監獄人権センター事務局からのお知らせ


無期刑受刑者の実態が明らかに

 福島瑞穂参院議員(社民党)の「無期刑囚の執行期間及び医療体制に関する質問主意書」に対し、99年5月25日、法務省矯正局は答弁書を提出した。これによると、無期刑の受刑者は、98年末で968人。うち61〜79歳の11人が99年4月1日現在で40年以上服役し、最長は今年2月末現在で50年9カ月以上。城野医療刑務所(福岡県)に7人、八王子医療刑務所(東京都)と大阪、広島、徳島各刑務所に各1名在監、いずれも心身の病気で治療中だが病状は「心神喪失」や「著しく健康を害したとき」など、刑の執行を停止するような状態まで重くはないという。11人を含め25年以上服役しているのは計67人(99年4月1日現在)。このうち仮釈放後の身元引受人がいるのは17人にとどまっている。また、98年に仮釈放された無期刑受刑者の平均服役期間は20年10カ月、仮釈放されていない者も含め全体で平均すると、無期刑受刑者の実際の収容年数はより長期にわたる。調査結果から、無期刑が実質「終身刑」化していることが明らかになった。矯正局は病気の長期受刑者について「悔悟などの各基準以前に、仮出所が本人の改善更生に相当かどうかが問題」などとしている。

複数の拘置支所で刑務作業製品に不正な価格上乗せ

 97年4月から大牟田、田川、厳原(長崎県厳原町)の拘置支所は、福岡刑務所の受刑者が製作した革靴などの刑務作業製品を同刑務所が決めた定価で販売せず、30〜525円上乗せして売っていた。また95年1月から延岡と都城の2拘置支所でも宮崎刑務所の刑務作業製品の価格に上乗せをして売っていた。大牟田拘置支所で上乗せが発覚したため、福岡矯正管区が管内全刑務所に再調査を指示し判明した。これ以前については記録がなく不明。各拘置支所とも「来客用の茶や菓子代にあてた」と説明しているという。
 刑務作業製品は(財)矯正協会の刑務作業協力事業部から刑務所が原材料を仕入れて受刑者が製作。正規の価格は各刑務所で決まっており、売上金は同事業部にいったん送付、原材料費等を引いた残りを作業賞与金として受刑者に支払う仕組み。同年に1度内部監査が行われていたが、不正に気付かなかったという。

肝硬変の受刑者死亡事件、大阪刑務所の責任を認める

 91年10月、懲役6年の刑が確定して11月から広島刑務所に服役、92年1月に大阪刑務所に移送された受刑者(当時53歳)が、94年7月、腹痛を訴え、翌月、肝細胞がんと診断され大阪医療刑務支所に移されたが、翌月死亡した。「適切な検査と治療を受ける機会を与えられなかった」として遺族が国に1200万円の損害賠償を求めていた訴訟で、99年10月27日、大阪地裁堺支部(林醇裁判長)は、「刑務所は在監者に平均的な医療水準を満たす医療行為を施す義務を負っている」とした上で、男性は入所時、既に肝硬変を患っていたのに、刑務所側はその後、「肝疾患は治った」として肝臓について特に検査も治療もしなかったと認定、「肝硬変は肝がんを発生しやすく、自覚症状がなくても長期の経過観察が必要なのに、検査も治療もしなかった過失があった」と述べ、国に計330万円の支払いを命じた。

広島刑務所が受刑者の身体検査で人権侵害

 98年まで広島刑務所に服役していた受刑者が、97年10月、受刑者二人とともに食堂で身体検査を受けた際、検査に当たった三人の職員のうち一人から、身体的特徴について侮辱的な発言をされた。申立を受けた広島弁護士会は、99年11月19日、同刑務所が、複数の人の目に触れる状況で受刑者の身体検査をするのは人権侵害であり、検査は必要な場合に限り、医師が医務室など外部から遮断された場所で行うべきとする警告書を所長に送った。同刑務所は、医師が全受刑者の検査をする余裕がないため、緊急性のない身体検査は職員が行っているとしている。弁護士会は、調査のために別の受刑者に面会を申し込んだが拒否され人権救済活動を妨害された件で別途国家賠償を求める訴えを起こす予定。

名古屋拘置所職員の暴行に弁護士会が要望

 名古屋拘置所の職員は97年7月、入浴から戻った在監者に「検身(身体検査)だ」と言い両手を上げさせ、胸部をこぶしで突き、長さ2〜3センチの打撲傷を負わせた。また医師の診断後、診断書を求めたところ、別の職員が「それぐらいのことで(診断書を取って)告訴したら、これからもっと痛い目を見ることになる」と話した。同在監者は岐阜拘置支所にいた94年4月にも職員から平手で胸を打たれ、打撲傷を負った。名古屋弁護士会は99年12月13日、この51歳の在監者(岐阜刑務所に在監中)の人権救済申立に基づいて名古屋拘置所や岐阜拘置支所に対して、要望書を提出した。

東京拘置所「Tシャツ訴訟」一部勝訴判決確定

 福岡など全国の支援者から、死刑確定前に東京拘置所の大道寺将司・益永利明両氏へ、Tシャツや現金を差し入れようとしたが不許可とされたのは違法として、支援者・両氏が共同原告となって提起していた国賠訴訟で、福岡高裁は99年12月17日、現金の差し入れについてのみ所長の裁量権の範囲の逸脱を認めた97年3月26日の一審判決を支持する一部勝訴判決を下し、双方上告せず確定した。確定者に対する現金差し入れの実務が変更されたかどうかは現在調査中。

元受刑者社会復帰支援NPOが福岡で設立

 出獄者の社会復帰を支援しようと、市民団体「福岡更生保護援護会」(理事長・井手勝美福岡県議)の設立総会が1月15日、福岡市で開かれた。近く民間非営利法人(NPO)としての認証を福岡県に申請する。同会は「認められれば全国初の更生支援NPOとなる」としている。同会は受刑者が出所後、一時的に生活するための施設「福岡玄海寮」の建設を計画、費用の援助など、活動に対する協力を市民や企業に呼び掛ける。総会には福岡市内の司法書士、公務員、会社員らが出席。偏見に加え、不況のため就職が困難な元受刑者と協力企業をつなぐ仕組みづくりや、犯罪防止の啓もう事業に取り組むことを盛り込んだ定款を決めた。井手理事長は「今はただでさえ就職が大変。九州には元受刑者支援の施設がなく、活動を通じて施設建設のための基金づくりをしたい」と話している。

名古屋拘置所の死刑囚との面会拒否を追認する不当判決

 95年12月、死刑が執行された木村修治さん(当時45歳)の手記出版をめぐり、94年8月、菊田幸一さんと出版社は本人との打ち合わせのため名古屋拘置所を訪問したが、拘置所は面会申し込みを拒否。手記は編集上削除した部分などについて本人の完全な同意がないまま出版された。木村さん菊田さんらが国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(市村陽典裁判長)は1月28日、「死刑確定者の心情安定などの観点から、面会を拒否した所長の判断に違法な点はない。死刑確定者にも表現の自由はあるが、出版過程での制約はやむを得ない」とする請求棄却判決を下した。

広島刑務所指切断賠償裁判で国の責任一部認める判決

 1996年12月、広島刑務所で当時服役していた36歳の男性が、革などの裁断作業中に指を切断したのは、刑務所が安全性に問題がある機械を設置していたためだとして国に損害賠償を求めていた裁判で、広島地裁の山田明裁判官は2月4日、「刑務所は十分な安全管理をしていたが、通常と違う手順で操作しても作動するなど、安全性に問題のある機械を設置したことには問題があった」として国の責任を一部認め、約850万円の支払いを命ずる判決を言い渡した。

埼玉県・川越少年刑務所で受刑者不審死

 2月13日午後9時半ごろ、埼玉県の川越少年刑務所の雑居房で、寝ていた受刑者の男性(21歳。氏名不詳)がおう吐するなど苦しみ始め、同市内の病院に運ばれたが間もなく死亡した。男性は懲役1年10月の刑が確定し、99年12月に入所。健康診断などで異常はなかったという。川越署によると、外傷はなく死因は不明で、14日に司法解剖して死因を調べる。