その他のニュース
 

監獄人権センター事務所移転のお知らせ

 2002年7月頃に福島武司法律事務所が遠方に移転するため、8月1日以降、監獄人権センターの連絡先が変わります(同事務所を離れます)。
 新しい連絡先は、弁護士田鎖麻衣子さんの事務所に置かせていただくことになりました。同時期に田鎖弁護士の事務所も移転する予定ですので、移転先が決定次第、改めて告知いたします。
 郵便物、電話・Faxなどは転送の手続きをとります。御迷惑をおかけいたしますが、予め御承知おき下さい。
 

東京拘置所の医療過誤で提訴

 東京拘置所が脳こうそくの治療を怠ったため、重度の障害が残ったなどとして、男性被告人(52才)と父親が2001年10月23日、国を相手に計5000万円の賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。男性は2001年4月1日朝、拘置所の独房で倒れているのを発見され、拘置所の担当医は脳卒中の疑いがあると診断した。しかし、翌日午後3時すぎ午後まで専門病院に運ばなかったため、治療が遅れ、半身まひの障害が残った。同被告は病院に搬送後、同月4日に拘置が停止されるまで手錠を掛けられていたと主張している。男性は現在も意識障害が残り入院中。このため公判手続きは停止している。

死刑文書の保存期間を短縮、書類廃棄

 法務省が2000年、情報公開法の施行前に「死刑に関する文書」の保存期間を昨年、永久保存から10年間の保存に変更し、89年以前の文書を廃棄していたことが朝日新聞の調べでわかった。昨年、省内の行政文書の保存規定を改正。永久保存をなくし、最高30年から1年未満までの6区分に分け、法相による死刑執行命令書や執行報告書などの文書は、10年間の保存になった。また、執行時の状況などを記す死刑執行速報も従来の5年間から3年間の保存に短縮されたという。「死刑廃止を推進する議員連盟」のメンバーが12月20日、法務省の担当者から事情を聴き、同省の対応を批判した。法務省側は「長期間の保存の必要性に乏しい」などと説明したが、議員側からは「情報公開法施行を前にした改正で、行政行為の越権だ」「執行当時の精神状態などが後から検証できなくなる」などの批判や反論の声が相次いだ。
 

更生保護策を一部改善

 法務省は2001年12月28日、刑務所を出所後身寄りのない人たちを更生保護施設に収容する「更生緊急保護」の実施期間を現在の6カ月以内から最長1年まで延長するとともに、少年院を満期退院した人も利用できるようにするなど対象者を拡大する方針を決めた。不況による就職難や少年犯罪の増加などに対応するのが狙いで、2002年の通常国会に犯罪者予防更生法や更生保護事業法などの改正案を提出する予定。最近は不況の影響や出所者の高齢化によって、就職・自立が難しくなっており、社会復帰の第一ステップである更生保護施設の役割に、これまで以上に注目が集まるようになっているという。引き受けてくれる施設には委託費を加算することも検討しており、来年度は約1億5000万円を計上している。法務省の統計によると、96年に満期釈放された人のうち51%が、00年末までに再び刑務所に戻ってきているという。
 

笠松刑務所で受刑者の不審死事件

 岐阜県笠松町の笠松刑務所(女子刑務所、久本直所長)は1月2日、窃盗罪で懲役1年10月の判決を受け、2001年3月から服役中の女性受刑者(52才)が独房内で倒れているのが見つかり、病院に運んだが死亡した、と発表した。同刑務所によると、1月1日の夕食は午後4時半ごろだったが、午後8時ごろ、この女性が独房内で食べ物を口にほおばったまま歩き回っているのを巡回中の看守が見つけ、「もう寝なさい」と声をかけた。同25分ごろ、別の看守が独房で倒れている女性を発見、人工呼吸をした後、病院に運んだが、2日午前2時40分ごろ、死亡が確認されたという。女性は食べ物をのどに詰まらせ死亡した可能性があり、羽島署は、解剖して死因を詳しく調べる。女性には入所前から精神障害の症状があったが、刑務所側は医師の診断を基に、共同生活は無理だが、食事などの介護が必要な状態ではないと判断、医療刑務所には移さず、独房に入れていた。
 竹腰幸人・笠松刑務所総務部長は「女性は月に一回診察を受けており、これまで問題はなかった。刑務所の体制は万全だったと思うが、今回は残念な結果だった。死亡した原因が特定できれば、対応を考えたい」と話している。
 

新潟刑務所でカラ出張・旅費を不正受給

 新潟刑務所(新潟市山二ツ、平方善昭所長)の護送出張旅費の不正受給疑惑で、同刑務所を管轄する法務省東京矯正管区は11月6日までに、実態調査を開始した。それによると、2001年1〜10月の間に府中刑務所など全国の施設に受刑者らを護送する一泊二日以上の護送出張は126件。護送出張は通常2〜4人の刑務官がチームで行う。延べ380人が出張し、このうち宿泊が確認できたのは314人で、66人は日帰りをしていたにもかかわらず、宿泊費など計約68万円を不正に受け取っていたことが、2002年1月17日、判明した。同管区は不正受給した旅費を返還させるとともに、関係した職員を処分する方針。同管区は今後も1998年度までさかのぼって調査を続けるという。
 刑務官は、従来、護送のための出張で宿泊して旅費を請求する際、領収書などの証明書を提出する必要がなかった。同管区では2001年11月から、旅費請求の際に宿泊の証明書を提出させることにしている。
 

奈良少年刑務所で受刑者への暴行事件が発覚

 奈良市般若寺町の奈良少年刑務所(古川高志所長)で1998年から2000年にかけ、刑務官が「指導」を名目に受刑者に暴行を繰り返し、刑務官6人と上司の首席矯正処遇官が減給や戒告の懲戒処分を受けていたことが1月18日、共同通信社の調べで分かった。
 暴行を受けた受刑者は計13人に上り、当時の刑務所長ら幹部2人も監督責任を問われ訓告処分を受けたが、「受刑者にけがはなかった」として刑事告発は見送られた。
 刑務官6人は処遇部門に所属。規則に違反した受刑者を反省させるため暴力を振るったという。同刑務所などによると、98年10月、受刑者同士の口論を注意した刑務官(37才)は、受刑者の顔を数回たたいた上、作業に就かせず、木製の「すのこ」に正座させた。日課表には作業をしていたように虚偽の作業時間を記入した。同じ作業場の受刑者全員にも、休憩時間に黙想を強いたり、新聞を一週間読ませなかったりした。別の刑務官(29才)は、受刑者に軽微な違反があったとして、延べ3日間、新聞を読ませなかった。
 さらに98年から2000年にかけて、ほかの刑務官3人は、作業中にわき見や会話をしたなどとして受刑者計8人をたたいた。また注意された内容を否定した受刑者を蹴った刑務官(27才)もいた。暴行の事実は受刑者は「願箋(がんせん)」を利用し、別の刑務官に告発したのがきっかけで発覚した。
 奈良少年刑務所は1908年完成、約750人を収容。少年はごく少数で、大半は30歳未満の青年。古川所長は「矯正教育に携わる者の暴力などあってはならず、非常に残念。施設をあげて再発防止に取り組みたい」と話している。
 

被拘禁者の自殺が多発

@2001年11月18日、殺人未遂などの罪で懲役8年の実刑判決を受けて黒羽刑務所(栃木県)で服役中の男性受刑者(45)が、独居房の鉄格子に上着のそでを結び、首をつっていた。職員が気付いた時には意識不明で、病院に運ばれたが、翌19日未明に死亡(自殺)した。22日、判明した。同受刑者は4月下旬、さいたま市内の拘置所内でも、首つり自殺を図ったことがあったという。
A2001年11月26日午前1時50分ごろ、東京拘置所の独居房で、殺人事件で勾留中の男性被告人(64)がシーツを窓の鉄格子にかけて首をつっているのを、巡回中の職員が見つけた。男性は間もなく死亡した。同拘置所によると、房内に弁護人や拘置所、知人らにあてた4通の手書きの遺書があり、「迷惑をかけて申し訳なかった」などと書かれていた。
B2002年1月18日午後6時45分頃、千葉刑務所で巡回中の職員が、勾留中の男性被告人が独居房内の窓の鉄格子にジャージーの上着を引っかけて首をつっているのを発見。千葉市内の病院に運んだが、間もなく死亡した。1月19日に判明。遺書はなかったという。同所では1月5日にも受刑者の男性が自殺している。同刑務所の横山和義総務部長は「再発防止に全職員あげて取り組んでいただけに残念だ。今後は管理体制の強化に努めたい」と話している。
 いずれの自殺も刑確定・未決勾留直後の自殺が起こりやすい時期に生じており、カウンセリングの実施やせめて雑居にする等で未然に防止できなかったか、当局の対応については疑問と言わざるを得ない。

岡山刑務所で刑務官が救護妨害と提訴

 岡山刑務所(岡山市)で刑務作業中に小指を負傷、切断したのは刑務官が救護措置を妨害したためなどとして、誘拐罪で服役していた元受刑者(36才)が1月29日までに、国に約430万円の損害賠償を求める訴えを岡山地裁に起こした。訴状によると、元受刑者は1998年3月、木工品の加工作業中、機械に右手を挟まれたが、刑務官は証拠保全のためとして、挟まれた状態のまま写真撮影するなどしてすぐに救護しなかった。元受刑者は高熱の機械内で小指に重いやけどを負い、切断を余儀なくされたという。元受刑者は昨年八月に出所したという。
 

人権擁護法案大綱まとめる

 法務省は2002年1月30日、差別や虐待などの人権侵害の被害者を救済する「人権委員会(仮称)」を新たに、同省の外局として設置する人権擁護法案の大綱をまとめた。刑務所や入国管理施設、留置場などで起きる公権力行使による虐待など悪質なケースを「特別人権侵害」として制裁を伴う特別調査の対象とし、これらの機関に人権委の調査に協力する義務を課し、調停・仲裁、勧告や訴訟援助などで救済を図る。人権委は公正取引委員会などと同様の独立行政委員会だが、事務局は法務省人権擁護局の改組で対応するとしており、独立性については大いに疑問がある。報道被害も特別人権侵害の一つとして明記されており、言論の自由との絡みで問題を指摘する声も大きい。法案の提出時期は3月上旬、設置時期は2003年6〜7月という。
 

刑事立法研究会が公開シンポジウム開催

 刑事立法研究会は、来る2002年3月9日(土)午前10時〜午後5時、東京・法政大学ボアソナード・タワー26階で公開シンポジウム「21世紀の刑事施設―新しいグローバル・スタンダードと市民参加―」を開催する。ロッド・モーガン氏 (イングランド・ウエールズ首席保護観察査察官)、堀雄氏(元矯正局審議官)、中川邦雄氏(東京福祉大教授・元関東地方更生保護委員会委員長)らが参加、講演、パネル・ディスカッションを行う。当日資料代は500円。
 問い合わせ先;龍谷大学法学部 石塚伸一研究室
         電話 075-645-8466
 

―速報―浜田拘置支所保護房病死事件で勝訴!

 96年7月19日、当時44才の男性が、道交法違反で懲役2月の実刑が確定し浜田拘置支所(島根県浜田市殿町)に入所。翌日から幻覚症状が現れるなど情緒不安定になり、同22日に革手錠を施錠の上、コンクリートに囲まれた保護房に収容され、25日未明に脱水症状による腎不全(アルコール離脱症候群)で死亡した。同年10月、男性の遺族が損害賠償を求めて提訴した。(詳細はニュース第13号、15号参照)
 2002年1月30日、松江地裁(横山光雄裁判長)は、男性の死因について「アルコール依存症の禁断症状による体力低下に、30度近い室温での脱水症状が加わった」と認定。「より早い段階で適切な医療措置をとるなど、安全注意義務を尽くしていれば男性は死亡しなかった可能性が高い」として、遺族に逸失利益と慰謝料など計約5,230万円を支払うよう国に命じた。
 判決について、原告側は「主張がほぼ全面的に認められ、高く評価している。受刑者にも一般の人と同じレベルの医療が施されるきっかけになってほしい」と述べた。浜田拘置支所を所管する松江刑務所の松川安盛・総務部長は、「医療措置に問題があったとは思っていないが、主張が認められず残念」などと語った。
 次号に報告を掲載予定です。

2002年2月23日・監獄人権セミナー
「日本の監獄がタイヘンだ!!―過剰収容と昼夜間独居拘禁をめぐって」にぜひご参加を!