Political Criminology

V まとめ:法学分野でのオートポイエーシス論の可能性

 以上の議論を踏まえると、オートポイエーシスが、法システムの理解にとっても一種実りある提案を申し出ていることには疑いがない。ただ、それでも実際にルーマンのマニフェストにしたがって、オートポイエーシス概念を社会システムや法システムにそのまま応用するには、まだあまりにもオートポイエーシス概念自身が定着できていないように思われる。

 特に法の分野でのパラドックスの処理については、おそらく独自の形式を考案する必要がある。各法規範の階層性や権力関係の中で、ラッセルのパラドックスがはたして成立するのかどうか。法システムを閉鎖系として捉えようとするのは、ある意味では法実証主義という一つのイデオロギーの成せるわざであって、法システム自体に必然的に内在する要求ではないこと。従って真にラッセルのパラドックスを検討するならば、ケルゼンから離れ、法の要素そのものに着目するべきこと。

 さらに法システム(法規範、法解釈、法政策を含む)に内在するイデオロギーの分析は、法システムにおけるオートポイエーシス概念の採用と相反するかどうか。法の要素の自己増殖という視点は、場合によっては法の自律性の名の下にイデオロギー的な隠蔽作用を引き起こすかもしれない。そうなるとオートポイエーシス概念の採用自体が自己実現的に法システムに再帰することになりはしないか。

 このようにオートポイエーシス概念は、法の分野に応用しようとした場合に多くの問題を含んでいる。ただ、法的な自己組織化、自己要素の内部導出、特に解釈学における新概念の開発のコード化、法実証主義的なイデオロギー排除機能など、着目するべきいくつかの提案がありえる。今後検討を進める中で、例えば罪刑プログラムの解析に一定の効力がありえるかもしれない。

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    Criminological Theory Autopoiesis and Law

    「オートポイエーシス論」の法学分野への応用

  1. 初期システム論
  2. 自己言及:論理学の立場
  3. 法の自己言及性
  4. オートポイエーシス論
  5. まとめ:法学分野でのオートポイエーシス論の可能性
  6. 引用、参考文献
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