(北海道)集会声明:マイノリティへのヘイトスピーチをゆるさない

2/25に「『人である人』集まろう」集会がありました。「人である人」は、アイヌ語で「アイヌ ネノアン アイヌ」杉田水脈議員のアイヌ差別発言を問う集会でした。杉田水脈議員個人の発言に対する抗議を超えて、その構造的な差別を、アイヌ、女性、LGBTQ、優生思想、植民地支配・・・と、複合的に問う重い発言が続きましたが、何よりアイヌとして生きてきた尊厳と受けてきた差別、連帯の訴えが響く集会でした。道新の記事と声明文を送ります。(英文の下に日本語文です)(「つどい」呼びかけ人、七尾寿子)


English

2022年2月25日

集会声明

マイノリティへのヘイトスピーチをゆるさない

「人である人」集まろう

わたしたちアイヌ/在日コリアン/被差別部落民/琉球人/LGBTQ+/女性/障がい者/外国人は、日本の中で「マイノリティ」とされています。わたしたちがきょう2023年2月25日、こうして札幌で集会を開いたのは、2つの理由がありました。ひとつは、このところ立て続けに起きているマイノリティに対する差別・中傷発言、それもあろうことか政治家や政党党首や政府官僚や大学教授ら、公権力のうちでも「高い」立場にある人びとから発せられていることに、わたしたちがどれほど怒り、悲しみ、痛みをつのらせているかを、おたがいに共有する機会とすることです。そしてもうひとつ、あらゆる人びとの人権が真に尊重される社会をこれから実現するために、わたしたちはどうすればいいのか、未来像を広く共有したいと考えました。

直接のきっかけは、杉田水脈総務大臣政務官の、レイシストそのものというほかない差別・中傷発言です。昨年11月に国会で指摘を受けた後の彼女のおざなりな「謝罪」や、そんな彼女をかばい続ける政権与党の態度に、わたしたちは再び深く傷つきました。それだけではありません。1月には北海道大学教授がアイヌや在日コリアンを差別するツィートを繰り返し、2月には総理大臣秘書官のLGBTQ+差別発言が明るみに出ました。

杉田(あえて敬称を外します)の行動や発言は、ほんとうにひどいものでした。人権を守る議論をするための国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)のメイン会場で、公式参加のアイヌや在日コリアンたちを、杉田と同伴者は隠し撮りしたうえ、「コスプレおばさん」「恥ずかしい」「日本の恥」と侮辱したのです。

杉田はそれまでも琉球人/LGBTQ+/性暴力被害者/在日外国人に対する中傷発言を繰り返し、そのたびに問題視されてきましたが、彼女はいつも「心外です」と答えるだけで、態度を改めようとしません。このような人物が、高い人権意識を求められる政務官の地位にふさわしくないのは明らかです。差別発言者たちをおざなりな「謝罪」で放免し、そのまま権力を行使しうる立場にとどめ続ければ、今後も同じような差別発言者をどんどん生み出してしまうでしょう。私たちはそのような状況を黙認できません。

近年の日本が、差別禁止をめざした法整備に努めてきたのは確かです(障害者差別解消法・ヘイトスピーチ解消法・部落差別解消法)。にもかかわらず、差別発言や侮辱発言が後を絶たないのはなぜなのでしょうか? 日本の反差別法が単なる理念法にとどまっているせいではないでしょうか。 

痛み、恐れ、いきどおり――わたしたち「たくさんのマイノリティ」はきょう、杉田のブログ記事がわたしたちの心に植えつけたものを改めて確認し合いました。保守政治家たちやその支持者たちが差別・中傷発言を繰り返しているというのに、既存の法律が無力だということも分かりました。当事者レベルで一刻も早く対策を講じなければ、再発防止どころか、事態はいっそう悪化しかねません。

いま世界中で軍拡が進み、不安定化する地域が生まれ、現実に衝突が起きて、政治的緊張が高まっています。世界をこんな方向に向かわせる国家を、わたしたちは許せません。それぞれの国内でマイノリティたちが差別されている現実から目を背けたまま、法の支配にもとづく全世界レベルでの人権意識の向上など、望むべくもありません。

わたしたちはきょうの集会に参加して、「アイヌ・ネノアン・アイヌ」というアイヌの価値観を共有しました。アイヌは「役目無しに天から降ろされたものは一つもありません」と信じています。わたしたちは、マイノリティと呼ばれる世界中の人たちと連帯して、人種・出自・性別の不平等という構造的で根深い問題こそが衝突を引き起こしていることを明らかにし、どんな場面でも尊厳と尊敬を欠けば平和は実現できない、という基本的価値観に立ち返るよう、政府や社会に求めます。社会的な差別の問題に今こそメスを入れ、きちんと解決すべきです。

マイノリティの歴史を共有することから始めましょう。きょうここで集まっている私たちはマイノリティ、そしてマイノリティのサポーターとして、差別のない、人権が尊重される社会が実現できるよう、お互いに団結することを誓います。

「与党は杉田前政務官をかばっている」「日本の反差別法は単なるリップサービスに過ぎない」という批判に対し、岸田内閣は「批判は当たらない」と反論しています。そうであれば、岸田内閣はぜひ、差別根絶のためにぜひ次のような効果的な行動をとってください。

(1)岸田総理大臣は、差別発言を繰り返すレイシストと知りながらその人物を政務官に起用した責任から逃れようとせず、謝罪の言葉と、誠意ある説明をわたしたちに聴かせてください。また、杉田発言はアイヌ施策推進法やヘイトスピーチ解消法の趣旨に反している、と明言してください。

(2)アイヌ施策推進法とヘイトスピーチ解消法を改正して、アイヌや日本国内に住むそのほかのマイノリティを差別する者に対する実効力のある法制を設けるべきです。政府が有識者と学識経験者、そしてなによりマイノリティ当事者たちによる充分な調整権限と調査権限を備えた協議機関を設けて、マイノリティに対する差別について調査審議し、差別の禁⽌に関する定義と措置等のガイドラインを政令に定め、処罰されるべき範囲を厳選するなど、具体的措置に取り組むことを求めます。

政府・杉田水脈議員に対する抗議集会 参加者一同


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です