『亜空間通信』484号(2003/02/18) 阿修羅投稿を再録

2.15.国際反戦デモ最高なのになぜ暗い顔のふて寝か日本「横組織」崩壊の真因

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『亜空間通信』484号(2003/02/18)
【2.15.国際反戦デモ最高なのになぜ暗い顔のふて寝か日本「横組織」崩壊の真因】

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 転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 さる2月15日、世界中に、2.15.イラク攻撃反対、「史上空前」の形容が相応しい「反戦デモ」の大波が広がった。

 この2.15.国際反戦統一行動を巡る論評は、大手メディアから電網空間に至るまでの言論空間で、様々な角度、視点からなされ、久々に実に賑やかな有様を呈している。

 私も、すでに、この件で、いくつかの意見を発表した。しかし、根本的な大筋の見方を明確にしておかないと、「木を見て森を見ざる」の誤りを犯す虞れがあるので、急遽、その総論的な序論の執筆を開始する。

 特に日本は今、事実上の参戦国でもある。しかも、この高度工業国家、中東に石油の85パーセントを依存する世界第2の経済大国、日本の国内の「反戦」運動の盛り上がりの寂しさについては、その背後の複雑な歴史的事情に関する深い洞察が必要である。これを徹底しないと、今後の反戦運動の見通しは立たない。

 さて、私は、本通信の482号で、以下を抜粋紹介した。

----- 引用ここから ------------------------------
(2/15)日本でもイラク攻撃への反対行動、渋谷でデモ行進
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/124.html
投稿者 日時 2003 年 2 月 16 日 17:34:24:

☆これだけ失業者が いると少しは反戦デモに参加しても不思議はないと思ったが、ま本音ではイラクがどうなろうが知ったこっちゃないってことかな[後略]
----- 引用ここまで ------------------------------

 本号の表題は、最初、「なぜ週休7日の日本人が暗い顔のふて寝か」としてみたのだが、それは、本日(2003/02/18)、唯一の宅配紙、日経の朝刊、および友人が、誤配されていたと言って届けてくれた読売の朝刊の双方に、「ついに来た俺も週休七日制」という「サラリーマン川柳コンクール」入選作品が紹介されていたから、これを見て、上記の阿修羅戦争24掲示板の投稿を思い出し、直ちにパクって、少し、ひねったのである。

 実は今、「週休七日制」どころか、日本の中高年男性、元を糺せば「企業戦士」の自殺率の激増は、世界を驚かせている。それなのに、「反戦デモ」の以前も以前、失業反対、解雇反対の争議すらも、碌々、起きていないのである。私は、元争議団、それも東京地方争議団共闘会議副議長などの団体役員を歴任しているから、これは、私の人生にとっても、天下の一大事なのである。

 同じ日経の朝刊のコラム、「春秋」は、「デモ」に始まり、「イラク攻撃」「反戦」云々、2.15.国際行動を踏まえての論評である。

 わが電網宝庫読者が、本日の朝日の朝刊の関連記事の切り抜きと一緒に、たまたま誤配されていたとは言うものの、もしかすると「押し売り」の悪名高い読売の朝刊も届けてくれたのだが、角材、ではなかったか、拡材を振りまく朝読戦争は、いまもたけなわである。

 拡材だけではなく、時には、紙面にも、朝読戦争の影響は表れる。特に政治的なことでは、まったく論調が違うことが多い。狙う、いやさ、食い物にする対象の読者の層が違うのである。本日の紙面は、その典型である。

「正義の商店」朝日の社説は「イラク戦争に反対する」であるが、「鷹派」の読売は「国内経済問題」であり、「イラク」「イラク」「デモ」「デモ」と、顕微鏡で探し回ると、やっとのことで、7面の国際面の右下に小さく、見出しは1段の「反戦デモ無視できず/英首相」、本文はたったの24行。「事実上の無視」ときたもんだ。

 国際および国内の全体の状況を反映して、阿修羅戦争24掲示板には、以下に抜粋紹介する投稿があった。

----- 引用ここから ------------------------------
ネットが盛り上げた史上最大の反戦デモ
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/245.html
投稿者 淋しい日本人 日時 2003 年 2 月 18 日 09:05:36:

 2月15日、世界の主要都市はイラク攻撃に反対するデモの参加者の波に埋まった。

 英ロンドンでは警察発表によると75万人以上が参加、イタリアのローマでも警察発表で100万人が参加した。ドイツのベルリンやフランスのパリ、スペインのマドリードでも数十万人規模の大規模な反戦を訴える集会が開催された。世界の600都市で1000万人以上が参加したものと見られている。[中略]

●日本の集会は小規模。やはり遠い国の出来事か

 日本でも同じく2月15日の夕方6時半から東京・渋谷の宮下公園でイラク攻撃に反対する集会が開かれた。主催者発表によると集まったのは約5000人。キリスト教・仏教などの宗教団体から学生や大学教授の団体、グリーンピースなどのNGO(非政府組織)の関係者が幅広く集まった。[中略]
「欧米のデモに比べると、規模が小さすぎる」。テレビを見て駆けつけたという米国人の3人グループも、がっかり顔だ。[後略]
----- 引用ここまで ------------------------------

 以上の内、特にドイツとフランスで「反米」傾向が強まっていることについては、以下の論評もある。

----- 引用ここから ------------------------------
http://tanakanews.com/d0217EUUS.htm
立ち上がるヨーロッパ
2003年2月17日  田中 宇

 2月15日、西ヨーロッパ各地でベトナム反戦運動以来という大規模な反戦デモが行われた。ロンドンでは75万人、ローマでは100万人の規模で、ベルリンやパリでも、アメリカのイラク侵攻に反対する集会が開かれた。アメリカ各地でもかなりの人々が集まり、ソウルや東京、バンコクなどでも集会が開かれたが、規模としては西欧が圧倒的だった。

 この世界的な動きを見て「ヨーロッパの人々は立ち上がったのに、日本の人々はなぜ動かないんだ」とお嘆きの方も多いかもしれない。だが私から見ると、今回の西欧における反戦・反米運動は、ヨーロッパにとって特に大きな意味を持っている。ゆっくりだが確実に統合を進めて世界的な覇権を回復しようとするヨーロッパと、それを阻害しようとするアメリカという、欧米の関係の中で読み解けば、欧州の動きは、単に平和を希求するだけの運動ではない。 [後略]
----- 引用ここまで ------------------------------

 ヨーロッパが、傲慢な成り上がり者のアメリカを嫌うのは、今に始まったことではないが、私は、911事件の自作自演説の立場から、この新展開の思想的な背景を見ている。

 わが新編著『9・11事件の真相と背景』(副題:「テロ」か? 自作自演の戦争挑発謀略か?アメリカ=イスラエル=世界支配構想の核心を突く)では、簡略に、同じ主旨の本がフランスでベストセラーになり、ドイツでも、元大臣が謀略説を公言したことなどを記した。

 その前段には、アメリカとイギリスの情報機関が中心の「エシュロン」が、企業スパイをやって、欧州を怒らせた事実を位置付けている。ヨーロッパ人はアメリカのCIAが大嫌いなのである。イスラエルの「神様」、ホロコーストへの疑惑も、シオニスト・イスラエル・ユダヤ・ロビーの強力なメディア支配の下で、密かに燻り続けていた。

 それらの長期にわたる不満の鬱積が、モーローン(moron:米心理学会の用語で「軽度精神薄弱」)大統領、ブッシュを傀儡とする軍事超大国のイラク攻撃「押し付け」への反発を契機として、一挙に爆発し始めたと、私は見ている。

 それに引き換え、日本の「ドッちらけ」振りは、何としたことか。呆れる向きが多いが、私は、以下の通信で、すでに「偽善系左翼が邪魔!」なのだという決定的な指摘をした。

----- 引用ここから ------------------------------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/aku482.html
『亜空間通信』482号(2003/02/16)
【2.15反戦世界千万デモでも日本4桁下のドッちらけ物哀しき偽善系左翼が邪魔!】

 ああ、ああ、5000人(主催者発表)だとさ。2.15.反戦国際行動の日本の数字なり。

 私自身は、主催者発表ってのを、1960年代から何度もやった。

 日比谷野外音楽堂は、ぎゅうぎゅう詰めても、2500人しか入れないのに、500人ほどの定員の座席がほぼ埋まると、1万人以上と発表するのが通例だった。

 2.15.の渋谷のデモは、多分、千人以下だろう。[後略]
----- 引用ここまで ------------------------------

 この私の指摘に対しては、強く反発する向きもあったが、そういう小児病患者は論外であるから、相手にしない。問題は、数字だけの評価にあるのではない。発信者名は秘すが、以下のような私信も、手元に届いた。

----- 引用ここから ------------------------------
 ぼくも小学生の息子を誘ってこの集会とデモに行ってきました。911以降、今回とほとんど同じ顔ぶれの団体が呼びかけた反戦デモに何度か出かけましたが、15日の集会は、宮下公園はすし詰め状態で、デモの隊列も延々続き、いままでで最高の人数だったと思います。組織動員のできるようなところが呼びかけたわけではないですが、5000人というのはかなり実数に近いと思います。

 で、今回のデモはいままでとはちょっと違い20代ぐらいの若者とともに、外国人の参加者がかなり目立っていました。在日外国人が反戦の意思表示をする場になったのではないかと思います。

 60年安保やベトナム反戦運動を体験した木村さんには隔靴掻痒なのかもしれませんが、過去の運動経験のない人びとも徐々に声を挙げつつあるとポジティブな印象を持ちました。
----- 引用ここまで ------------------------------

 私は、、これに対して、以下の返信を発した。

----- 引用ここから ------------------------------
応答感謝。

 私は、争議団時代に、何度も参加実数を点検しました。

 丸の内の大通りを埋め尽くした最高潮の時の千代田総行動のデモでは、横から隊列を全部数えて、実数を1,300と報告したのに、千代田区労協は、6,000と発表しました。

 しかし、それまでの経験から、1万と発表するのが通例ぐらいの感じでした。町中の隊列は、大変な数に見えるものです。

 なお、私は、「過去の運動経験のない人びと」・・・「も」・・・ではなくて、・・・「が」・・・「声を挙げ」ていることに、唯一、希望を託しています。[後略]
----- 引用ここまで ------------------------------

 以上の私の考え方の背後には、私自身の半生を賭けた長期にわたる戦いの経験が潜んでいる。極めて簡単に言うと、いわゆる「既成左翼」への厳しい批判であるが、今回のヨーロッパ、イギリス、アメリカ、その他諸国と日本の比較に関して言うと、私が3年前から以下の頁で「徹底批判」を開始した「暴力革命思想」を抱き続ける「カール・マルクスとその亜流」との関係が、根底に横たわっている。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/marx-hihan.html
千年紀に寄す
カール・マルクスとその亜流の暴力革命思想への徹底批判序説

 この問題に関する経過と運動の歴史的な蓄積の違いが、今、国際と国内の巨大な落差として、表面化しているのである。

 日本の上記の「過去の運動経験のない人びと」の量と質は、欧米の反主流とは比較にならないほど、少なく、低いのである。

 このことは、上記の「ネットが盛り上げた史上最大の反戦デモ」の投稿の中の[「世界」諸国の名の中に、1960年代には「社会主義国」として日本の左翼の憧れの的だった「ロシア」と「中国」がないことと、密接に関係する。

 私は、湾岸平和訴訟、ホロコースト問題、ユーゴ戦争に関して、アメリカ、フランスなどの運動に直接、何度か接した。欧米では、ソ連の初期から、スターリンの血の粛清などの影響で、反スターリンのトロッキーが受けていたり、その後の反共政策の下で共産党の崩壊が進んだりして、今につながる「新しい運動」が、早くから芽生えていたのである。

 労働組合の右傾化も、日本より早く進んだから、たとえばアメリカでは、早くから「コミュニティ・ユニオン」という名称の地域的な連帯の運動が広がっていた。もっと古いイギリスなどの場合にも、私が「本来」と位置付ける「横組織」の伝統が強い。

 この「横組織」の問題は、元千代田区労協事務局長の私にとっては、生涯の主題でもある。

 今から27年前になる1976年に執筆し、有志がガリ版で数百部の冊子を作ってくれたものを、以下で電網発表し始めている。電網発表はまだ途中までだが、上記の「イギリス、フランス」の例は、すでに入力されている。アメリカも入っている。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/yokos.html
ラダイトからボルサまで
~労働組合運動の地域的&産業的組織の国際的経験と原理を探る~

執筆:1976年
木村愛二

 では、日本の「横組織」はどうかと言えば、これが実に嘆かわしい状況に陥っているのである。簡単に言えば、ほぼ完全な崩壊状況なのである。

 この崩壊の歴史が、これまた、日本独特の歪み方を示しているのである。

 1960年の安保闘争の時期には、全国で3,000の「安保共闘」組織があったとされている。形式はすべて基本的に、中央の総評・社会党・共産党(最初は味噌っかす扱い)に従っていた。

 全国の都道府県には、東京地評、道評、府評、各県の県評、各地方や地域には、地区評、地区労などの略称で呼ばれる網の目の「横」の組織が成立していた。これらのいわゆる総評系の労組の「横組織」が、全国で3,000の「安保共闘」組織の中核を成していたのでる。日本の中心部の千代田区労協は、その典型であった。

 これらの日本の労組の「横組織」は、今、千代田区の千代田区労協と千代田区労連を典型として、1960年安保闘争以前からの伝統を引き継ぐものと、日本共産党の中央集権的支配下の全労連参加の「地区労連」に分裂している。この分裂を引き起こした歴史的に許し難い「戦犯」は、日本共産党なのである。

 その戦犯、日本共産党は、2.15.国際反戦統一行動日の呼び掛けを十分承知しながら、むしろ、十分承知していたからこそ、その前日の夜に、2.14.集会を設定したのである。

 この2.14.「分裂」集会の怪しさに関しては、すでに前出の本通信482号で私見を発表したが、その結果については、日本共産党の執行部批判派の電網宝庫から、参加者の典型的な感想、「2.14集会で幻滅したこと」と題する投稿を紹介する。

----- 引用ここから ------------------------------
http://www.linkclub.or.jp/~sazan-tu/readers/0302/r0302_x.html
「さざ波通信」
一般投稿欄
2.14集会で幻滅したこと

2003/2/15 知(ちから)、40代、団体職員

 やっぱり、予想どおり、呼びかけ人の文化人なんて、誰一人として来はしなかったではありませんか。なだいなだ氏は、かろうじて、遅れてきたようですが。小田実さんが呼びかけたときは、たくさんきたのであるから、共産党・全労連は、甘く見られたものです。

 自分の当日の日程もキャンセルして駆けつけられなくて、戦争をとめるなんて大仰なこと、言うんじゃないよ。集まった2万人に失礼である。事務局の全労連もだれだれと誰が、今日は参加できなくてすみませんと謝っているとのコメントもしない。

 名前を借りて、それだけで、ありがたがっているのか。ばか者。結局参加者なんて、労組ばっかりじゃないか。舞台が小さくて、前がみえないんだょ。旗さげろよ。 たとえば、地域でこのような集会をして、呼びかけ人が誰も参加しなかったら、「ふざけるな」という話になるぞ。日本の文化人のなんと薄っぺらなことか。当日は本当に冷え冷えとしたものであった。

 土井たか子、参加しないなら、長々のメッセ-ジよこすんじゃないよ。みんな震え上がっていたぞ。

 私は、「たたかう首都圏の学生」と一緒に歩いたが、「だせぇー」の一言。運動にセンスというものを、まったく感じませんね。
----- 引用ここまで ------------------------------

 この投稿では、国会議員の氏名が「土井たか子」しか出ていないが、私が自ら全労連書記局に電話で確かめたところ、日本共産党の志位書記局長も出ていて、こちらは生身の無様な運動不足の若太りの体を曝し、肉声でしゃべったそうである。

 ここでも繰り返すが、日本共産党は、その権力の支配下の全労連を道具に使って、「イラク攻撃反対」の「偽」看板を掲げ、まさに「羊頭狗肉」の典型、一斉痴呆選挙の事前運動を展開したのである。芯から「だせぇー」のである。

「首吊りの足を引っ張る」という日本の古い諺があるが、これでは、反戦運動が盛り上がるどころか、沈没するのは当然である。今後の決定的な重要かつ不可欠な課題は、すでに四分五裂、消滅寸前の旧社会党系の次に、日本共産党をも急ぎ、流れ解散に追い込むことである。

 さすが元世界帝国の主、イギリスの格言を改めて繰り返えす。
 「偽の友は公然の敵よりも悪い」
 「公然の敵は偽の友よりも良い」

 以上。


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