編集長の辛口時評 2006年5月 から分離

ユダヤ人かユダヤ教徒かイスラエルをユダヤ国家と規定する憲法草案に潜む民族の歴史的悲劇

➡ 偽ユダヤ人カザール(Khazar・ハザール)問題

2006.5.14(2019.5.31分離)

http://www.asyura2.com/0505/holocaust2/msg/927.html
辛口時評060514 ユダヤ人かユダヤ教徒かイスラエルをユダヤ国家と規定する憲法草案に潜む民族の歴史的悲劇

 阿修羅掲示板の中でも日本の国内の問題を中心とする「政治・選挙・NHK」の掲示板に、「日本国憲法との関連」で、「成文憲法がなかったイスラエル」の「憲法草案を読む」という主旨の投稿が出現した

 イスラエルとユダヤ人に関する事態なので、一言しないわけにはいかない。

 この投稿の文中の「ユダヤ国家」の原文は、Jewish stateである。

 英和辞典の名詞のJewの普通の訳語は、ユダヤ人、ヘブライ人であるが、形容詞のJewishには、ユダヤ人の、ユダヤ教徒の、ユダヤ教のなどの訳語がある。

 この言葉の規定自体が、実は、重大な問題をはらむのである。今回の辛口時評は、前の2回の「カザール(ハザル)問題」の継続である。

 以下は、この阿修羅「政治・選挙・NHK」の掲示板の投稿の抜粋である。


【成文憲法がなかったイスラエル:日本国憲法との関連】憲法草案を読む【Blog「壊れる前に…」より】
http://www.asyura2.com/0601/senkyo21/msg/843.html
投稿者 一市民 日時 2006 年 5 月 12 日 12:31:14

 [中略]
 エルサレム・ポスト紙の記事 "Democracy Institute offers constitution" によると、Israel Democracy Institute という団体(司法省から委託を受けて研究などを行なうこともあるようです)が Meir Shamgar 元最高裁長官らの執筆による憲法草案を発表しました(現在のところ、IDI のサイトには報道発表はありますが、英文の草案はまだありません)。
 この憲法草案の主な点を記事に沿って拾い上げてみます。
1. イスラエルをユダヤ国家であると規定する
 [後略]


 以下、上記の「エルサレム・ポスト紙の記事」の原文の冒頭部分から抜粋する。


http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1145961305652&pagename=JPost%2FJPArticle%2FShowFull
May. 8, 2006 20:24|Updated May. 9, 2006 4:48
Democracy Institute offers constitution
By RAFAEL D. FRANKEL

 [中略]
The "Constitution by Consensus," as its authors call it, also enumerates personal and human rights granted to Israelis and specifically categorizes Israel as a Jewish state.
 [後略]


 以上のごとく、「特にイスラエルをJewish stateと規定する」(specifically categorizes Israel as a Jewish state)となっている。

 英和辞典の名詞のJewの普通の訳語は、ユダヤ人、ヘブライ人であるが、旧約聖書には「イスラエルびと」もあり、国名にはイスラエルとユダがある。

 言語としてはヘブライ語を使ったことになっており、これが現在の「偽」イスラエルに復活している。歴史的なユダヤ人、ヘブライ人、イスラエル人の三つだけでも、ややこしいのであるが、これに加えて、ユダヤ教徒として、いわゆるユダヤ人の9割の元・カザール(ハザル)人が控えているから、ややこしいこと、この上もない。

 シオニストの中心は、本来のユダヤ人ではなくて、ユダヤ教に改宗したカザール(ハザル)人なのである。いわゆるユダヤ人問題は、実は、カザール(ハザル)問題なのである。

 カザール(ハザル)人はユダヤ教に改宗したから、ユダヤ教徒ではあるが、「ヘブライ人」とも呼ばれる旧約聖書の民の血統ではないのである。

 私は、血統による「アイデンティティ」(同一であること、一致、同一性、本質、独自性、主体性)の認識、自覚が、カザール(ハザル)人の子孫のアシュケナジー・ユダヤ人(教徒)の場合には、狂い、歪んでいると判断する。「アイデンティティ」の喪失は民族の歴史的な悲劇である。その喪失に起因する人格的な狂い、歪みが、「偽」イスラエルの狂気、狂信の根源なのである。

「ユダヤ教徒」であることに「アイデンティティ」を求めるカザール(ハザル)のアシュケナジムは、「セハルディムと称され、西ヨーロッパ社会に同化しつつあったユダヤ教徒からも蔑視され差別された。(平凡社『世界大百科事典』「ユダヤ人」「東方ユダヤ人」)

 以下は、前回の4日前の辛口時評の抜粋である。


辛口時評060510
シオニストは国際的孤立を自覚しカザール(ハザル)の歴史を継げ!

「聖都の守護者」を意味する「ナトレイ・カルタ」と呼ばれるユダヤ人の超正統派は、現在のイスラエルを「シオニスト国家」と呼び、その解体を求めている。この声を大きくすることが、目下の急務である。

 拙著『アウシュヴィッツの争点』の横帯には、「ユダヤ民族3000年の悲劇の歴史を真に解決させるために」とある。

 ところが、この悲劇は、実に奥深いのである。シオニストの中心は、本来のユダヤ人ではなくて、ユダヤ教に改宗したカザール(ハザル)人なのである。

 イランの大統領は、ホロコーストを「神話」と呼び、イスラエルを地図から抹殺せよと求めた。

 しかし、深く考えると、何百万人の元・カザール(ハザル)人を、抹殺することは不可能である。

 それならば、パレスチナ紛争の解決の道は、どこにあるのか。

 6日前の5月4日には、以下の問題を論じた。

 「ユダヤ人カガノビチと共産主義ロシア革命の深層」

 いわゆるユダヤ人問題は、実は、カザール(ハザル)問題なのである。

 私は、湾岸戦争以来、ユダヤ人問題を追求してきたが、今や、いわゆるユダヤ人の9割の元・カザール(ハザル)人の歴史的な宿命に、哀れを催すに至った。


 ほぼ完成、発行準備中の拙著『ヒトラー・ホロコースト神話』では、以下の用語解説をした。


《「ユダヤ人」の定義は非常に政治的で、変化してきた。「ユダヤ人の国」ということを条件に、多種多様な移民を受け入れて成長してきたイスラエルでは、「ユダヤ人」をどう定義するかによって、イスラエル国民として認められる人々の範囲が、狭くも広くもなる。

 旧ソ連のユダヤ人の中には、キリスト教徒などと結婚した人が多かった。彼らがイスラエルに移民してきた際、適用されたイスラエルの法律は「帰還法」という、外務省が管理する入国管理の法律だった。この法律では、両親か祖父母のうち、誰かがユダヤ教徒であれば、ユダヤ人として認め、移民を許可する仕組みになっていた。

 だが、イスラエル国内に引っ越してきたあと、市民権を得るためには、内務省が管轄する「宗教法」に基づく許可を得なければならなかった。ここでは、母がユダヤ教徒でなければ、たとえ父がユダヤ教徒だとしても、ユダヤ教徒として認められない。

 また、ユダヤ教への改宗はイスラエル国内のラビによるものしか有効ではないとしたため、海外で改宗した人がユダヤ教徒として認められず、イスラエル国籍も取得できなくなってしまった。》(了)


 世界シオニスト機構の創設者、ヘルツルは、ハンガリー生まれだから、「東方ユダヤ人」の元・カザール(ハザル)の子孫である。

 そのヘルツルが、現在のパレスチナに「偽」イスラエルを建国するシオニズムの唱道者になった経過は、これまた非常に複雑である。

 拙著『偽イスラエル政治神話』では、ヘルツルが世界シオニスト機構を創設するに至る経過を、以下のごとく要約した。


http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-6.html
『偽イスラエル政治神話』
総説
[中略]

[訳注]:ヘルツルには、彼に先行するシオニスト運動が格好の看板指揮者として途中で迎え入れたタレントの要素がある。彼は、オーストリア=ハンガリー二重帝国のハンガリー側首都、ブタペストで、裕福なユダヤ人の子として生れ育ち、ユダヤ教の信者にはならず、ウィーンのドイツ語新聞のパリ特派員となった。一八九四年に発生したドレフュス事件(フランス軍ユダヤ人大尉のスパイ容疑・冤罪による流刑判決事件)の衝撃を受ける以前には、ヨーロッパ社会への融和を考えていた。『ユダヤ人国家』の初版は一八九六年。第一回シオニスト会議(のち世界シオニスト機構)の開催が一八九七年。だが、すでにそれ以前の一八七八年に締結のベルリン条約で、パレスチナ地方がフランスの支配下に入って以後、本訳書二四二頁以下にも記されているように、フランスのロスチャイルド家(ロートシルト)による土地買収とユダヤ教徒の移住勧誘が始まっていた。本訳書巻末の訳者解説三五六頁で紹介した資料によれば、さらにそれ以前の一八六七年、つまりは、第一回シオニスト会議が開催されるより三〇年も前に、「開発資金を集めた創世期のシオニスト運動組織は、パレスチナの天然資源を調査」を行い、「数百万の人口を移住させる可能性」を確かめていたのである。

 彼は聖地に特別な関心を抱かなかった。彼は、国家主義を実現する目的地として、ウガンダ、トリポリ、キプロス、アルゼンチン、モザンビーク、コンゴの、どこでも同じく受入れようとしていた(同前)。しかし、ユダヤ教徒の友人の反対に直面し、彼が「力強い伝説」(mighty legend)(同前)と呼んだものが、《逆らい難い力を持つ同志糾合の号令となっている》(『ユダヤ人国家』)ことを認めた。

 この動員力のあるスローガンは、すぐれて現実主義的な政治家である彼にとって、見逃せないものだった。

 彼は、この「復古的」な「力強い伝説」を歴史の現実に置き換えようと宣言し、こうも語った。

《パレスチナは我々の忘れ難い歴史の一部である。……この地名のみが我々の仲間にとっての力強い同志糾合の号令になり得る》(同前)

 [後略]


 ここに、パレスチナ分割決議に至る狂気の根源がある。ロスチャイルドは、セファルディムの系統であるが、いわば傭兵として、アシュケナジムを採用したのである。傭兵が権力を握るのは、エジプトの奴隷王朝(マムルーク)の例もあり、今の「偽」イスラエルでは、多数派のアシュケナジムが権力の座にある。シャロンは、その典型である。

 上記のヘルツルの宣言、「パレスチナは我々の忘れ難い歴史の一部である」を、「カザール(ハザル)は我々の忘れ難い歴史の一部である」に置き換えることが、最前の解決法である。