『読売新聞・日本テレビ グループ研究』(7)

あとがき

電網木村書店 Web無料公開 2008.6.2

 拙速ながら、“読書の秋”に、どうにか間に合いそうである。御協力いただいた諸兄姉に、まず感謝したい。

 この秋を目指した理由は、いくつかある。まず第一は、いま読売新聞・日本テレビ・グループを問題にしなければ、いつ問題にできるのか、というような時期にさしかかっているということである。

 ついで、江川投手を加えた“読売”巨人軍のペナント・レース終了までに、何らかのコメントをしておきたい、という自らへの締切り設定。そして、この一一月一日に「再免許」(法的には新免許と同じ)を迎えるテレビ放送のあり方について、一石を投じたい、等々である。

 本書の構成については、今更、いいわけじみたことをいっても、仕方ないことである。できるだけ資料の活用のはばをひろげたつもりなので、興味をひかれた方は、直接当っていただければ幸いである。筆者自身も、多くの先輩にみちびかれて、資料の所在を知りえたものであり、いちいちのルートを記すわけにはいかないが、ここに謝意を表する次第である。

 また、この間、日本テレビでは、いくつかの新しい事件が表面化している。それらを本書のなかに組みこむのは、むずかしかったので、ここに簡略に報告し、資料を示しておきたい。

 ひとつは、第一章「現状」でふれた日本テレビの社員の健康状態について、ついに国会でとりあげられたことである。五月二九日の衆議院・社会労働委員会で、共産党革新共同の田中美智子議員が質間に立ち、労働大臣は、つぎのように調査を約束した。

○栗原国務大臣 ……(略)……もしこれは事実だとするならば、ずいぶん大変なことだと思いますよ。

 ですから、実態を調査いたしたいと思います。……(略)……その上で、いろいろ処置すべきことは処置しなければいけないと思っています。……(略)……
(衆議院・社会労働委員会議事録、一九七九年五月二九日、四〇頁)

 もうひとつは、江川投手とのトレードに応じた小林繁投手(阪神)の友人、日本テレビ芸能局の田中友正が、“業務ストップ”という状態になり、労使紛争にまで発展していることである。日本テレビ労組の『闘争ニュース』にも、くわしく取り上げられているが、発端は、『週刊文春』一九七九年六月一二日号の、「阪神・小林繁投手が古巣・巨人軍に突きつけた内容証明」という記事にあるようだ。田中友正は、巨人軍に約束を守れと要求する小林投手に同情し、実名を出して読売新聞・日本テレビ・グループに歯向った。それで、“業務ストップ”という珍事態となった。組合からの団体交渉での追及に対して、人事局長は、「処分ではないのだから、しばらくお休みになったらよかろう」(『闘争、ニュース』一九七九年七月四日号)、などといっている。

 読売新聞・日本テレビ・グループでは、やはり、“人権無視”が、まかりとおっているのではなかろうか。

 これには、『週刊現代』一九七九年七月一九日号も、「小林繁〔阪神〕グループと巨人軍の暗闘」の記事をのせ、「組合問題化したNTV内部」(同誌一八四頁)と報じている。

 “紛争”は、いろいろとつづくであろう。そして、テレビCMではないが、「くさいにおいは、もとからたたなければ、ダメ!」ということではないだろうか。

 しかし、その“もと”(元、源)は、どこにあるのか。これもなかなか単純な話ではない。

 それを明らかにするための七転八倒の苦しみに、いやでも付き合わざるをえなかった周囲の皆様と、錯綜する原稿の山をさばく上で、一方ならぬ御苦労を願った編集者の岡田治氏に、あらためて御礼申上げる次第である。

 一九七九年八月一五日(はからずも敗戦記念日)

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