CPR NEWS LETTER No.25 2000年3月5日発行
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99年12月17日、法務省による異常な死刑執行に強く抗議する!!

12月18日、セミナー「リストラティブ・ジャスティスとはなにか」開催

「受刑者移送条約」に加盟。監獄法一部改正の動きはじまる!

99年12月27日の死刑執行に抗議する

 法務省は99年12月27日、東京拘置所と福岡拘置所で2名の死刑を執行しました。東京拘置所のSさんについてはほか3名とともに人身保護請求が、福岡拘置所のOさんについては再審請求がなされている最中の、異常な死刑執行でした。法務省はこれまで「処刑を避けたいために、再審請求が乱発されている感がある」「明らかに無意味な再審請求だと言い切れる場合には(執行を)決断することも必要だろう」としていました。CPRは、死刑執行に強く抗議するとともに、国連規約人権委員会の勧告に基づき、速やかに死刑廃止・死刑執行停止と死刑確定者処遇の抜本的改善を行うよう求めます。

監獄人権セミナー1999を開催

 99年12月18日、セミナー1999「リストラティブ・ジャスティスとはなにか」が行われました。リストラティブ・ジャスティスとは犯罪によって傷ついた個人と個人の関係や社会を、被害者と加害者の対話を通じて原状回復しようとする考え方です。99年4月にロンドンで行われたPRI会議でも議題として取り上げられていました(ニュース第23号参照)。CPRは、刑事拘禁施設の人権状況の改善だけでなく、拘禁自体の少ない、そして犯罪の少ない社会を目指すという目的を掲げています。しかし、発足して5年程で日々の活動を十分にこなすこともままならない中、こうした実践を日本で紹介し実践していくような大きな問題に取り組んでいけるのか、多くの不安を抱えています。このセミナーは、法務省が、被疑者・被告人に対する権利制限、加害者に対する厳罰を求める犯罪被害者対策立法を進める中、まず勉強してみようということで企画されました。『癒しと和解の旅 犯罪被害者と死刑囚の家族たち』(岩波書店)の著者でもあるジャーナリストの坂上香さんにアメリカでの実践を、石塚伸一さんに現在までの刑事政策と被害者救済論の歴史を紹介していただきました。さらに、少年事件弁護に多くたずさわる弁護士の山田由紀子さん、ジャーナリスト『犯罪被害者』(平凡社新書)の著者の河原理子さんにもコメントをいただきました(2ページ〜)。これらのみなさんはアメリカのNGO「アミティ」来日セミナーを準備しています。「アミティ」はラテン語で「友情・友愛」の意味。アミティの運営する犯罪者更生保護施設では、「治療共同体」の考え方に基づき、過去に犯罪を犯したという同じ問題を抱える人々が共同生活を送り、互いを理解し支え合って、封印してきた被虐待体験を見つめ直しながら自らの犯罪に向きあい、問題行動の克服を目指しています。ぜひアミティ来日セミナーにご参加下さい。(最新の情報はインターネットhttp://www.cain-j.org/Amity/でご覧下さい。)

「受刑者移送条約」に加盟。監獄法一部改正へ

 政府は「欧州評議会受刑者移送条約」に加盟する方針を決めました。来年の通常国会で条約批准承認を求め、移送の要件や手続きを定めた「外国人受刑者移送法案」(仮称)を提出、2001年夏の発効を目指す、とのことです。米国政府は99年、自国民保護の立場から、98年末で50人ほどいた米国籍受刑者の移送を強く求め、いったんは日米間協定を結ぶ方向で合意しましたが、日本政府の「他国からも移送を求める動きが予想され、多国間条約の方が利便性が高い」との判断から、同条約に加盟することにしました。条約は85年発効、米英仏など44カ国が批准しており、受刑者の移送について、(1)刑が確定している(2)残刑期が6カ月以上か不定期(3)受刑者本人と、裁判した国、母国の3者が同意(4)受刑者の犯罪が母国でも罪になる、などの条件を定めています。
 外国人受刑者の母国への移送には、出所後の円滑な社会復帰や、言葉、宗教、生活習慣の違いから発生する刑務所内でのトラブル解消が期待されています。外国人受刑者数は99年末時点で2838人で、1990年末の1380人から倍増。うち、通訳できる刑務官を配置するなど特別な処遇を受ける受刑者は、90年末の252人から、99年末には7倍近い1678人に達しています。一方、海外の日本人受刑者は98年末で約80人程度ということです。
 条約批准に伴い、「前近代的」(米国)といった批判が国際的に広がらないようにするため、法務省は1908年制定の監獄法を一部改正する方針を固め、矯正局と日弁連も受刑者処遇に関する勉強会を開くことに合意しました。急展開する監獄法改正の動きについて、CPR事務局長の海渡雄一さんから報告します。

安島死刑囚と養父母との面会訴訟で不当判決

 1994年12月に死刑が執行された安島幸雄元死刑囚(当時44歳)と養父母が「面会や文通を禁止されたのは違憲」として訴えた国賠訴訟(ニュース第2号参照)で、99年7月16日、最高裁第2小法廷(北川弘治裁判長)は上告を棄却しました。原告の安島(高安)イツ子さんから報告していただきました。

益永死刑囚の新聞投稿訴訟で反対意見

 1992年8月、東京拘置所の死刑確定囚・益永利明さんが新聞への投稿を拘置所長に不許可とされたことをめぐる訴訟で、最高裁第2小法廷は99年2月26日、上告を棄却。判決には河合伸一裁判長の「死刑囚が手紙などを出すことを、一部を除き許可しない拘置所の基準そのものの合理性を検討せずに行った今回の処分は違法」とする反対意見が付されました。海渡雄一さんから解説していただきます。

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