武蔵野市土地開発公社 巨大政治犯罪 2

その仰天超々巨大政治犯罪の過去・現在・未来

「国(自治省)ぐるみ「議会制民主主義」形骸化詐欺

1998.3.23

“実質違法”条例の仰天政治犯罪

“ゼニゲバ土遁の術”

『中央情報』《土地開発公社“先買い”保有土地による地方財政浸食問題》第3弾
 “ブラックホール”の実態に怒る武蔵野市民有志が、自治省をも相手取る国ぐるみ“実質違法”行為追及へ/議会の「権限」(自治法)を犯す時代遅れ条例の改正要求

市長は「考えていない」の1行答弁のみ

 本誌1947号(1997.6.10)、1950号(1997.7.25)既報、《土地開発公社“先買い”保有土地による地方財政浸食問題》は、全国初の土地開発公社情報公開から発展し、さらには、この問題に関する国ぐるみの巨大な疑惑の仕組みに迫る訴訟を念頭に置く新たな追及へと向かっている。

 さる9月8日の武蔵野市議会定例会議では、山本ひとみ議員(諸派・市民の党)が、既報の情報公開裁判を踏まえて、市長に約220億円の「塩漬け」土地開発公社保有土地等の実情説明を求めると同時に、情報公開を妨げてきた主要な原因として市条例の問題点を指摘し、改正を求めた。

 この「議会の議決に付すべき財産の取得または処分に関する条例」の存在と問題点は、「武蔵野市土地開発公社情報公開裁判」の提訴と同時に、記者会見や集会ですでに指摘されていたものであるが、自治法第2節「権限」または[議決事件]の第96条に呼応する政令、自治法施行令第121条2項および別表第2に基づくものであり、全国の自治体条例に共通する。

 同別表では、議決を要する「不動産若しくは動産の買入若しくは売り払い」の下限に関して、その金額を、市においては「2千万円」、町村においては「7百万円」としながら、( )内に(土地については、……)とする別途の制限を設けており、(……その面積が……市町村にあっては1件4千平方メートル以上のものに係るものに限る)としている。

 武蔵野市の条例は市内のみに適用されるものであるから、当然のことながら、「市町村にあっては」の字句はないが、それ以外は全く同じ文面である。ところが、たとえば、武蔵野市の土地開発公社が取得したまま市の予算では買い取れずに「塩漬け」「土地開発公社保有土地」のまま目下駐輪場に使用している「百億円」の三鷹駅前一等地の場合、約三千6百平方メートルでしかない。つまり、条例の「1件5千平方メートル以上のもの」には該当しないから、議決を必要としないことになる。そして事実、市の用地部長は、「条例に基づいて仕事をするのが公務員の義務だ。会に図る必要はない」と明言したのである。

 この巨大な矛盾は、条例が制定された1964年(昭39)には、ほとんどが農地だった武蔵野市が、33年後の現在、世界一の地価の東京都で特別区並の商業・住宅地へと急激な変化を遂げたために生じたものである。

 9月8日の武蔵野市議会定例会議で、山本議員は、この矛盾について、「武蔵野市に現在、5千平方メートルで2千万円の土地があるか。大変にバランスを欠く。公務員の不作為(あえて特定の行為をしないこと)により法の精神が曲げられた」と主張し、改正の意図があるかどうかを市長に質したのである。

 自治法そのものでは、「その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること」となっている。あくまでも、議決を要する「金額」の下限を定めて、議会の権限と、ひいては租税国家における代議制民主主義の根幹を守るのが主旨である。自治法施行令は、自治法の所管責任を負う自治省が定めた省令であるから、国会で制定された本法たる自治省の精神を逸脱することは許されない。

 実情に合わなくなった法令を「不作為」により改正せず、ましてや、それを根拠にして特定企業等の利益を図り、納税者に不利益をもたらした場合には、法的に「実質違法」行為と判断される。これは法律上の常識である。

 議会の傍聴に詰め掛けた市民有志は、この質問に対する市長の答弁いかにと耳を澄まして待ち構えたのであるが、日頃は必要以上に能弁な市長が、この質問に関してのみ、「条例の改正を考えていおるかということですが、改正は考えておりま……」と語尾を飲み込むようなブッキラボウな1行のみの答弁で、次の問題に移ってしまった。議会の雛段で市長の背後に控えていた用地部長が明言しているから、「考えておりません」と答えたのは確実のようであるが、傍聴席では語尾は子音のSしか聞こえなかったので、「考えております」だったのか「考えておりません」だったのか、傍聴者の間でも意見が分かれたほどの素っ気ない答弁振りだった。

 武蔵野市有志の判断では、市長は明らかに、以上のような条例の矛盾点を熟知している。しかし、自治法施行令別表に準拠していることのみを頼りにして、議論を避け、頬かむりで逃げ切ろうとしている


蒼白・直立不動の「執行権」宣言

注:上記『中央情報』記事の山本ひとみ議員の質問は、私が提供した資料[本頁の最後に収録]に基づいていた。質問の組み立て方と追い込み方については、事前に私も意見を述べておいたのだが、電話だけだったので、やはり詰め方が甘かった。「改正を考えているか」という質問は、私の意図に添うものではなかった。土屋市長の方は、議会質問主旨を前日に提出させる習慣を築いており、十分に考え抜いた上で、逃げの一手に出たと思われる。そこで、私自身が上記の集会に赴き、一応は山本議員の質問を継承する形で、上記の条例を盾に取る議会審議抜きの土地取得を「公務員の不作為による実質違法行為」ではないかと質問したところ、土屋市長は、「不作為というのは、すべきことをしないことで、私は、すべきことをしたのだから話が逆」などと屁理屈をこねながらも、ついに、「条例があるから、議会に諮る必要はない」という考えを明確にした。以下は、この状況を、まずは、1997.10.13.に行われた「武蔵野市土地開発公社情報公開裁判」の傍聴参加者に知らせるために、急遽発行開始を決意した『武蔵野市民オンブズマン』準備号に、上記『中央情報』記事の張り込みに加えて、以下のように略記したものである。

「市長と語る会」と称していても、実は、質問に答える振りをして、都合の悪い問題は避け、ほとんど市長が一人でしゃべりまくる独演会が実情。回答を引き出すためには、質問にも工夫が必要である。別途、問答を詳しく再現報道するが、以上の条例の問題点について、本紙代表が質問したところ、土屋市長は蒼白、直立不動の姿勢で叫んだ。

「政令が定める執行権の行使は市長としての義務……」

 その有様は、あたかも、戦争中に流行った漫画の「のらくら一等兵」が、こう絶叫するがごとき悲壮さであった。「天皇陛下のご命令に従い、飛んで火に入る夏の虫、……もといっ! たとえ火の中、水の中、決死の覚悟で突撃!」

参考資料


武蔵野市条例:議会の議決に付すべき契約及び財産の取得または処分に関する条例

(関係する部分のみ)

(昭和39年3月28日 条例第11号)

改正 昭和52年条例56号、昭和61年条例第20号

(この条例の趣旨)

第1条 議会の議決に付すべき契約及び財産の取得または処分に関しては、この条例の定めるところによる。

(議決に付すべき契約)

第2条 地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第96条1項第5号の規定により議会の議決に付さなければならない契約は、予定価格1億5000万円以上の工事または製造の請負とする。

(議会の議決に付すべき財産の取得または処分)

第3条 法第96条1項第5号の規定により議会の議決に付さなければならない財産の取得は、予定価格2000円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については、1件5000平米以上のものに係るものに限る。)または不動産の受益権の買入れ若しくは売払いとする。

一部改正(昭和61年条例第29号)


本情報基地管理者による解説

 後日、上記の地方自治法、自治省政令の関連条文、「別表2」を全文入力するが、それらはすべて、ほとんどの公共図書館や法律事務所が常備している法規集に載っている。

 最大の問題点は、国会で制定された本法の地方自治法第96条1項第5号の「趣旨」が、議会の権限を明記することにあり、具体的には「下限」を定めるころであるにも関わらず、内閣が発する政令にさらに後日付け加えられた「別表」によって、「土地」に関する限りでは、その下限が「5000平米」となり、その当時の時価ならば矛盾が生じなかったのであろうが、その後数十年を経て「市町村」の区切りの中でも完全に首都圏中心部に属するようになった武蔵野市などでは、土地価格の急騰により、「工事または製造」の「予定価格」とまったく懸け離れた状態になってるにもか拘らず、そのまま放置し、むしろ「土地」の「買入れ若しくは売払い」に関しては、まったく「議会の議決権」が無視される結果になっていることである。

 特に奇怪なのは、「工事または製造」の「予定価格」の方は、2度の改正により、現行「1億5000万円以上」となっているにも拘らず、( )内に「土地」を含む条文の方の「不動産若しくは動産」については「予定価格2000円以上」という別表制定当時の金額のままにしている点である。

 この状態を、数十年にわたって放置してきた関係者の腹の内は、察するに難くない。

 自称「ある時は名探偵」の本情報基地管理者としては、「不動産若しくは動産」の方の金額をいじれば、同じ項目の中の( )内もいじらないわけにはいかない。だから、そのまま、そっと神棚に上げて、愚かな国民が気付かないように拝み続けてきたのが真相だと、かく断定する。

 だまされる方も自慢できたものではない。問題は、むしろ、与党よりも野党の評価にある。事実、一般国民、市民どころか、国会議員を抱える「中央」政党を誇示するような「政党」、つまりは政治商売の専門家を自称し、あくせく働かざるを得ない庶民の貧しい懐の中から活動資金を出させ、専従を多数抱える野党ですらが、その「政党」所属の議員が「清き一票」の委嘱を受けた「議決権」を不当に奪われ続けているにも拘らず、武蔵野市の場合は目の前で、たったの4年間に約500億円もの基金、積立金、借金が、実質的に市長の一存で土地取得に投入され続けていることは明々白々だったにも拘らず、この摩訶不思議な「指定金融機関の打ち出の小槌」条例について何も調べもせず、ただただ指をくわえて眺めていただけなのである。

 ああ、かくて、法治国ニッポンは、ジャイアンツとともに永遠なのだ!

 ズ、ズン!


3. 桁違い超巨大不良資産
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