The Pen and The Sword
 
 

Common Courage Press, 1994

われらに向かって大地は閉じていき、最後の道へとわれらを追い立てる
通り抜けんがため、われらは四肢をちぎり捨てる
大地がわれらを締めつける
・・・・・・・・・・
最後のフロンティアが尽きた後、われらはどこに行けばよいのか
最後の空が果てた後、鳥はどこを飛べばよいのか
最後の息を吸った後、草花はどこで眠ればよいのか
---マフムード・ダルウィーシュ
"After the Last Sky"
この詩に注目したのは、それが1982年の出来事〔イスラエルのレバノン侵攻〕をふまえて書かれたものだからです。この時、パレスチナ人は、1948年に続いてふたたび生活を築き上げていた国を追われたのです。この2度目の追放は、レバノンからでした。ただし、今度の事件に見舞われた世代は、48年当時の世代に比べずっと政治的で、はるかに高い意識を備えていました。そのため、破滅という感覚もありましたが、それと同時に、再生という感覚もありました。つまり、最後の空、最後の道を通り抜けるということが暗示しているのは、たとえこれが最後のものと思われようとも、その向こう側にはまたもう一つの道、もう一つの空、もう一つの大地が開けているということです。・・・・・・僕らは、どうやら最後のフロンティアにいるらしく、本当にこれが最後の空を見ているのらしい。この先には何にもなくて僕らは滅びていく運命にあるようだ。そういうことは分っているのだけれど、それでもまだ僕らは、「ここから、どこへ行くのだろう」と問いかけているのです。僕らは他の医者にも診てもらいたい。「おまえたちは死んだ」と宣告されただけで は、納得しません。僕らは進み続けたいのです。 <エドワード・サイード 『ペンと剣』>

『ペンと剣』
 発行:クレイン、1998


す!

The Pen and The Sword


この本は、「オルターナティブ・ラジオ」のデービッド・バーサミアンによるエドワード・サイードに対する一連のインタビューをまとめたものです。既成の商業メディアによる情報操作を強く批判するバーサミアンは、オルターナティブ・ラジオを通じてサイードやノーム・チョムスキーなど、メインストリームのメディアが取り上げない「異なった立場からの声」を全米のみならず世界に向けて発信しています。 <オールタナティブラジオの英文サイトに行く

長期間にわたって何度も積み重ねられたインタビューの集成であることから、この本は面白い効果を生んでいます。

まず、インタビューという形式によってこの本は格好のサイード入門書となっています。記述された作品では、サイードの議論はより緻密に定義され、より洗練されたレトリックを用いて表現されていますが、それゆえに読者にも相応の精神的集中が要求され、必ずしも容易に理解できるというわけにはいきません。これに対し、インタビューにおいては、単刀直入な質問と答えという形式のなかに、平易な表現をとりながらサイードの思想のエッセンスが凝縮して盛り込まれています。また、サイードの活動は、文学、音楽、政治と幅広い分野にまたがっていますが、インタビューではそれぞれが独立した領域として語られるのではなく、相互の関連によって一方から他方へと随時移行しながら常に同一の地平で語られています。これらの領域はサイードのなかでむしろ相互に密接に絡み合っており、それらを撚り合わせる糸として「対立する視点」とか「歴史を作る複数の声」といったサイードにとっての根本的な問題意識が存在することが、そこから浮かび上がってきます。

また、インタビューというものの即時性から、時間の経過による客観的情勢の変化とそれに伴う内面的な変化も見て取ることができます。このインタビューは87年3月の第1回目から94年2月の第5回目まで、ほぼ7年という長期間にまたがっています。この期間中に、パレスチナ問題をめぐる情勢は大きな変化をとげました。インティファーダ発生前夜の第一回目のインタビューの語り口と、オスロー合意成立直後の第4回や第5回目のインタビューのトーンを比較してみると、前者では解放運動についての漠然とした希望がうががわれますが、後者では焦燥感や逼塞感が色濃くなっているように感じられます。しかし、そのような現在の逼塞状況のなかでも、サイードは、破滅的な現状をはっきりと認識したうえで希望につながる道を切り開いていこうという姿勢を毅然として貫いています。

インタビューの中から、幾つかのテーマを選んで一部抜粋してみました。


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02/01/18