┃憎まれ愚痴入口木村書店戻る┃  ┃第6章┃┃6┃

詳細目次
はしがき
序章
第1部:解放50年式典が分裂した背景
  第1章
  第2章
第2部/冷戦構造のはざまで〜米ソ賛成、アラブ総反対のパレスチナ分割決議の背景〜
  第3章
  第4章
第3部:隠れていた核心的争点
  第5章
  第6章
第4部:マスメディア報道の裏側〜無意識の誤解からテロによる言論封殺まで〜
  第7章
  第8章
終章:核心的真実〜または人類史の最後にしてほしい情報操作の本音の真相〜


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『アウシュヴィッツの争点』
ユダヤ民族3000年の悲劇の歴史を真に解決させるために
(54)
第3部 隠れていた核心的争点
第6章:減少する一方の「ガス室」 6/7

『週ポ』Bashing反撃)

ポーランドの法医学調査研究所がおこなった追試調査

「ガス室」検証の歴史的経過は、「歴史見直し研究所」が発行している最新のリーフレット、「“ホロコースト否定論”とはなにか」に簡潔にまとめられている。
 それによると、すでに紹介したユダヤ人の歴史学者メイヤーの問題の著書、『なぜ天は暗くならなかったか』は、ツンデル裁判で『ロイヒター報告』が提出されたのとおなじ年の一九八八年に発表されているが、そのなかでメイヤーは、「ガス室」の真相を見きわめるために「殺人現場とその直接の周辺の[考古学的]発掘調査」をよびかけていた。
 ロイヒターの調査と報告にひきつづいて、ドイツの化学者(公認の薬剤師で博士課程の研究者)、ゲルマル・ルドルフによる調査がおこなわれている。ルドルフの研究結果は『歴史見直しジャーナル』(93・11/12)に紹介されている。実地調査とサンプルの分析にもとづくかれの結論の骨子は、つぎのよう明確なものである。
「化学的・技術的な理由により、アウシュヴィッツの“ガス室”と称される場所における青酸による大量ガス殺人の主張は、存在しなかった」
 このほかにも、アメリカの化学者ウィリアム・リンゼイと、ドイツの技術者ヴォルフガング・シュスターが、同様の調査を行い、『ロイヒター報告』の正しさを裏付けているという。
 これとは別にアウシュヴィッツ博物館が、近くのクラコウ市にある法医学調査研究所に同様の調査を依頼した。その報告書の全文英訳が『歴史見直しジャーナル』(91夏)にのっている。「“ホロコースト否定論”とはなにか」では、「いわゆるガス室ではゼロか微量のシアン化合物しか発見できないというロイヒター報告を裏づける」結果だと評価している。

追試調査報告の公表と判断をさけるアウシュヴィッツ博物館

 わたしは、アウシュヴィッツ博物館で歴史部主任のピペル博士に会ったさい、最後の第三番目の質問として、博物館がクラコウの法医学調査研究所に調査を依頼した件をもちだした。
 その質問の前提として、わたしが持参した英文の『ロイヒター報告』をしめしたところ、とたんにかれの態度は急変した。それまでに見せていた余裕がなくなった。それまではゆったりと椅子の背にもたれて、気楽に肩をすくめたりしながら語っていたのだが、わたしが『ロイヒター報告』をひろげた机に身をよせて、息をひそめるような低い声で、「この報告はドイツ語の翻訳で読んだ」という。持っているとはいわなかった。そして、あわただしく手帳に『ロイヒター報告』の題名や出版元などをメモした。
 わたしは、カリフォルニアの「歴史見直し研究所」の前述のリーフレットの該当箇所をしめし、事実経過にまちがいはないかと聞いた。ピペルは黙ってうなずく。つづいて、アウシュヴィッツ博物館として調査結果を公表したかと聞くと、ピペルは肩をすくめ、しばらく考えてからこう答えた。
「博物館としては公表していない。クラコウの研究所が医学雑誌に発表した」
 わたしは、ふたたびリーフレットの該当箇所を指さして、「ここには博物館が調査を依頼したと書いてある。基本的には博物館の仕事ではないか。なぜ博物館が公式発表をしないのか」とせまった。しかし、ピペルは肩をすくめるばかりで、これには返事をしない。わたしには、かれらの立場がわかりすぎるほどわかっている。これ以上せめても仕方ないので、つぎの質問にうつった。
「わたしは、事実にもとづく諸民族の和解こそが永続的な平和の基礎だと考えて、この問題を取材している。もしも、ガス室とされてきた部屋ではゼロか微量のシアン化合物しか発見できないという結果がでたのなら、ガス室によるユダヤ人ジェノサイド説は否定されると思うがどうか」
 この質問にもピペルは肩をすくめて口をゆがめ、しばらく黙っていたが、ついにこう答えた。
「真実を語る口は沢山ある。残留がすくない理由は、シラミの消毒の場合とちがって、人を殺す場合は短時間だったからとも考えられる」
 わたしは、この答えにたいして内心あきれながらも、仕方なしにほほえんで、やはり照れ笑いのような表情をうかべるピペルの顔をしばし見つめた。この答えは、決してピペル一人がとっさに思いついた逃げ口上ではないと感じた。博物館だけの判断でもない。東西冷戦の壁がくずれたとはいえ、否も応もなく地理的にドイツとロシアにはさまれ、アメリカやイスラエルの思惑を気にせずにはいられないポーランドの、まさに歴史的宿命としかいいようのない悲哀が、ピペルの照れ笑いの背後に透けて見えるような気がした。
 すでに一二時をすぎてもいたが、ピペルの態度には、もうこの問題は勘弁してくれという雰囲気があった。あとは直接、クラクフの研究所にアタックする以外にない。もっとくわしく状況をしりたい。平和行進の出発を見送る予定を変更してクラコウにいこうと、その場で決意した。
 そこで最後に、クラクフの研究所をたずねたいが場所はわかるか、と聞いた。ピペルは、クラクフで聞けばすぐにわかると答えた。わたしはいさぎよく礼をのべてピペルの部屋をでた。

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