武蔵野市土地開発公社 巨大政治犯罪 3

その仰天超々巨大政治犯罪の過去・現在・未来

「住専」そこ退け!桁違い超巨大不良資産

1998.3.23

注:武蔵野市役所の32平米の「囲い込み」武蔵野市記者クラブを含む全デスクの上に、私一人で約700枚を配布。他に市民運動関係など約2000部を配布。定期郵送購読者約 100人。のちに、このシリーズを改訂増補して、『フリージャーナル』特集号リーフレット作成。『マスコミ市民』(1996.7)掲載。


「住専」そこ退け!

「土地開発公社」の逆さ利用

 昨年末の12月20日に1996年度の政府予算案が発表されて以来、カラスの鳴かぬ日はあっても、新聞に「住専」の大見出しが踊らぬ日はないという状況が続いている。

 住宅金融専門会社の不良資産処理を目的とする「住専」予算こと、白昼公然の「税金泥棒」をめぐる政財界の騒動を報道すること自体は、大いに結構である。さらに深い追及を続けてほしい。

 だが、「住専」の当面の予算、約6850億円は、日本国民一人当たり約5500円である。この金額だけ聞いても、国民は怒っているわけだが、それ以前にも、預金利息引き下げで、1世帯約10万円の利息収入減となっている。

 さらなる問題は、バブル崩壊のツケが公共予算、つまりは庶民の懐に回されるルートは、1本だけではないということである。

 税金には、国税と地方税(都道府県税、市町村税)の2種がある。税金の前借りダミーの赤字国債と同様に、地方債や公的借用証書も乱発されている。この2種の税収入によって、国家財政と地方財政が成り立っている。しかも、地方財政の総合計は、数年前から国家財政を上回っている。バブル崩壊後の砂漠をさまよう猛獣どもが、こんなに「オイシイ」餌を見逃すわけはない

 以下、日本全国の同憂の士にケース・スタディとして、武蔵野市の場合を紹介する。

「住専」の47倍なのに報道はゼロ

 武蔵野市では、このところ急激に大量の土地を買い込んだダミー機関、「土地開発公社」の借入金が約308億円、10年間の返済予定の利息込みで約 336億円に達した。昨年度の年間予算総額、562億4千万円と比較すると、その約60%の超々巨額である。1996年度の政府予算総額、約75兆円に対する「住専」予算約6850億円の比率は、約0.9%でしかない。年度予算総額との比率で見れば、武蔵野市の方が、667倍になる。

 10年前の1986年の同公社の借入金残高は、わずか約21億円、バブル崩壊直前の1989年でも約99億円だったのだから、最近の急増ぶりは明白である。結果としてバブルに踊った金融機関の「税金泥棒」を手伝っている点では、「住専」とまったく同様である。技術的な問題は、従来のゼネコン行政による大盤振る舞いと、どこで区切るかだけである。

「公共用地の先行買収」と称して、同程度の不良資産のババ抜きを引き受ける市町村が、約20もあれば、それだけで中央政府の「住専」予算に相当する効果を発揮するわけである。

 隣接する三鷹市の場合、やはり土地開発公社の保有地のための借入金が約 170億円である。三鷹市は現在、駅前のゼネコン開発に資金を投じているから、その分を合わせて考えると、良い勝負である。三鷹市の財政課長にインタヴューしたところ、率直に「時価は半値」と認め、溜め息をついた

 手元の市民情報紙にも高槻市の実例が載っている。1992年に約20億円で「先行買収」したJR高槻駅前の土地の時価が、半分に下がった。約10億円の不良資産をどうするのかと、無所属議員が、議会で責任を追及しているという。

 武蔵野の約 336億円は、約13万1千人の市民1人当たりで、なんと約26万円、中央政府による「住専」予算の方の、一人当たり約5500円の、約47倍である。

 納税義務者数約7万6千人の一人当たりでは、約44万2千円。約6万1500の世帯別では、約54万5千円となる。

 地元の市民が急遽設置した「市民行財政懇談会」の試算によれば、地価は取得価格の約6割以下に下落している。一応の使用目的が示されている部分を除いても、約90億円は目減りしている。紛れもない不良資産なのである。

 地元有志は、登記所で1件 800円を支払って、土地開発公社が購入した土地の登記簿謄本を入手した。その数十件をザッと見たところ、約半分が金融担保付きか、大蔵省が相続税代わりに差し押さえた物件だった。不動産業者の話では、明らかに平均値を大幅に上回る異常な状態である。金融機関と当局が誰かを通して市に押し付けたことは、一目瞭然なのだ。

 この借入金増大の件は、昨年春の統一地方選挙で市長と市議の改選が行われた際にも、最大の焦点になっていた。現武蔵野市長は、からくも再選されたが、この件では弁明に終始し、前回の約3万から約2万へと票を減らした。議会でも、昨年3月の予算委員会と11月の決算委員会で、この件の質疑応答に従来の数倍の時間が費やされた。

 にもかかわらず、なぜか、マスメディア報道はゼロなのである。記者が知らないはずはない。マスメディアといったところで、テレヴィはお粗末の極だが、武蔵野市には、すべての在京大手新聞社の支局がある。市役所内には約32平米の記者クラブが設置されている。それなのに、なぜ、大手紙の「武蔵野」頁のベタ記事にもならないのだろうか。

「住専」はスケープゴートか?

 問題の根は非常に深いのである。なぜなら日本のマスメディアは、この「土地売買疑惑」の前段、地方自治体のゼネコン行政をも、ほとんど批判していなかったからである。

 バブル経済の時代にも、ゼネコン行政が、地方自治体の予算を食い荒らしてきた。自民・公明・民社の推薦で現在四期目、次の目標は衆議院という噂の武蔵野市長、土屋正忠の市政は、ゼネコン行政の典型である。

 地方自治体を統括する中央官庁、自治省についても、人員は少ないが取り扱う予算は最高などと評されている。戦前の内務省は、現在の自治省のほかに、警察庁、消防庁、厚生省、労働省、建設省などを含み、全国の知事と高級官僚の任命権まで握っていた。元内務省・警察官僚出身の中曽根康弘が首相にのし上がった時期には、旧内務官僚閥の復活が話題になった。市町村段階から「塵も積もれば山となる」方式でゼネコン利権をむさぼる保守政治は、今に始まったことではない。田中角栄や金丸信らの利権政治も、地方財政の支配に底力を発揮していた。

 ところが、日本独特のガリヴァー型発達を遂げたマスメディアは、昔から中央政治ベッタリで、地方政治の解明を怠ってきた。地方紙も、戦前の一県一紙政策があとを引き、地域独占、体制ベッタリである。最近の目立った実例は、阪神大震災の地元、神戸新聞である。簡単にいえば、ゼネコン行政推進紙でしかなかった。つまりは、あの大地震の天災の被害を拡大した人災の戦犯である。どれもこれも、いざという時に市民が当てにできるメディアではない。

「住専」報道の一方で、東京都の場合には、3つの信用組合のバブル経営破綻のツケ回し問題が、世間の表面から消えてしまった。このままの報道状況だと、いつもの伝で、「住専」だけがスケープゴートになりかねない。上っ面だけの下っ端戦犯シッポ切りで終り、弱気な日本国民は、懐が空のまま、無理やりに溜飲を下げさせられることだろう。

「闇将軍」創設の「打ち出の小槌」

「住専」報道だって、予算案の「発表」があったから、マスメディアが慌てて泥縄式の底の浅い報道を始めたのが実情である。しかも、あのヤクザがらみの「税金泥棒」は、あまりにも露骨な予算からの直接の強奪だから、批判しないわけにはいかないだろう。

 ところが、「土地開発公社」というダミーが介在すると、それだけで「二枚舌」がなめらかにすべり、メディアへの目眩ましが成功する。

「代替地」とか、使用目的を特定しない「諸用地」の名目で土地を買って、しばらく保有している場合、市議会に上程する予算の表面には、当面の利子補給分しか現われない仕組みなのだ。

 この方式は武蔵野市の専売特許ではない。日本列島改造論のバブル大先輩、田中角栄首相時代の1972年に制定された「公有地の拡大の推進に関する法律」にもとづく設置だから、ほとんどの主要地方自治体が行っているはずである。簡単にいうと、ダミーの公社に土地を借金で先買いさせて、その後に、年度予算で落とすのである。この方式は、バブル崩壊以前には、それなりに通用した。早めに土地を取得しておいた方が、安くついたからだ。武蔵野市議会が1974年に決議した「武蔵野市土地開発公社設立の主旨」にも、「地価は年々高騰をつづけている」という基本条件が明記されている。

 もちろん、この方式こそが、「闇将軍」こと、田中角栄が先頭に立って推進した「日本列島改造計画」の、「打ち出の小槌」の一つであった。簡単にいえば」「借金経済」でしかないのだが、右肩上がりのバブル経済が演出されている期間には、魔法のような効果を発揮した。だが、現実は「おとぎ話」ではない。根本的には、不換紙幣の増刷による国家規模の、「金融詐欺」の一環にすぎなかったのである。

「闇将軍」とその弟子たちが、得意になって「打ち出の小槌」を振る度に、地面の裏側の地獄の帳簿には、そのツケが加算されていたのである。バブル、または「金融詐欺」のツケは、なぜか、「闇将軍」の死と隣り合わせで、ドカンと回ってきた。閻魔大王が、エイッとばかりにヤットコで、「闇将軍」の二枚舌をひっこ抜いたからかもしれない。

バブル崩壊で狂ったダミーの逆利用

 現時点から逆に見ると、「地価高騰」の大前提が崩れたのだから、土地開発公社方式は無意味となっている。当局者も内々には、その事実を認めている。

 ところが、最近の武蔵野市の場合、バブルが崩壊して、土地の値段がドンドン下がり始めていたのに、それまで以上にガンガン借金して「先行取得」し、「代替地」の名目の保有土地を急増させたのである。私の計算の約336億円の内訳は、昨年3月現在の残高、約 308億円と、以後10年間にわたる返済計画中の予定利息、約28億円である。

 財政課長にインタヴューすると、利息はプライム・レイトで、現在は1.925%である。まずはこれだけでも、日銀から0.5%の超低金利で借りる銀行を1.4%分は潤す仕掛けである。これまでの利率の最高記録は8.3%である。景気が回復して利率が上がれば、返済利息はウナギ昇りとなる。武蔵野市民は、確実に、約336億円以上をむしり取られ、銀行の方は、これも確実に、約28億円以上の利息を稼ぐことになる。

 さて、その羨ましい銀行だが、武蔵野市の土地開発公社の借金は、すべて三菱銀行からである。議会消息筋は、土屋市長が分譲マンションを購入したときのローン先も、三菱銀行だったと匂わせるが、この関係は逆である。市長本人にもインヴューして事実関係を確かめたが、武蔵野市が三菱銀行を指定金融機関にしていたのは、土屋市長就任以前からである。市長以下の給料は、すべて三菱経由で支給されているから、勢い、三菱を利用する職員が多くなる仕掛けである。

 因みに、東京都の指定金融機関も、三菱銀行である。武蔵野市に隣接する三鷹市の場合は、富士銀行である。武蔵野市でも三鷹市でも、指定金融機関の入札などはしていないし、金融機関同士の出し抜き合いも起きていない。指定金融機関を問題にするのなら、もっとさかのぼって、大手金融機関の談合による歴史的な、地方自治体の縄張り協定を暴く必要がある。

 因みに昨年の9月決算で、都銀11行の業務利益は合計約1兆9千億円の「過去最高」を記録した。その一方で、すでに指摘したように、庶民の側は預金利息引き下げで、1世帯約10万円の利息収入減となっている。それに加えて、武蔵野市民は今後10年間、三菱銀行への返済義務を押し付けられるのだ。しかも、その内の約半分が不良資産と利息分だと思い至れば、はらわたが煮えくりかえる。告白すれば、わたしは武蔵野市民である。

「5年先の新聞が…」とトボケ答弁

「平成5[1993]年に買っております。[中略]5年先の新聞が見れたらば買わなかったかもしれません」

 昨年11月の市議会決算委員会の席上、野党委員が個別の土地を指摘して質問した際、土屋市長は、以上のような答弁でトボケ通した。答弁の続きで、もう一度、「5年先の新聞が見れるんなら話は別ですけれども」と繰り返している。

 わたしとのインタヴューでも、いつもの癖で、手を振り回しながら、いかにも嬉しそうな表情を作り、「議会でも、三年先の新聞が見れたらば、といった」というから、わたしはついつい、「いや、土屋さん、議事録で確認しましたが、あなたは2度も、″5年先の新聞″といってますよ」と、話の腰を折ってしまった。土屋市長は、一瞬、ギョッとなってシラケタ顔をしたが、数字のいい加減さは、その場での思い付きだったせいかもしれない。ともかくよほど、この台詞の発明が気に入ったものと見える。

 だが、「住専」報道で世間周知のように、すでに1990年(平成2)から不動産売買の総量規制が始まっている。その時点で、バブル経済の崩壊は明らかになっていた。あとは「ババ抜きごっこ」だったのだ。

「5年先」とか「3年先」の新聞など見る必要はなかった。そこらじゅうに「地価暴落」の記事が溢れていた。土屋市長答弁は、いかにもフザケが過ぎている。普段から、この調子なのだが、この期に及んでも、野党委員が「きちんとした総括」を求めると、「別に赤軍派じゃないから総括などする必要はないんですけれども」などという、下らないダジャレまで飛ばしている。

 全体としての逃げ口上は、次の通りである。「公有地の拡大に関する法律というものは、もともと先買いをしていくと、こういう法の精神にもとづいてやっているわけですから、別に何らとりたてて反省することはないし、その時々に適切であったと、こう考えております」

 この答弁は、先に紹介した「武蔵野市土地開発公社設立の主旨」の基本条件、「地価高騰」を故意に無視している

 昨年度決算の場合、土地開発公社から市が用地を購入する費用の方は、約5億円なのに対して、主に「代替地」の名目で土地開発公社が保有するままの土地購入のために使った借入金の利息の方が、約7億円である。これだけ見ても、いかにも不均衡な決算状況である。利息の方は、現在の超低金利だから、まだ助かっているのだ。前述のように、これまでの利率の最高記録は8.3%である。この利率だったら、一年の利息は約二六億円である。

 低金利でも利息はかさむ。保有土地の時価はドンドン下がる。だから、事務局側の提案説明にも、「補正予算は諸用地の取得を控え、市税の減収に伴う財源不足を補うために減額した」とある。つまり、武蔵野市の財政は、右肩上がりから右肩下がりに転じている。人口も減少し続けている。土地開発公社保有の「代替地」や「諸用地」を、買い取る余裕がなくなっているのだ。

 土屋市長をこのまま、衆議院に逃げ込ませるわけにはいかない。不良資産処理の責任を取ってもらわなければならない。指定金融機関の三菱銀行にも、責任の一端がある。市民有志は、支払い拒否、監査請求、弁済請求などの訴訟を研究中である。

注:現在係争中の訴訟については、別途、入力準備中の「武蔵野市土地開発公社情報公開裁判」の項を参照されたい。


4. 土地開発公社年度別取得状況
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