木村愛二の生活と意見 2000年8月 から分離

「長大で急峻な古典的登路」黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳2967米頂上を極め生還!

2000.8.4(金)(2019.6.10分離)

 7.27.発、2泊3日で、南アルプスの甲斐駒ヶ岳登頂を果たし、7.29.無事生還!

 私は別に、登山家でも、ワンダーフォーゲルでもなく、人並みの体力しかない。水泳はやるが、これも、高校の水泳部で対抗試合の際、リレーのメンバーにも入れて貰えなかった程度の、お遊び級である。しかも、水泳では足に体重が掛からないから、登山の訓練にはならない。若い頃に一応は名の知れた高山に登ったのは、富士山と八ヶ岳だけである。しかし、3000米級の北アルプスの高山に登ってみたいと願ってはいた。

3000米級の高山のすべての頂上を極めたか?

 南アルプスは愚か、北アルプスについても、普通以下の知識しかなかった。槍、穂高、ぐらいの名前しか知らなかった。それも、ナイロン製のザイルが切れて云々という粗筋の井上靖の新聞連載小説を読んで知った程度である。

 50歳を過ぎて争議が解決し、新しい人生に挑むことになった際、翻然と決意した。まずは体力の作り直しをと心掛け、水泳と同時に「日本の3000米級の高山のすべてに登る」のだ!

 穂高には、前穂高、北穂高、奥穂高と、3つも別の頂上があることも知らなかった。細部は省くが、槍、穂高(奥、北、前)のすべての頂上を極めた後、これで、ひと区切りと安心した。当時は57歳、以後は軽い山歩き程度の健康法へと転換する気になっていた。夏山でも高山は、きつい。登りよりも下りの方が、結構、きつい運動で、生還しても4,5日は足が腫れたままで、水泳でもビートが効かなくなるからだ。

 ところが、今から6年前のその時期、ある市民運動の集まりで、それらの山の名前を挙げて指折り数え、「これで日本の3000米級の高山のすべてに登った」と無邪気に自慢したところ、若い女性が、スットンキョウな声を上げた。

「木村さん、北岳、知らないんですか。北岳が日本で2番目に高い山なんですよ」

「エッ」となって、調べると、確かに、南アルプスの北岳は、「日本第2の高峰」(山と渓谷社『アルペンガイド』)となっている。3192米である。「エイッ、毒食わば皿まで」と登り、ついでに還暦祝いで2度目の槍登頂。勢いを駆って、富士山、八ヶ岳にも2度目、その他。そして本年、3000米より少し低いが、3000米級に属する甲斐駒ヶ岳2967米頂上を極めた。もう、これ以上は、いかにスットンキョウな声を出されても無視する。

登山路・山小屋の整備の予算請求

 もっとも、来年になると、またぞろ、新たな毒が欲しくなる可能性もある。そこで、将来に向けて、今回、黒戸尾根の7合目、七丈小屋の主から聞いた話を記す。

 登山路の整備は、国と県の予算なのだが、申請しても着工まで時間が掛かる。道理で、「長く厳しい登りが続くことから敬遠されがちな黒戸尾根」(同上)の整備状況などは、特に悪いわけである。山小屋も、最初の建造には、わずかな補助金が出るが、その後は、まったく自力で運営しなくてはならない。私などは、腰痛持ちでもあるので、せめて「蚕棚」型の個人別の寝床にしてもらいたいのだが、当分は、叶わぬ夢である。その癖、「生涯体育」「生涯学習」などと、もっともらしい部とか課とかを作っては、税金にたかる蠅のような高級官僚を、はびこらせているのだから、胸糞の悪い話である。

 文部省に電話すると。担当は「生涯スポーツ課」だという。カタカナ語で、またもや胸糞悪い。だから、ことらもカタカナ語で、「インターネット雑誌編集長」を名乗って聞くと、「登山が趣味」と称してペラペラ答える課員は、結局のところ、「ゾロゾロ山に登って自然を破壊する勝手な連中」としか考えていない。それでも、「沖縄サミットの800億円と比較されれば、ご不満でしょう」などというのだから、別に気違いではないらしい。でも、疲れる。ああ……