『亜空間通信』987号(2005/03/24) 阿修羅投稿を再録

ニッポン放送議決権の過半ライブドアが取得の一斉報道にマスメディア集中排除原則が欠如の恐怖

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『亜空間通信』987号(2005/03/24)
【ニッポン放送議決権の過半ライブドアが取得の一斉報道にマスメディア集中排除原則が欠如の恐怖】

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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 国際的には訳語が難しい「ギョーセイシドウ」が、ウフェブスター辞典に発音そのままで載ったと言われてから久しい。日本独特の官僚の小細工が、今また、連日の大見出し報道、ライブドアvs.フジテレビの激動の背後に隠れている

 わが近縁の国家公務員が法案作りに関わり出した時に曰く:

「法律は目的があって作る。目的に適い、馬鹿な野党議員が質問しにくいような難しい文章を作るのが、役人の腕の見せ所である。法律さえ作ってしまえば、あとは政令、省令、行政指導、何とでもなる」

 本通信で問題にするのは、総務省の省令に関する行政指導である。

 以下の総務省発表では、実に長たらしく、「電波法第7条第2項第4号に基づく総務省令(放送局の開設の根本的基準第9条)に規定するマスメディア集中排除原則に定める出資制限」となっている。

 この「出資制限」の上限は、以下のごとく、「放送局を所有する法人の議決権の総数の10分の1」である。

 一般放送事業者に対する根本基準第9条の適用の方針に基づく審査要領

一 申請の局の事業計画等は、放送用周波数割当計画に合致すること。

二 申請者は、できる限り人的に(役員、番組審議会委員等の構成において)及び資本的に(株式の地域的分布等において)、その地域社会に直接かつ公正に結合すること。

三 一の者が所有し又は経営支配をするのは1局に限る。ただし、次の場合を除く。

(1) 一地域社会において、ラジオ及びテレビを兼営する場合並びにこれに準ずる場合。

(2) 一地域社会において、中継局を開設する場合。

(3) その他放送の普及等公益上特に必要があると認める場合。

 なお、上の放送局の経営支配の有無の判断に当たっては、次の各項を指針とする。

(1) 一の者が放送局を所有する法人の議決権の総数の10分の1を超えて所有すること。

(2) 一の者の役員が放送局を所有する法人の役員(監査機関を除く。以下同じ。)の総数の5分の1を超えて兼ねること。

(3) 一の者の代表権を有する役員又は常勤の役員が放送局の所有者の代表権を有する役員又は常勤の役員を兼ねること。

四 一の者が、放送事業を行うことによってラジオ事業、テレビ事業及び新聞事業の3事業を兼営し、又は経営支配をすることにならないこと。ただし、右の者の他に当該地域社会に存立の基礎をもつ有力な大衆情報の供給事業が併存する場合、その他、3事業の兼営又は経営支配を行っても当該地域社会における大衆情報の独占的供給となるおそれのない場合は、この限りでない。

 なお、経営支配の有無の判断については、三に準ずる。

 この件では、すでに、以下の通信で、総務省の報告を紹介した。

http://www.jca.apc.org/~altmedka/2003aku/aku986.html
http://www.asyura2.com/0502/senkyo8/msg/1099.html
『亜空間通信』986号(2005/03/23)
【放送事業者「マスメディア集中排除原則」違反事例記者会見資料あれども総務省と大手の談合共犯】

[中略]

http://www.shinetsu-bt.go.jp/sbt/hodo/h16/050302.htm
報道資料
平成17年3月2日
放送事業者の「マスメディア集中排除原則」違反事例への対応について

 電波法第7条第2項第4号に基づく総務省令(放送局の開設の根本的基準第9条)に規定するマスメディア集中排除原則に定める出資制限の上限を超えて放送局に対する出資が行われてきたとされる事例について、管内の放送事業者に対する点検・調査を実施してきた結果、別紙1のとおり、自ら出資する側で1社、出資される側で4社に違反の事実があることが判明いたしました。

 今回の事態は、健全な民主主義の発達上重要な意義を有する同原則に対する違反であって、言論報道機関としての放送事業の高い公共性や社会的使命の大きさにかんがみ、国民・視聴者からの信頼を損なう憂慮すべき事態であると考えます。

 ついては、下記の理由により、別紙2のとおり、このような事態を再度引き起こすことがないよう厳重に注意するとともに、社内における株式管理体制の見直しなど再発防止に向けて必要な具体的措置を講じ、名義株の解消結果を含めその措置状況を3か月以内に報告するとともに、その旨を公表することを求めました。

 また、出資する側で違反していた1社に対しては、今後かかる再発防止のための取組みが十分でなく、同様の事態が繰り返し生ずることとなった場合には、電波法第76条に基づく行政処分もあり得る旨の警告も併せて行ったところです。

 総務省としては、これを機に、放送局再免許等に係る審査体制を強化することを目的に、別紙3のとおり、必要な制度整備を進めてまいります。

   記

1.  出資する側の1社については、自らが第三者名義株を長年にわたり保有すること等を通じて、直近の一斉再免許時点において、マスメディア集中排除原則に定める出資の上限を超えて他の放送事業者に対する出資を行っているにもかかわらず、同原則に対する正しい理解と認識を欠いた結果として、当該事実が適切に申請書類に反映されず、当該他の放送事業者に対する再免許審査の基礎となる重要な情報の記載に誤りを生じさせたと認められること。

2.  出資される側の4社については、特定の者による第三者名義株の長年にわたる保有等を通じて、直近の一斉再免許時点において、マスメディア集中排除原則に定める出資の上限を超えた出資が行われているにもかかわらず、株式事務等の管理体制の遺漏により、あるいは、当該超過の事実を確認すべき義務を怠ったことにより、その事実が申請書類に適切に反映されず、再免許審査の基礎となる情報の記載に重大な誤りを生じさせたと認められること。

<参考資料:全国のマスメディア集中支配排除原則への抵触状況並びに行政指導の内容>
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お問い合わせ先 総務省信越総合通信局 情報通信部 放送課
電話 026-234-9990
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別紙1

1. 自ら出資する側で集中排除原則に抵触していた放送事業者
信越放送株式会社 (6.45%超過)
※括弧内の数字は、超過比率

2. 出資をされる側で集中排除原則に抵触していた放送事業者
株式会社テレビ新潟放送網 (6.10%超過)
長野朝日放送株式会社 (7.50%超過)
株式会社エフエムラジオ新潟 (0.75%超過)
株式会社ながのコミュニティ放送 (6.45%超過)
※括弧内の数字は、超過比率

別紙2

1. 総務省情報通信政策局長からの警告
(名義株を原因とする違反事例であって、放送事業者自らが他の放送事業者に出資していた1社)
信越放送株式会社

2. 信越総合通信局長からの厳重注意
(出資される側で、名義株を原因とする違反事例であって、違反事例が単独であり、超過比率が比較的低い4社)
株式会社テレビ新潟放送網
長野朝日放送株式会社
株式会社エフエムラジオ新潟
株式会社ながのコミュニティ放送

別紙3

今後とるべき措置
1.名義株割合を合算した出資状況変更届出
2.10%を超える出資者に関する状況の公表
3.純粋持株会社における議決権算定方法の明確化
4.公益法人を合算して計算する場合の基準の明確化 等

<参考資料>

全国のマスメディア集中支配排除原則への抵触状況並びに行政指導の内容は、次のとおりです。

1. 名義株を原因とする違反事例であって、放送事業者自らが他の放送事業者に出資し、かつ、複数の違反をした社の合計3社(総務大臣からの警告)
東海テレビ放送株式会社  鹿児島テレビ放送株式会社  株式会社テレビ大分

2. 名義株を原因とする違反事例であって、放送事業者自らが他の放送事業者に出資していた社の合計14社(情報通信政策局長からの警告)
北海道テレビ放送株式会社  株式会社青森テレビ  秋田テレビ株式会社
株式会社ラジオ福島  信越放送株式会社  株式会社テレビ山梨
静岡放送株式会社  山陰中央テレビジョン放送株式会社
日本海テレビジョン放送株式会社  株式会社サガテレビ  株式会社大分放送
株式会社テレビ宮崎  株式会社鹿児島放送  琉球放送株式会社

3. 名義株を原因とする違反事例であって、複数の違反があった社及び超過比率が相当程度高いと認められる社の合計22社(情報通信政策局長からの厳重注意)
株式会社エフエム北海道  株式会社テレビ岩手  株式会社山形テレビ
株式会社エフエム福島  テレビ愛知株式会社  株式会社ZIP-FM
三重テレビ放送株式会社  三重エフエム放送株式会社  岐阜エフエム放送株式会社
石川テレビ放送株式会社  株式会社エフエム石川  株式会社エフエムとなみ
株式会社エフエム大阪  株式会社エフエム山陰  株式会社中国放送
株式会社高知放送  エフエム・サン株式会社  株式会社エフエム中九州
株式会社エフエム大分  株式会社熊本シティエフエム  株式会社エフエム鹿児島
鹿児島シティエフエム株式会社

4. 名義株を原因とする違反事例であって、3に該当する社以外の社及び子会社分の合算漏れを原因とする社の合計32社(地方総合通信局長からの厳重注意)
株式会社テレビ北海道  株式会社エフエム青森  株式会社エフエム岩手
株式会社宮城テレビ放送  株式会社エフエム仙台  株式会社エフエム秋田
山形放送株式会社  株式会社テレビユー山形  株式会社エフエム山形
株式会社福島中央テレビ  株式会社テレビユー福島  株式会社東京放送
株式会社栃木放送  株式会社エフエムナックファイブ  株式会社山梨放送
株式会社エフエム富士  株式会社テレビ新潟放送網  株式会社エフエムラジオ新潟
長野朝日放送株式会社  株式会社ながのコミュニティ放送  株式会社静岡第一テレビ
中部日本放送株式会社  富山テレビ放送株式会社  テレビ大阪株式会社
広島テレビ放送株式会社  株式会社エフエム高知  株式会社福岡放送
株式会社エフエム佐賀  株式会社テレビ長崎  株式会社熊本放送
株式会社エフエム宮崎  琉球朝日放送株式会社

「ギョーセイシドウ」の実態に関して、私は、今から11年前の旧著、『電波メディアの神話』の中で、以下のように、その当時の状況を批判している。

 これがなぜ、大問題として、最近の報道に浮上してこないのか。それが問題である。浮上しない理由を簡単に言うと、大手メディアの新聞と放送の完全な系列化があり、その大手メディア系列と監督官庁の総務省の談合、癒着があり、天下り先の規制を躊躇う官僚の腐敗堕落があるのである。

 つまり、この件では、特に、大手メディア報道は、まったく当てにならないのである。本通信のような、市民情報の普及あるのみである。

denpa-8-7.html 『電波メディアの神話』
第八章 巨大企業とマルチメディアの国際相姦図
「独占集中排除」のおざなり堤防は完全に決壊状態

「規制緩和」の基本的な本質は、すでにアメリカの実例でしめしたように「弱肉強食」のジャングルのおきての容認である。その典型は、二月初旬に発表された東京の「調布ケーブルテレビ」の例にもみられる。総合商社で売上げ第一位の伊藤忠商事が、会社更生法適用中の名門映画会社「にっかつ」所有の株四三・二パーセントを買収し、既得株とあわせて七二パーセントの出資比率をしめるにいたったのである。

「外資参入」の出資比率に関しては「法律などで決めることはしないが、三分の一未満までをメドとして認めることになるだろう」(日経93・12・10)という郵政省事務次官の記者会見発言がなされ、以後、その方向にすすんでいる。

 だが「法律などで決めることはしない」という官僚的独断専行は、ラディオ放送の発足当時と同様の策略であり、市民の権利への重大な侵害をはらむ。いままでにもおかされてつづけている言論の自由が、法治国家の建前さえかなぐりすてた「弱肉強食」政策によって、さらに大規模に破壊されるのだ。

 既存の地上波による民放テレヴィ局が免許を獲得しはじめた時期には、言論機関の「独占集中排除」の行政指導があり、「一社」よりもひろい概念の「一グループ」による出資比率が「一〇パーセント以内」におえられていた。ところが以後、大手新聞系列などによる放送支配は進行し、「放送の多元化」を理由に一〇パーセントをこえる株式取得も野ばし状態になってしまったである。CATVの場合、郵政省は発足当初に「地上波が届かない地域向けの補完的なメディア」と位置づけた。最近では、「高度情報化社会を担う中核的なメディアとして期待される」といいかえることによって、次世代通信網につなげようとしている。そうなるとすれば、「中核的なメディア」に関する「独占集中排除」の議論も、ふたたび腰をすえてやりなおすべきであろう。

 民放労連が一九九一年に定期大会で決定した「視聴者のための放送をめざす民放労連の提案」では、「マスメディアの独占集中排除」の一環としてとくに新聞社による系列支配の実情を重視し、「一つの新聞社が特定の放送局の株を所有する場合は5%以内とする」としている。

 たとえば銀行の不動産会社への出資は、やはり五パーセント以内におえられている。郵政省が本気で「独占集中排除」するつもりだったら、最初から「一〇パーセント以内」ではなく「五パーセント以内」の行政指導をしたはずなのだ。ところがいま、CATVという有線メディアの一角で、大手新聞社よりもはるかに巨大な多国籍企業の総合商社による七二パーセントもの株式所有がゆるされているのである。アリの穴から堤防がやぶれるというが、それどころの話ではない。「マスメディアの独占集中排除」のもともと手ぬきだらけでおざなりなつくりの堤防は、完全に決壊したも同然である。

 以上。


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