつけに、さぞや戸惑っているのではなかろうか。少数派についての考え方は、すでに受信料問題で先刻承知のこと。普段はハナ水もひっかけないのが、NHKの流儀なのだから、目的が別にあるのは明白だ。

 さらに重大なのは、NHK予算ではないが、国民経済的視点からみると、この他にも有線テレビという三重投資が進んでいることだ。そして、投資の重複という問題もさることながら、映像・音声メディアの民主的利用という面からも、大いに疑わしい動きがある。

 郵政省発表の数字によると、昨一九八○年三月末現在で、すでに日本のテレビ視聴世帯の一割近くが、有線で受像している。マスターアンテナで受けてからケーブルで配る方式だが、いわゆる共同視聴施設は二万五千三百三十四、サービスを受けているのが二百七十一万八千五百三十一世帯だという。しかも、対前年増加率は、施設が十三・三%、世帯が十七・五%と、かのGNPの伸び悩みをしり目に、ぐんぐん上昇傾向。そのうち自主放送施設は、まだ六十三、活動中は五十余とあるが、これも先行き有望株である。問題は、有線テレビ法云々で、実質的に妨害されていること。つまり、地方の“革新”自治体などにチャンネル権(送信のですぞ!)を握らせたくない向きの策動だ。だが、それとホシをつなげた《ニューメディア》の話は、深入りすると大変なので、問題点を指摘するだけにとどめたい。

 また一方には、そういう新局面を控えながら、逆の煙幕作戦を張るNHKの《高等戦術》とやらの数々がある。


(5-6)NHK幹部の“高等戦術”