木村愛二の生活と意見 2001年3月 から分離

杉花粉で日経「エコノ探偵団」と日テレ「特命リサーチ」特集に消費低迷と異変!

2001.3.13.(火)(2019.8.6分離)

 2001.3.11.日経「エコノ探偵団」には、「花粉症による労働損害600億円」、「一ヵ月だけでGDPベースの名目個人消費はおよそ七千億円目減りした計算になる(昨年三月の個人消費は約二十三兆円)」などの思わぬ角度からの探訪記事が載り、日本テレビの「特命リサーチ」では「花粉症に信じられない異変が起きている」とか、にわかに、わが病状の歴史的な意味が高く評価されそうな事態を迎えようとしています。

 花粉症については、ぜひとも私のホーム頁を御覧下さい。
 ➡ 杉花粉症は “外交 行政 産業” 環境公害だ!

"残念ながら杉の枝打ちで一挙に解決には注目せず

 以下、日経記事を全文紹介するが、日経も日テレも、非常に残念なことには、私が昨年から強調している「杉の枝打ちで一挙に解決」には注目していない。

 そこで、本日、2001.3.13.双方にmailと電話で、わがホーム頁を見るように申し入れた。


『日本経済新聞』(2001.3.11)

エコノ探偵団

広がる花粉症/経済への影響は?
飛散につれ消費低迷 出控えの傾向、じわり拡大
春の景気の目もかすむ

写真説明:花粉の飛散はこれから増え、外出がさらにつらくなるかも
グラフ:各年の花粉量と3月の消費支出(東京都)

「くしゆん、くしゆん」。つらそうな表情で探偵、加江田孝造が外出先から戻ってきた。「また花粉症の季節か。憂うつだ」。雑誌を読んでいた同僚の深津明日香がおどけて「日本経済も最近、苦しそう。花粉症の影響では」。そこに所長の声が飛んできた。「花粉症は今や国民病。景気にも影響しているかもしれん。甘くみないで、調べてみろ!」

労働損害600億円

 夕方五時過ぎ。JR新橋駅前のビルに、マスクを付けた勤め帰りのサラリーマンやOL が次々と入っていく。

 花粉症の治療で知られる新橋アレルギーリウマチクリニック。担当医師で日本医科大学名誉教授の奥田稔さん(74)が明日香を迎えてくれた。 「一日の患者数は百人を超えます」

 今年は全国的に平年を上回る花粉の飛散が予想され、西日本では昨シーズンの三~十倍の可能性もあるという。 「えっ」。驚く明日香に、奥田さんは「でも、日本人は苦しくても我慢してしまう。だから経済的な影響はそれほど大きくないんです」。

 奥田さんによると、花粉症による早退や欠勤で労働者が被る一人当たり損失額(損失時間に賃金を掛け計算)は 米国の半分。日本については昨年、旧科学技術庁(現又部科学省)が試算した。ほとんど知られていないが、貴重な分析だという。

 それをみると日本の患者数は一千三百九万人で十人に一人の割合に達する。ただし年間労働損失額は六百一億円と国内総生産(GDP)の○・○一%にとどまり、確かに日本人の「我慢強さ」を裏付けている。一方、薬やマスクなどの関連支出は消費を押し上げる要因だが、それでも千百億円弱。結局、経済への実質的な影響は大きくない、という結論だ。

「なるほど」。そんなところだろうと納得して事務所に戻ると、かすみ目で苦しむ孝造の強い反論が待っていた。「違う。旧科技庁調査は花粉症の影響を試算した数少ない例には違いないが、マイナスの影響の評価が甘すぎる。だから、この苦しさがわからない人問には任せられないって、言ったんだよ!」

 孝造は実際に分析に携わった昭和大学の川口毅教授(60)を前もって訪ねていた。

「未公表のデータですが」。そう言って川口さんは一枚の紙を取り出した。それは仕事への影響を千三十一人の患者に尋ねた結果で、四三%までが「能率が落ちた」と答えている。「能率低下は個人差があるため、試算に反映されていません。国内では原因が特定されないまま、『感染しない花粉症は病気というほどの病気ではない』といった無理解から、経済面も合め実態解明が遅れています」

海外に支出流れ

「消費はどうかな」。孝造の話を間いた明日香は再ぴ奮起、調査を始めたが、思うように手がかりは得られない。企業や個人が消費について真っ先に思い浮かべるのは所得や雇用の状況で、花粉症のことまで注意していないのだ。

 それでも突破口は開き始めた。自らも花粉症という財団法人日本交通公社の観光マーケティング部長、小林英俊さん(51)から海外旅行の〃異変〃を聞いたときだ。

「ここ数年、花粉症が深刻化する二、三月に海外旅行者が際立って増えています」。特に花粉の飛散量が多かった昨年二月は前年比三・四%とニケタ増となり、昨年全体 の海外旅行者の伸び(八・九%増)をかなり上回った。

「花粉症と海外旅行?」

 その足で東京・丸の内のJTBのオフィスを訪ねるとナゾが解けた。一階にある「ロイヤル倶楽部」で中高年向け高額商品を扱う支配人、原田圭子さんがズバリ、「花粉症の季節になると海外への〃脱出組〃が増えるんです」。

花粉症の原因とされるスギやヒノキの花粉から逃れようと、アジアなどのリゾート地に行く人が増えているというのだ。利用者の平均年齢は六十歳で、必ずしも高額所得者だけではない。一ヵ月単位でハワイのコンドミニアムに滞在する新型ツアー(三十万円から)も好評らしい。

「消費支出が海外に流出しているとは・…」。昨年の海外旅行支出は前年比六・八%増えたが、これには花粉症も「寄与」した格好だ。

買い物も滅らす

 納得して事務所に連絡すると、孝造が「いま電話が入った。有力情報だ」。受話器を置いた彼は、マスクを換え出動。電話の主で、都内の公共運動施設の管理・運営を手掛けるエフ・アール・チィ副社長の村岡大輔さん(33)との待ち合わせ場所に向かう。 「三、四月にスポーツ施設の利用者が大きく落ち込む傾向が数年続き、うちの業界では〃花粉症犯人説〃がかなり広がっています」

 不思議に思った村岡さんが独自に調査したところ、「十人に一人が買い物の回数を減らすなど、消費全般に影響している」のがわかったという。孝造の目がきらりと光り、次の瞬間には、彼から得た別の情報を確かめようと、所長に電話を入れていた。

「名古屋に出張します」

 待っていてくれたのは、名古屋市で花粉が猛威を振るった九五年二月に注目し、消費への影響を分析した東海銀行企画部の平下克己さん(36)。平下さんによると、同年二月は、花粉の影響が小さかった前年の同じ月に比べ、消費支出(年平均支出額に対する倍率)が落ち込んだ。年平均に対する倍率に注目することで、好不況の影響を除いたその月特有の要因を測れる。

「すべてが花粉の影響とは言い切れませんが、消費全体にも大きな影響を及ぼしているのは確実です。ダメを押せる別のデータもあります」  教えられるままとんぼ返りして訪ねた東京都庁でみせられた資料は、孝造の目から一瞬、痛みを消し去った。毎年の都内の動向をみると、特に飛散量の多かった九一、九五、二○○○年は、やはり三月に消費支出(同)がピタリ落ち込んでいたのだ(下図)。

 昨年三月は前年より○・○三ポイント下がった。消費額に直すと三%の減少で、単純に全国に当てはめると、一ヵ月だけでGDPベースの名目個人消費はおよそ七千億円目減りした計算になる(昨年三月の個人消費は約二十三兆円)。

「きっちりその通りかどうかは別にして、消費の目減りが薬品・グッズなどの支出増加分を大きく上回るのは確かだろう。花粉症の影響はじわっと膨らんできたなあ」

 証拠を握りしめて戻った二人の報告を聞き、所長が天井を見てつぶやいた。傍らで孝造は「九割の患者は毎年発症、しかも高齢者は季節に関係なく症状が続くそうです。花粉症への理解と対策をもっと促さないと、社会的、経済的に、影響がより深刻化しかねません」とも。

「くしゆん」「あれっ?」。  振り向いた孝造に、明日香が「私もかかったのか、し、ら、ら-、くしゆん」。

(経済解説部・竹内文英)