『電波メディアの神話』(6-2)

第二部 「多元化」メディアを支配する巨大企業

電網木村書店 Web無料公開 2005.4.7

第五章 「打って返し」をくう「公平原則」信奉者 2

大手メディアによる「無視」という方法の隠蔽機能

 のちに実例をしめすが、このような三大ネットワークの買収騒動について、日本にも情報がはいっていないわけではなかった。しかし、大手メディアはまるでつたえていない。これがまず最大の問題である。

 最近、大手新聞が「メディア欄」をもうけるようになったが、これが逆に目くらましの効果を発揮してしまう。つまり、メディア欄にのらないことは、世間一般では存在しないかのようにあつかわれてしまうのだ。私はこの現象をメディアの「隠蔽機能」、またはマスコミ・ブラックアウトとよんでいる。

 ただし、責任を大手メディアだけに帰すべきではない。ジャーナリスト一般も、学者、研究者、評論家、政治家などなどの、言論に職業的責任をもつべき立場の人々も、いわゆる情報洪水におぼれっぱなしで、重要かつ核心的な現実にはせまっていなかった。

 かくいう私自身も、これからくわしく告白するが、てぬき調査の罪をまぬかれず、拙著『湾岸報道に偽りあり』などの読者に追及不足をわびなければならない。私は、最近ますます頻繁に経験するこの種の現象を、「情報ギャップ」とよんでいる。

 以下、私自身のメディア体験をありていに白状することによって、現代的な情報ギャップの恐怖をうったえたい。

 情報ギャップの構造自体も、重要な研究課題である。読者は、大手メディアとか専門家とかが、いざという場合に、いかにあてにならないかということをくわしく知り、つねに眉にツバをつけて情報に接する必要がある。情報ギャップの上に構築される世論は、薄雪におおわれたクレヴァスにきづかない登山ルート設定と同様で、危険このうえない。私があえて恥をさらすのは、一緒に地獄にひきずりこまれたくないからだ。


(3)表面だけの議論のうらで「公平原則」廃止へ世論誘導