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女性2000年会議、日本NGOレポート
by NGOレポートを作る会, 1999.08.13
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L 女児

1. 革新的な政策、プログラム、プロジェクト及び最良の実践

  1. 児童買春に対する対策の強化

2. 直面した障害及びその克服

  1. 女性のための国内行動計画に独立した女児のための項を設ける必要性
  2. 性教育
  3. 科学・技術と女児
  4. 児童虐待
  5. コミック・ポルノ
  6. 拒食症

3. 将来へのヴィジョン

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1. 革新的な政策、プログラム、プロジェクト及び最良の実践

(1)児童買春に対する対策の強化

 「北京行動綱領」パラグラフ283(d)に応えて、1999年5月18日に、「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案」が第145国会で可決成立した。この法律は、1999年11月に施行された。これは、18歳未満の者を対象にした買春を禁止するのみならず、児童を対象としたポルノ写真・ヴィデオ・インターネットの画像の製造・販売・配布・輸出をも禁止するものである。

 この法律は、海外における買春行為にも適用され、犠牲者が証拠の重荷を背負うことなく、すべての違反者が起訴される。現行の刑法の下では、児童買春の犠牲者は、6ヵ月以内に強姦または猥褻行為の刑事告訴をしなければならないことになっており、海外の犠牲者が裁判を起こすことは困難である。新しい法律は、他のアジア諸国に「子ども買春」ツアーに出掛ける日本人を処罰するための法的根拠となるものである。

 この法律は、金品を与えて18歳未満の者と性行為、または性的行為をする者も処罰する。従って、「テレフォン・クラブ」を利用した中学生・高校生などの若い少女との援助交際を処罰する法的根拠となる。

 違反した者は、未成年を対象とした買春に対しては、3年以下の懲役、または百万円以下の罰金、、児童ポルノの製造・販売・配布・輸出に対しては、3年以下の懲役、または3百万円以下の罰金に処せられる。

 事件に関係する児童の権利を保護するために、この法律はメディアがその氏名や学校名を報道することも禁じている。

 「北京行動綱領」パラグラフ277(b)が、各国政府は教育機関及びメディアに対し、児童ポルノグラフィ及び屈辱的かつ暴力的な女児の描き方を排除する努力を奨励することと述べているにもかかわらず、この法律の1つの抜け穴は、児童を対象としたポルノの単純所持を犯罪としていないことである。

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2. 直面した障害及びその克服

(1)女性のための国内行動計画に独立した女児のための項を設ける必要性

 「男女共同参画2000年プラン」には、女児のための独立した項がない。従って、女児の問題は常に女性問題または子どもの問題の中に吸収されてしまう。このために、女児に対する否定的な習慣的態度や幼稚園・保育園を含む学校における差別の解消が困難になっている。例えば、教師は出席を取る際に常に男子の名前を先に呼ぶことになる男女別名簿がある。この習慣的慣行は小学校や高等学校においてはある程度改善されているが、中学校では依然として根強く残っている。この習慣的慣行は、「北京行動綱領」パラグラフ261が指摘するように、「既存の男女の不平等を強化している。」性に関係なく男女の氏名があいうえお順に並べられる男女混合名簿の採用が、幼稚園・保育園を含むあらゆる学校で採用されなければならない。同時に「北京行動綱領」パラグラフ279(e)の勧告に従って、ジェンダーに配慮した教育のための効果的な戦略を教員及び教育者に提供することが必要である。

 「北京行動綱領」パラグラフ280(d)は、スポーツ、演劇及び文化活動のような課外活動への、少女の完全かつ平等な参加を促進するよう勧告している。しかし、野球・サッカー及びその他のスポーツのような課外活動においては、中学校及び高等学校に様々な差別的慣行が存在する。こういった運動部では、少女たちはマネジャーと呼ばれてはいるが、実際にやることは訓練や試合の戦略計画ではなくて、少年のためのユニフォームの洗濯とか食事の用意などである。

 女性や女児は日本の国技である相撲の土俵に入ることが許されないし、京都の祇園祭の先頭を行く鉾に乗ることもできない。このような伝統的な差別的慣行は、「北京行動綱領」パラグラフ276(a)及び(b)の勧告に反するものである。

 女児に自尊心と自信を与え、男児に女児の人権を尊重させる(「北京行動綱領」パラグラフ278(c)参照)ために、女性のための国内行動計画に女児のための独立した項を設けることは極めて重要である。これは、「北京行動綱領」パラグラフ260が要請している、「少女に対し、あらゆるレベルの社会的、経済的、政治的及び文化的な指導的立場に積極的、効果的、かつ少年と平等に参加する準備をさせるための率先的措置」の1つである。

 女児のための独立した項があるということは、政府が子どもに関する性別・年齢別データを収集し、現在欠如している女児の状況に関する調査・研究を行い、その結果を女児の地位向上のための政策の策定、プログラム及び意思決定に取り入れることを奨励することである。分類されたデータの収集と調査・研究は、「北京行動綱領」パラグラフ274(g)及び275で要請されているところである。これは、家庭及び地域社会内部におけるとともに、あらゆるレベルの政策決定者、立案者、管理者、及び実施者の間に、少女の不利な状況に関する認識を生み出すこと(「北京行動綱領」パラグラフ278(a)参照)に寄与するものである。

 これは、最近とみに増加しつつある麻薬の乱用に繋がる女児の自己イメージの低さを改善することにもなる。

(2)性教育

 「北京行動綱領」パラグラフ268は、「ごく若い年齢での出産は、妊娠中及び分娩時に余病を併発し、平均よりはるかに高い妊産婦の死亡の危険を伴う」と述べている。1995年の日本における10代の少女の人口妊娠中絶届出数は26,117件であった。この数字は、かなり多くの無届の中絶があるために、実際よりも少ない。20歳未満という年齢層の中絶の実数は、36,564であったと推測される。「北京行動綱領」のパラグラフ267が、国際人口開発会議の「行動計画」を引用して述べているように、10代の少女の望まない妊娠を防ぐために、学校、家庭、メディアにおける性教育は必要欠くべからざるものである。思春期の若者のための性教育とカウンセリングの必要性は、「北京行動綱領」パラグラフ281(e)及び(g)でも強調されているところである。

 性教育は、あらゆるレベルの学校教育のカリキュラムに含まれるべきであり、教員はこの領域で適切な訓練を受けなければならない(「北京行動綱領」パラグラフ279(e)参照)。しかし、文部省の取り組みは、「寝た子を起こすようなことはしない方がいい」というものであり、学校長は未だにこの問題については大変に保守的である。

 両親も、若者の性と生殖に関する健康教育において、少女と少年の権利を実現するための情報の提供について教育され、これに関わるらなければならない。メディアは、「北京行動綱領」パラグラフ262が指摘しているように、リプロダクティヴ・ヘルスについて未だに誤った情報を与え続けている。男女平等と責任ある性行動を推進し、望まない妊娠を防ぐような性教育が、学校、家庭、またはメディアにおいて推進されなればならない。

 日本においては、性教育はほとんど生殖の生理学にのみ集中している。少年と少女は別々のクラスで性教育を受ける場合が多く、時には少年は全く出席しなくてもよいことになっている。しかし、少年が女性の健康を増進し、望まない妊娠、母親の死亡、HIV/AIDSを含む性行為感染症を防ぐに当たっての自分の役割と責任についての理解を深めるために、「北京行動綱領」パラグラフ278(c)が要請しているように、少年を教育することが極めて重要である。

(3) 科学・技術と女児

 科学や技術を専攻する女子大学生の割合は、男子大学生に比して極めて低い。例えば、1996年に理学部の女子学生の割合は24.4%であり、社会科学部では22.7%であった。工学部となると僅か8%であった。こういった分野ににおける男女格差は、女児の育てられ方によるものである。これは、1995年に社団法人大学婦人協会が行ったアンケート調査で証明された。

 この調査は、理科に興味を抱かせる要因がいくつかあることを示している。最も重要な要因は授業と実験である。科学や技術を専攻している男子も女子もこれを示しているが、女子の方がより明確にこれを示している。生徒は、中学生の頃に将来の職業について考え始める。理科に興味を起こさせるもう1つの要因は、女子にのみ見られるもので、それは小学校低学年における家族の影響と、中学・高校における教員の影響である。家族と教員は、少女に理科に対する興味を抱かせる際に重要な役割を果たす。

 専攻分野の決定に関して、家族と高校の担任教員の影響には、男女にかなりの差があることがわかった。調査された女子全員の約80%が、大学の進路を決定する前に親や担任の教員に相談していたが、男子は55%が相談し、あとは自分で進路を決めていた。男子にとっては、父親も母親も等しく重要な助言者である。しかし女子にとっては、母親が父親の1.4倍も進路の決定に関わっている。父親は少年にとっては専攻分野の決定に関して最も影響力のある意見を述べているが、少女は母親の影響を最も強く受けている。

 科学と技術における男女差をなくすためには、教員のみならず母親も、与える玩具を含めて、女児の育て方に注意しなければならない。政府は、少女の自己イメージ及び生活を改善し、また、特に数学、科学技術のような伝統的に女性の参加が不足していた分野における仕事の機会を増大するための教科課程、教材及び教科書を開発し、採用しなければならない(「北京行動綱領」パラグラフ276(c)参照)。

(4)児童虐待

 児童虐待が発見されるのは、医師、教師、保育士、保健婦等の児童の健康に携わる大人によってである。しかし、実際には、育児の放棄によって虐待される場合も多く、悲惨な場合は死に至る事件も多くなっている。国は、保健婦の巡回や、基本的な育児知識の普及、夫の家事参加を促進するための企業指導などを早期に具体化するべきである。

 教師、父親、兄といった優位な立場にある者による近親姦を含む性虐待は、もう1つの深刻な問題である。1994年に日本性教育協会が行った調査によれば、女子高校生の約6割、女子中学生の4割がなんらかのセクハラを経験していた。この中で、わいせつ行為または性行為を強制された者は、女子高校性で7.2%、女子中学生で5%であった。性虐待は発見が難しく、特に近親姦の場合は親権が問題の効果的対処を妨げることがしばしばある。

(5)コミック・ポルノ

 児童ポルノの製造・販売・配布・輸出を禁止する新しい法律は、「児童ポルノ」からコミック・ポルノを除外している。その結果、わいせつなコミック本は、どのコンヴィニエンス・ストアでも、本屋でも駅のキオスクでも入手できるし、自動販売機でも購入できる。電車に乗れば、多くの男性が、老若を問わず、女性が見るに耐えないコミック雑誌を読んでいるところを目にする。

 新しい法律が2002年に見直される際には、コミック・ポルノやサイバー・ポルノが、子どもポルノの単純所持とともに検討されるべきである。

(6)拒食症

 現在かなりの数の少女が拒食症とその併発症である生理不順、貧血、栄養失調に罹っている。その主たる原因は、美しい少女はやせが型でほっそりしていなければならないというステレオタイプの考え方であり、これをメディアが煽っている。美しくなりたいとの望みから整形外科手術に訴える少女もいる。これは少女の深刻な健康問題である。見目より心に価値をおくような社会の態度の変革が期待される。

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3. 将来へのヴィジョン

 女児の問題には様々な克服し難い障害がある。これらに効果的に対処するためには、女児に関する政策や計画の策定に少女を何らかの形で参画せしめる必要がある。

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