イスラエル建国史見直し論から今後の追撃へ

ユダヤ民族3000年の悲劇の歴史を真に解決させるために ― 論証と資料

アラブ諸国におけるガロディ「雪崩の支持」 5

建国史見直し論から今後の追撃へ

 1997.8.本誌8号で指摘した通りに、イスラエル建国50周年に当たる1998年は、歴史見直しの正念場となった。大手メディアにも、薄味ながら、歴史見直しの動きが伝えられている。毎日(98・5・7)にも「粉飾の建国史、見直しの動き」と題する特集が載った。そこで、いささか早手回しにすぎるが、すでに理論的には追撃戦の段階に入ったと判断し、今後の留意点を指摘しておきたい。

 これもすでに1997.3.本誌3号で記したが、「ガス室」論争は試金石である。関係者の真価が良く分かる。商売人が主流のマスコミ業界はもとより、私が長年所属し、現在も再所属し直したマスコミ文化情報労組会議も、本件をきっかけとして脱会したJCJも、『マルコポーロ』廃刊事件で広告費を通ずる言論弾圧を黙視した。このけじめはシッカリ付けるべきだ。非常事態に役に立たない組織は有害無益である。

お粗末な反ユダヤ主義をも批判

 ガロディは「最後の課題」を「偽造者と批判的な歴史」の項で提起している。

「どんなに小さな情報についても、われわれが確認できる出典や確証の材料を用意することであり、すべての嘘と根本的に一線を画することである。嘘は宿命的に、宗教や共同体への不信を生み出し、憎悪と迫害を呼び起こす

 この種の卑しむべき行為の典型は『シオンの長老の議定書』である。これについては、拙著『パレスチナ/神の伝言の土地』の中でも、9頁も費やして、警察による偽造の過程を明らかにした。私が教えを受けた原典は、アンリ・ロランが1939年に出した反駁の余地のない論証、『われわれの時代の黙示録』である。この本は、翌年の1940年、ヒトラーによる焚書の対象となった。ナチによる反ユダヤ主義プロパガンダの絶好の材料を台無しにする本だったからである。復刻本が1991年に出版されている。

 アンリ・ロランは、つぎの2つの剽窃文書を発見した。この2つの文書を基にして、今世紀の初頭、ロシアの内務省の警察官吏、フォン・プレヴが、問題の偽造文書を作成したのである。

 1……1864年にフランスのモウリス・ジョリイが、ナポレオン3世に反対する立場で書いた『モンテスキューとマッキャヴェリの地獄での対話』と題するパンフレットである。そのどの章にも皇帝の圧制に対しての、あらゆる批判が転載されていて、すべての政治的支配に対して適用できる内容になっている。

 2……ロシアからの移民、イリア・ツィオンが、ロシアの大蔵大臣、ヴィッテ伯爵に反対するために出した『ヴィッテ氏の圧制はロシアをどこへ導くか?』という題の評論である。発表されたのは1895年であるが、これがまた今度は、1789年以前に、カロヌ氏に反対するために出されていた風刺書の剽窃であって、これも、すべての大蔵大臣と国際的な銀行との関係に関して使える内容なのである。この剽窃文書に関しての特筆すべき点は、これがさらに、ヴィッテ伯爵を憎んでいたフォン・プレヴによって、ヴィッテに関する報告の手本にされたことである。

 この卑しむべき種類の探偵小説的偽造文書は、生憎なことに、かなり利用されてしまった。特に、いくつかのアラブ諸国での利用に関しては、私は、早くから批判を加えている。この誤った利用によって、シオニストとイスラエル、および彼らの国際的な圧力団体は、彼らの中東政策に対するすべての批判を、偽造者の仕業と同一視する機会を得たのであり、それによって、さらに非難を強めることができたのである」

アラブ諸国における「ガス室」問題研究上の課題

 今後の研究課題として提起しておきたいのは、以上のような『シオンの長老の議定書』の「いくつかのアラブ諸国での利用」の経過である。

 1970年代にPLOが「ホロコースト」への疑問を宣伝したという情報がある。パレスチナの子供が「ホロコーストは嘘だ」と発言した記録もある。 アラブ人なら誰しもが、聞いてすぐに疑いを深め、広めるべき性質の話なのに、それ以後、20年以上もの間、この問題が国際的に表面化しなかった理由は、ガロディが以上のように指摘する「シオニストとイスラエル、および彼らの国際的な圧力団体」だったのであろう。