電子手紙の送信日付け順・注釈付き一般公開文書館 2001年3月

戦後平和運動のひよわさの典型として出版労連のトンデモ教科書批判の短絡を批判

送信日時 : 2001年 3月 12日 月曜日 10:55 AM

件名 : 出版労連1271号トンデモ教科書批判の短絡を批判

 表題の囲み記事は、皆様の手許にも届いているはずなので、内容はいちいち繰り返しません。以下、その短絡振りを簡略に批判します。

 私には、自由主義史観の連中に塩を送る気は、さらさらありませんし、私自身が、すでに何冊かの読売新聞批判の拙著の中で、一般には知られていない日本の戦争犯罪のいくつかを暴いています。彼らが、「大東亜戦争」を擁護することを許してはならないとも考えます。しかし、贔屓の引き倒しという言葉があります。「日本はアメリカなどによって開戦に追い込まれた」という部分だけを捉えて、いきなり、「日本は悪くない」と主張しているのだと決めつけるような文脈は、いただけません

 私がこれから批判する短絡思考の基本的な問題点は、この筆者の属する「教科書対策部」だけにではなくて、出版労連だけにでもなくて、日本の戦後の平和運動全体の理論的なひよわさにあると、私は考えています。戦後にGHQが、NHKなどを握り、日本の旧軍部批判を展開しましたが、そこには、傀儡として利用中の天皇への批判が欠けていただけでなく、副作用として、アメリカ民主主義礼讃の嘘八百宣伝が仕込まれていました。

 その一方で、1969年前後に突発した日本の反米闘争には、理論的な蓄積と継続性が欠けているのですが、その理由は、もともと、その闘争自体が、自らの努力による世界情勢の分析から出ていたのではなくて、主に、ソ連に追随する勢力のそのまた勢力争いの実情を呈していたからです。日本の戦後の反米闘争には、冷戦構造の中での米国批判という視点しかなかったと言っても、差し支えのない状況でした。アメリカの歴史的な位置付けが出来ていないのです。

 その結果の象徴的な表れが、湾岸戦争の前の危機状況における米軍の大量送り込みに際して、日本共産党が、というよりも、もともと理論家でもなく、すでに惚け老人でしかなかったミヤケンが、アメリカ帝国主義という言葉の使用さえ押し止めたという唖然たる事実です。私は、これに呆れて、『湾岸報道に偽りあり』を出しました。

 つい最近にも明らかになった「真珠湾攻撃」の物的証拠出現問題でも、いわゆる左翼は、沈黙しています。攻撃計画を知りつつ現地司令官には知らせずに誘い込んだローズヴェルトは、議会では敵の共和党の有力議員に、「一週間以内に日本軍が真珠湾を攻撃する」という主旨の手紙を送っていたのです。

 このような歴史的な事実を、どう解釈するのかが、一番の鍵なのです。戦後のGHQ宣伝の影響から抜け切れない自称平和主義者たちは、当時の国際情勢全体の中で、アメリカの方が日本よりも上手の帝国主義国だったという基本的な事実を、曖昧にしているのです。その弱点を、自由主義史観の連中が突いているのです。帝国主義国同士は、いわゆる悪党の仲間割れを起こしては、またまた、実利に基づいて、新たな連合関係を組み直すのですから、まとめて全部を批判しなければならないのです。

 つまり、帝国主義戦争の時代を、真正面から、正確な事実に基づいて、分析し直す必要があるのですが、私の知る限りでは、欧米の世界侵略の歴史を、まともに勉強した人は、非常に少ないのです。その理由は、学校の教科書では、微温的な表現しかしていないからです。私は、自由主義史観の連中とは全く違う角度から、現在の日本の教科書に強い批判を抱いているのです。短絡的な「教科書を守れ!」には、「(象徴天皇制を含む)憲法を守れ!」と同様に、負け犬の遠吠えの感があります。もっと総合的な歴史認識の確立に向けての議論を望みます。


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