9.11事件7周年を迎えて
「対テロ戦争」を名目とした破壊と殺りくをやめよ!
ペシャワール会・伊藤さん事件を真剣に受け止め、今すぐイラク・アフガニスタンから自衛隊を撤退させるべき


[1]イラク・アフガンの泥沼化と金融・経済危機で迎えた7周年

アフガニスタンでの外国軍兵士の死者数

(1)9.11事件から7年が経った。ブッシュとネオコンによって作られた壮大な虚構である「対テロ戦争」が21世紀初頭の7年にも渡って続けられ、その出口さえ見えず、ますます泥沼化の様相を呈している。イラク・アフガン戦争での米兵の戦死者は4700人を超え、9.11事件での犠牲者を大きく上回っている。戦場での市民の犠牲は遙かに膨大である。イラクでは100万人を越える市民が死亡した。アフガニスタンでも数千から数万もの市民が犠牲になっている。
「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その5)イラク戦争の民間人犠牲者が100万人を超える! (署名事務局)
※iCasualties.org
http://icasualties.org/oif/
http://www.icasualties.org/oef/
※慶応大学経済学部 延近研究会 共同研究 「イラク戦争を考える」:
http://www.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty_A.htm
http://www.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty.htm
アフガニスタンで何人の人々を殺したのか(署名事務局)

 米兵の派遣と戦場での被害だけではない。アメリカ国内での国民監視体制と治安活動の強化、移民に対する差別と弾圧、全世界に張り巡らした監視システムとイスラム系市民の不法拉致・連行、「テロリスト」でっち上げとグァンタナモ、アブグレイブの拷問・陵辱、等々。米ではこの7月10日にも、「テロ対策」での情報機関の権限を拡大し、令状無しの盗聴を認める外国情報監視法改悪案が可決されている。「対テロ」を名目にした、監視体制の強化と人種差別・排外主義は内外でますますエスカレートしている。
※米上院、テロ対策で盗聴認める法案を可決(AFP)
http://www.afpbb.com/article/politics/2416076/3113993

(2)商業メディアは9.11事件7周年にあたり、「対テロ」の主戦場は再びイラクからアフガニスタンへ移った、タリバンが復活している、イラクの治安は回復した等々、と何の疑問も挟まずに無責任な情報を垂れ流している。いつからタリバンは「テロリスト」になったのか。そもそもアフガニスタン攻撃の大義は「国際テロネットワーク・アルカイダの首謀オサマビンラディン師をかくまった罪」であったのではなかったか。「アルカイダ」はどうなったのか。「ビンラディン」はどうなったのか。イラク戦争の大義=「大量破壊兵器」はどうなったのか。「対テロ戦争」は、おびただしい数の無実の市民を殺害しただけではないか。
 そもそも「対テロ戦争」の発端とも言うべき9.11事件に対しては、陰謀説も含めて疑問が根強く存在し、米政府はまともな公表を行っていない。
 これらの問題をメディアは徹底して追及すべきである。
※September 11, 2001: 21 Reasons to Question the Official Story about 9/11(Globalresearch)
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=10145
「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その6)ネオコンが作り上げた、壮大な虚構  国際テロネットワーク、アル・カイダは存在しない(署名事務局)

 イラク戦争は14万もの米兵を未だに貼り付け、5年も戦争と占領支配が続いている。イラクでは米軍に対する攻撃が若干低下したものの、治安の安定、政権の安定、撤退の見通しを未だに立てることが出来ない。アフガニスタンでは7年間も戦争が続いている。未だにカルザイ政権は米と西側の傀儡政権にすぎず、カブール周辺にしか影響力を持てない。アフガン軍は単独では機能せず、米軍やISAFが前面にでて戦闘、掃討を行っている。米軍とISAFは点を支配するにすぎず、数千や1万兵力を増強しても、タリバンの攻勢を阻止することも押さえ込むことも出来ない。地上戦力の圧倒的不足を空からの攻撃でカバーすることは、無差別の空爆につながり、住民の反発と怒りを買うばかりである。イラクでは政府も米軍もいつまでも治安を回復できず、石油生産を始めインフラや民政関係部門の復興がほとんど進んでいない。アフガンでは何の力もないカルザイ政権は何年間も続く深刻な干ばつに全く手を打てず、人民の生活は破壊され、難民化を余儀なくされるだけである。対テロ戦争そのものも、復興も、何の展望もあられない中で、米軍はもがき苦しみ、一層深みにはまり続けるしかない。
シリーズ[シリーズ米軍の危機](署名事務局)
シリーズ〈マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実〉(署名事務局)

(3)9月15日、実に65兆円もの負債をかかえ、米証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻した。株式市場は大混乱している。昨夏のサブプライム危機をきっかけとした金融危機の爆発、さらにはアメリカの実体経済が後退局面に入る中、ブッシュ政権が連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社( フレディマック)への2000億ドルもの公的資金投入を決めた矢先に起こった米金融史上最大の破綻である。
 未曾有の金融・経済危機、財政危機が「ドル帝国」を根底から揺さぶろうとしている。イラク、アフガニスタン戦争にはこれまでに8000億ドルもの予算がつぎ込まれたが、様々な社会的経費を含めれば今後3兆ドルを突破するとの試算もあり、長期にわたって「戦争国家」をむしばむのは確実である。アメリカにはイラク・アフガン戦争を闘う余力がなくなっている。一握りのグローバル資本が全世界の富を収奪して巨万の富を集中し、途上国人民を貧困にたたき落とし、自国民を切り捨ててきたことへのしっぺ返しがいよいよ始まろうとしているのだ。
「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その10)膨らむイラク・アフガン戦争の巨額戦費。サブプライム危機、景気後退への突入の中でますます人民生活を圧迫(署名事務局)

 だが、次期大統領候補のオバマにしてもマケインにしても、「対テロ戦争」の遂行という点では一致している。決して放棄しようとはしない。私たちは、改めて、「対テロ戦争」の虚構、大義のない戦争、米帝と西側帝国主義による石油資源と中東覇権のための戦争、帝国主義的略奪戦争の犯罪性を真正面から追及しなければならない。イラク・アフガンでの戦争の中止と即時の撤退を要求する。アフガン戦争への自衛隊の協力、新テロ特措法を廃止し、今すぐインド洋から自衛隊を撤収させるよう要求する。


[2]度を超すアフガニスタンでの無差別殺りく

(1)米軍とISAF(国際治安支援部隊)の軍事行動の拡大によって、アフガニスタンにおける民間人の犠牲は急増している。国連の調査でも、戦争の犠牲になったアフガンの民間人は、今年前半だけで約700人にのぼっている。直近でも、7月4日には東部ヌリスタン州で、米軍ヘリが民間人の乗った車両2台を空爆し22人が死亡した。7月6日は、結婚式披露宴に爆撃を加え新婦を含む47人が犠牲になった。ほとんどが女性と子どもだった。結婚式に対する爆撃は、アフガン戦争の開戦以来何度も行われてきた悲劇である。きらびやかな服装で人々が集まり祝砲を挙げる披露宴を米軍は恰好の標的として爆撃を加えているのである。
 ISAFは8月11日、南部オルズガン州で、空爆によって子ども数人を含む民間人8人を殺害した。8月22日には、ヘラート州で90人が米軍機による「誤爆」によって犠牲となった。ほとんどが子どもと女性だった。ISAFの独軍兵が、8月28日、北部クンドゥスの検問所でワゴン車を銃撃し、女性1人と子ども2人を殺害した、等々。22日の事件では、子どもたちの小さな遺体が部屋に並べられ、親たちが泣き叫ぶ生々しいビデオも配信されている。この証拠映像は、当初市民の犠牲は7人と語っていた米軍が再調査に乗り出す契機となった。アフガン政府は8月31日、ヘルマンド州での軍事作戦によってわずか5日間で民間人少なくとも500人が死傷したと報じた。
 この6月と7月だけで、2006年一年間分の量を超える272トンの爆弾が使用されたという報告もある。
※Report: U.S., NATO airstrikes fuel Afghan public backlash(CNN)
http://edition.cnn.com/2008/WORLD/asiapcf/09/08/afghanistan.civilian.deaths.report/index.html?iref=mpstoryview
※結婚式空爆、23人死亡 アフガン東部(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/080706/asi0807062202004-n1.htm
※アフガニスタンのヘラートで市民90人を殺害した米軍誤爆の新証拠映像(Youtube)
http://jp.youtube.com/watch?v=9qsDtnAdjz8
※5日間で民間人5百人死傷 アフガン、駐留部隊作戦で(山陽新聞)
http://www.sanyo.oni.co.jp/newsk/2008/08/31/20080831010006111.html

(2)アフガン政府は、これまで米軍の軍事行動を容認してきたが、反政府感情が高まるのを恐れ、多国籍軍部隊の「権限と職責の制限」や民間人への空爆の中止、不法な拘束、一方的な家宅捜索について、協定を見直しを要求するまでになっている。「対テロ戦争」とは、手当たり次第空爆を加えて一般市民を無差別に死傷させ、「家宅捜索」の名のもと、真夜中に女性や子どもに襲いかかり家屋を破壊するものでしかない。このような暴虐に民衆は米軍、ISAF、そしてそれを容認するカルザイ政権への怒りを募らせ、反米行動へと駆り立てているのである。
※ヒューマンライツウォッチが、9.11を前にして、アフガニスタンでの米・NATO軍による民間人殺りくの増大についての報告を出した。犠牲は2007年で2006年の3倍にふくれあがり、今年前半だけで少なく見積もっても540人の市民が犠牲になったと言う。この報告は、市民の犠牲を最小限に減らした軍事作戦の遂行を要求するもので、「対テロ戦争」そのものには反対しておらず、「誤爆」による反米感情の高まりを危惧するものに過ぎないが、事態の深刻さを捉えています。注目されるのは、地上軍の不足によってランダムな空爆に頼らざるを得ないという米軍の陥っている深刻な事態に言及していることである。国連特別報告官のオールストンも、NATO軍の戦術転換を要求している。
http://hrw.org/japanese/docs/2008/09/08/afghan19772.htm
http://hrw.org/reports/2008/afghanistan0908/
※Videos show dead Afghan children after US raid(ワシントンポスト)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/08/AR2008090800633.html?nav=rss_world/mideast

(3)一方で、一般市民を殺害させられた米兵らの精神疾患は深刻化している。彼らは加害者であると共に被害者である。貧困や差別に苦しむ若者が軍に入隊せざるを得ない「経済的徴兵制」のもとではますますそうである。8月、バグダッドで女性や子どもの虐殺に加わった米軍空挺師団第57部隊の兵士21人が自殺を図り、内16人が死亡するという事件が起こった。「殺人マシーン」に仕立て上げる兵士教育を受けながら、戦場で無実の市民を殺した良心の仮借に絶えられず、自殺や重いPTSDに追い込まれていくのである。
 イラク・アフガン戦争の帰還兵の自殺者は、表面的な統計でも戦場での死者数をはるかに上回った。帰還兵のホームレス問題が深刻化し、殺人、自殺、PTSD、精神障害等々が、アメリカの社会全体に重くのしかかっているのだ。
※Suicides of Iraq veterans could top combat deaths(Government Excutive.com)
http://www.govexec.com/story_page.cfm?articleid=39958&dcn=todays_most_popular
「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その9)隠された米軍犠牲者−−帰還兵の驚くべき自殺者数(署名事務局)
※16 US troops commit suicide in Iraq(アルジャジーラ)
http://english.aljazeera.com/news/newsfull.php?newid=159198
[書籍紹介]『イラク米軍脱走兵、真実の告発』
※NHKスペシャル『戦場 心の傷(1) 兵士はどう戦わされてきたか』は、軍に入った高校出の若者を「殺人マシーン」に変えていくことに米軍がいかに力を割いているのかをリポートする秀作である。フラッシュバックやパニックを引き起こす帰還兵への注意を喚起する広報ビデオの存在にも驚かされる。


[3]政府はペシャワール会・伊藤さんの事件を政治利用するな

(1)ペシャワール会・伊藤さんの拉致・殺害事件は、まさにこのような中で起こった。8月27日、ぺシャワール会の伊藤和也さんの死亡が確認された。拉致が報道されてから2日、情報が二転三転したあげくの悲報であった。30日の葬儀で両親は、「志なかばで亡くなったが、本望だったと思う」「『和也は家族にとって誇り』と訴えたい」と語った。アフガニスタン民衆のために全身全霊を傾けた伊藤和也さんの死に対して、心から哀悼の意を表したい。

(2)私たちが許し難いのは、町村外相が死亡情報を受けて、インド洋での自衛隊の給油活動を継続する方針を即座に示したことだ。これに対してペシャワール会は強い違和感を表明した。中村氏は「アフガンをむしばむ暴力に殺された」と述べたうえで、「戦争と暴力主義は無知と臆病から生まれる。解決にはならない」と訴えた。
※ペシャワール会「方向が違う」=町村官房長官の給油継続発言(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008082801022
※800人伊藤さんの死悼む アフガンで葬儀 事業継続誓う(静岡新聞)
http://www.shizushin.com/news/social/shizuoka/afugan/20080912074627.htm

 伊藤さんの死亡した経緯についてははっきりしていない。伊藤さんの遺体の解剖では、左大腿部に貫通銃創2カ所、左下腿部に銃創が1カ所、計3カ所の銃撃による失血死であることが発表されている。犯人として2人が逮捕されているが、犯人が何者か、犯行の目的が何か、犯行の状況がどのようなものだったかなどもはっきりとしていない。政府軍と伊藤さんを拉致したグループとの銃撃戦に巻き込まれ失血して死亡した可能性が高い。目的が金目当てであったのか、政治目的であったのか、そもそも人質にすることが目的であったのかなどの疑問も残る。伊藤さんの拉致・殺害についてパキスタンの諜報機関の関与している疑い、アフガン政府軍の銃撃によって負傷した疑いなども報じられた。だが現時点では推測にとどまる。
※アフガン邦人殺害:「伊藤さん拉致、パキスタン黒幕」 情報機関発表、真相解明困難に(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080905ddm007040171000c.html(読売新聞)
※伊藤さん殺害状況に食い違い…アフガン内務省とタリバン関係者
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080828-OYT1T00402.htm
 ただ私たちは、第一報を外務省が掌握し、事件発覚から10時間後に「伊藤さん無事解放」の情報を流したことなど不自然な経緯に疑念を抱かざるをえない。アフガン政府軍がまるで米軍の掃討戦のような常軌を逸した強行突破作戦を行い、銃撃戦になってしまったという疑いをぬぐいきれない。人命最優先、犯人との交渉を重視した対応がとられたのか。政府は「詳しい経緯についてコメントは差し控える」として事件の経緯そのものの公表を拒否している。私たちはこの事件を巡って日本政府がとった対応も含めて全貌を明らかにすべきであると考える。

(3)いずれにしてもはっきりとしていることは、伊藤さんが、アメリカの「対テロ戦争」の犠牲者、日本の軍事的加担=自衛隊派遣の犠牲者だということである。ブッシュの対テロ戦争、対アフガン侵略戦争がなければ伊藤さんはこのような形で命を落とすことは無かっただろう。私たちは、ブッシュの侵略戦争と日本の加担に強い憤りを感じる。ペシャワール会の事件が明らかにしたことは、日本の自衛隊のインド洋派遣が、20数年にわたって現地の信頼を築いてきたNGOでさえ危険にさらす局面に入ったということである。
 それだけではない、2004年4月のNGO活動家の拉致事件についても、10月の香田さんの拉致・殺害事件についても、自衛隊の派兵が原因であったことを忘れてはならない。
小泉政権の香田さん見殺しを糾弾する!
−−事態は全く新しい段階に。彼の死は私たちに何を警告したのか−−
(署名事務局)

日本の民間NGOら解放の唯一の道−−それは自衛隊の即時撤退である(署名事務局)

 中村哲医師は、この事件について「ついにここまで来た」と無念さを表した。2001年秋、アフガン戦争支援のための自衛隊派兵が焦点になっていたとき、国会の証言で「自衛隊の派遣は百害あって一利無し」と語り、以後何度も自衛隊の派兵について問われては同じ言葉を繰り返してきた。この言葉の持つ深い意味を私たちは改めてこの事件で考えなければならない。自衛隊派兵が、現地での親日感情を阻害し反日を助長することでNGOの活動の妨げになることを恐れ、自衛隊の派兵に反対してきたのだ。
 中村氏は、昨年の秋、テロ特措法の延長が焦点化したときにも、「数百人単位でアフガン人の命が落とされている。この油の元が日本から来る」と公然と自衛艦派遣を批判していた。日本の給油活動とアフガンへの空爆との関係を明らかにし、ISAFの活動や自衛隊派兵の不当性を訴えていたのである。
「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その7)[投稿]ペシャワール会中村医師が語るアフガンの実状とテロ特措法の批判(署名事務局)

 事件は、現地情勢の悪化からペシャワール会が日本人スタッフ全員の退去を検討し始めていた矢先に起こった。伊藤さんは自分の意志で現地に残っていた。ACBAR(アフガニスタンで活動する国内外のNGOネットワーク)によると、アフガニスタンでは今年に入ってすでに19人のNGOスタッフが殺害されている。復興利権を目的に「人道復興支援」分野への多国籍軍の進出があり、外国軍と民間外国人の区別がつきにくくなっている実情も背景にあるという。中村氏は、「紛争がやまない土地で、私たちは戦争をしない国、日本の人間であるということで守られてきた」「それが、日本が米国のアフガン戦争支援に自衛隊を派遣して以来、怪しくなってきた」と語っている。まさに自衛隊の派遣が大きく状況を変えたのである。
ペシャワール会の中村医師はしかし、アフガンでの活動について規模は縮小してもやり遂げることが、「伊藤君の意思でもあり、死を無駄にしないことだ」と語っている。反戦平和運動を闘う私たちにとってもずしりとくる重い言葉だ。自衛隊撤退の運動を一層強化しなければならない。
※伊藤さんの現地葬儀に500人(DATA MAX)
http://www.data-max.co.jp/2008/08/500.html


[4]日本政府は新テロ特措法を廃止し、インド洋から自衛隊を撤退させよ

(1)アフガン情勢は、米軍の侵攻から5年経った2006年の夏から秋に大きな転換点を迎えた。旧政権=タリバン勢力が態勢を再構築し、大攻勢に転じたのである。米軍・ISAFによる国土破壊、地球温暖化の影響によって、深刻な食糧不足、飢餓と餓死、人道的危機に陥った南部地域を中心に、タリバン勢力は人々の生活への援助活動に関わりながら人民の支持を勝ち取り軍事的攻勢を強める条件を獲得していった。
テロ特措法の延長を阻止しよう! −−戦争国家づくり、改憲策動に痛打を!−−(署名事務局)

 そして今年に入ってさらに状況が変わった。5月には1ヶ月当たりの米兵のアフガンでの戦死者がイラクでの戦死者を上回り、その後も同様の傾向が続いている。8月21日のフィナンシャル・タイムズは、「タリバンはカブールに忍び寄っている」として、首都カブールまでタリバンの攻勢が強まっていることを伝えた。すでに、首都カブールと周辺諸都市のみをカルザイ政権が支配している現状なのである。
※Taliban creep closer to Kabul(フィナンシャルタイムス)
http://www.ft.com/cms/s/0/cec0ccde-6f17-11dd-a80a-0000779fd18c.html

 ブッシュはイラクからの8000人の部分撤退とアフガンへの4500人の兵員の振り向けを発表した。アフガン情勢の悪化から部隊を増強せざるを得ないが、すでに過剰展開状態になっていることから、イラクから兵員を引き上げさせることなしに、アフガンに増派することが出来なくなっているのである。ブッシュの「対テロ戦争」は完全に破綻している。7年にもわたる無差別殺りくと国土の破壊が、米・NATO軍への憎悪と怒りを増幅させ反米闘争を激化させている。一方では、「対テロ戦争」の最重要の同盟国とされたパキスタンのムシャラフ大統領が辞任に追い込まれた。ブッシュはこの事態を受けて、何とパキスタン政府の許可無しにアフガニスタン駐留米軍がパキスタン領内で軍事行動をすることを承認した。国家主権蹂躙も甚だしい。
※パキスタン領内で「対テロ戦」強化 米大統領「許可なし攻撃」承認(日経ネット)
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20080912D2M1202M12.html

(2)ペシャワール会の事件は、真の国際貢献、真の援助活動はどうあるべきかを改めて問いかけている。伊藤和也さんが行方不明になったとき、1000人を越える地元の住民が捜索に駆けつけた。周辺の複数の村から、大勢の住民が犯人の返り討ちを恐れずに捜索に当たったのだ。普通考えられないことである。人々は伊藤さんへの尊敬と感謝を口にした。伊藤さんは、主として米や緑茶などの栽培の農業技術の指導をしながら、用水路や井戸の建設にも尽力してきた。伊藤さんとペシャワール会の住民との信頼関係、存在の大きさを、私たちは改めて知ることとなった。それは、軍の派遣とも、「復興ブーム」や「援助ビジネス」とも違う、紛争地で真の意味で住民の利益になる活動を行う本来の人道的NGO活動、ペシャワール会の支援活動の偉大さを示すものである。
※アフガン拉致殺害:慕われた伊藤さん 住民千人が救出作戦(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080829k0000e030038000c.html
[紹介]医者、用水路を拓く−−アフガンの大地から世界の虚構に挑む(署名事務局) 
[投稿]「医者、用水路を拓く−−アフガンの大地から世界の虚構に挑む」を読んで

 新テロ特措法は、真の人道的貢献ではない。アフガニスタン住民に対する救済・援助ではない。中東・中央アジアの石油支配=軍事覇権を追求する米軍・NATO・ISAF軍の侵略的軍事行動への給油支援に過ぎない。米・NATO軍艦船や武装ヘリへの燃料供給によって、アフガニスタンへの出撃=市民の殺りくに加担してきたにすぎない。民主党・小沢の言うISAFへの派遣も同様である。それは伊藤和也さんが語る「アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたい」という思いと真っ向から対立する。
 ブッシュは追い詰められている。日本では盟友安倍に続いて福田も無様な退陣劇を演じた。イギリスでは、ブラウン降ろしが公然化している。フランス、ドイツでは一連のアフガン情勢を通じて、ISAFからの撤退論が噴出している。
 だが、日本政府はイラクからの航空自衛隊の撤収方針と引き替えに、インド洋給油活動の継続する姿勢を強調している。これ以上、アフガニスタンの人民殺りく、国土の破壊に手を貸してはならない。侵略戦争への加担をやめるべきである。今すぐ新テロ特措法を廃棄し、インド洋から自衛艦を撤収させよう。

2008年9月16日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局