CPR NEWS LETTER No.30 2002年2月6日発行
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2002年2月23日・監獄人権セミナー
「日本の監獄がタイヘンだ!!―過剰収容と昼夜間独居拘禁をめぐって」に参加を!
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1227日、死刑執行に抗議する!

 法務省・森山眞弓法務大臣は、2001年12月27日(仕事納めの前日)、東京拘置所と名古屋拘置所において、2名の死刑確定者の死刑を執行しました。東京拘置所の死刑囚A氏は、1996年11月に死刑が確定後、5年1ヶ月という非常に短期間のうちに執行されました。恩赦や再審の申立もしていなかったため、執行されたと思われます。A氏は66歳と高齢でしたが、日本には死刑の執行が可能な最高年齢に関する法律の規定がなく、国際的に問題視されています。名古屋拘置所の死刑囚H氏の1993年9月に出された最高裁判決には、「死刑廃止国の増加や再審無罪などの重要な変化が生じ、死刑が違憲と評価される余地は著しく増大した。死刑執行を一定期間法律で停止し、犯罪が増えるかどうかを見るなどの立法施策が考えられる」との補足意見が出されていました。被害者の遺族(被害者の兄)は、H氏との文通・面会を通してH氏の死刑執行をしないで欲しい、と表明していました。法務当局は死刑確定後、H氏の意に反し、H氏の「心情の安定」を理由にこの遺族とH氏との文通・面会を禁止しました。その後もこの遺族は2度にわたって恩赦を出願し、法務大臣に直接面会して助命嘆願をしていました。今回の執行には「今は怒りでいっぱい。国は、死刑執行でわれわれ遺族の気持ちがいやされると思っているのだろうか。生きて謝罪をする気持ちが大事なのに、執行で断ち切られた」と語っています。
 CPRは死刑執行に強く抗議するとともに、死刑制度の廃止をめざして活動して行きます。
 

過剰収容と昼夜間独居拘禁をめぐって

 法務省は2001年11月16日「犯罪白書(2001年版)」を発表した。2000年一年間に警察が認知した「刑法犯」(刑法やその他の関連法に違反)の件数は約325万6,109件(前年比35万件・12.1%増)と過去最高を記録。罪名別では、窃盗(65.5%)、交通犯罪(25.0%)の順番で多く、全体の9割を超える。殺人、強盗などの凶悪犯の件数も前年より増加した。
 「刑法犯」の検挙率は42.7%(前年比7.9ポイント減)と戦後最低を記録。うち、業務上過失致死などの交通犯罪を除く検挙率は23.6%で、戦後最悪だった1999年をさらに10.2ポイント下回った。このうち窃盗の検挙率は19.1%と戦後最低記録を更新した。
 項目別にみると、20歳未満の少年の刑法犯の検挙人数は、最近では98年に約22万1,000人と高かったが、99年は減少し、2000年も約19万3,000人と前年比4.2%減になった。殺人で検挙された少年は前年比6人減の105人。来日外国人による刑法犯の検挙件数は約2万2,900件で、前年より約2,100件減った。
 その後、1月21日、警察庁が発表した速報値によれば、2001年の年間の交通犯罪を除く刑法犯の認知件数は273万5,612件で前年より12%増加。検挙件数は54万2,115件と6%減少、検挙率は19.8%で、年間の確定値として初めて20%を下回り、戦後最悪を更新した。
 検挙率低下の背景には、全国の警察が不祥事を連発して刷新を迫られる中で、軽微な事件まできちんと受理し、適正な処理を進めなければならなくなったこと、被害者が積極的に警察に届けるようになったことで、認知件数が大幅に増加したにもかかわらず、警察の捜査が追いつかないのが最大の要因。また、従来、窃盗犯らに余罪を上乗せすることで検挙率を「カサ上げ」することが公然と行われてきたが、こうした状況の中でそれも困難になってきたという。
 こうした最近の「厳罰化」傾向と過剰拘禁の関係について、2000年(平成12年)度の刑事事件のデータの傾向から分析しました(12ページ〜)。
 刑事施設の不足が言われる一方で、被拘禁者の社会復帰を支援し、出所させる方向での取り組みは全く不足しています。それどころか検察庁は1998年6月18日、特に「犯情が悪質」な無期懲役刑確定者の仮出獄に不許可の意見を提出するよう通達していたことが判明しました(14ページ)。
 同時に刑務所では依然として昼夜間独居拘禁(厳正独居)が多用されています。CPRは、2002年1月11日、10年以上厳正独居処遇を受けている26名の受刑者について、弁護士会に対する人権救済申立を行いました(2ページ、15ページの新聞記事参照)。
 来る2月23日(土)、こうした日本の監獄の現状について考える監獄人権セミナーを東京・早稲田で開催します。ぜひ多くのみなさんのご参加をお待ちしております(2ページ)。
 

オランダの刑事施設を調査・研究

 2001年9月、東京3会の拘禁施設調査委員会がオランダの刑事施設を調査しました。調査に参加した海渡雄一さんから報告します(3ページ〜)
 また、これに先立って2001年6月20日、オランダ・ナイメーヘン大学教授のペーター・タック教授による、オランダにおける被拘禁者の法的地位についての講演会が行われました。オランダの調査にも参加された水野英樹さんからご報告を頂きました(9ページ)

「CURE国際会議」報告

 2001年10月、アメリカ・ニューヨークでNGO、CUREの主催する国際会議が行われ、CPRから田鎖麻衣子さんと海渡雄一さんが参加しました。田鎖さんはその後、ワシントンDCに移動し、現地の監獄改革や死刑廃止を目的とするNGOを訪問しました。田鎖さんからの報告です(10ページ〜)

無期懲役懲役囚の仮出獄を検察が制限

 最高検察庁が1998年、「特に犯情悪質等の無期懲役確定者に対する刑の執行指揮及びそれらの者の仮出獄に対する検察官の意見をより適正にする方策について」と題する依命通達を出していたことが判明した。

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