『偽イスラエル政治神話』(26)

第3章:神話の政治的利用

電網木村書店 Web無料公開 2000.4.7

第1節:
アメリカのイスラエル=シオニスト・ロビー 2

[外部資金による“偉大なイスラエル”への野望]

 イスラエルには、外部からの資金が溢れるように流入した。

 1、ドイツとオーストリアからの“賠償”。

 2、アメリカからの無条件な贈与。

 3、“ディアスポラ”からの献金。

 これらの流入資金に力づけられて、イスラエルの指導者たちは、外交政策の中で、“偉大なイスラエル”の実現という途方もない野望を抱くことができた。

 その野心の正確な証言となる論文が、エルサレムで発行されている世界シオニスト機構の機関評論誌、『キヴーニム』(指針)[前出。14号、82・2]に掲載されていた。論文の題名は、「一九八〇年代のためのイスラエルの戦略計画」であり、つぎのよう主張が述べられている。

《中央集権的機構として見た場合、エジプトは、特に、ますます深まるイスラム教徒とキリスト教徒の間の対立を勘定に入れると、すでに死体同然である。西欧の最前線におけるわれわれの一九九〇年代の政治的目標は、エジプトを明確に、その地理的条件にもとづく各州ごとに分割することでなければならない。

 ひとたびエジプトが、このように分解して中央権力を失うならば、スーダンや、リビアや、その他の離れた国々も、同様の崩壊に至るであろう。上エジプトにコプト人の国家が形成されたり、その他、さして重要な力を持たない地方政権が生まれたりすることは、歴史的な発展への鍵であり、現在は平和協定の締結によって速度が緩まってはいるものの、長期的に見て避け難い必然的な結果である。

 西部戦線の状況は見掛けとは違って、東部戦線と比べれば、はるかに問題が少ない。レバノンが五つの地方に分割されている状況は、アラブ世界全体が経験する将来の予告である。シリアとイラクの、民族的または宗教的な基準で決定される各地方への爆発的な分裂は、長期的に見ると、イスラエルに最も有利な到達目標であり、その最初の段階は、両国の軍事力の破壊である。

 シリアは、民族的構成が複雑なために、分解の危険にさらされている。やがて、長い海岸線に沿ってシイア派の国、アレプ地方ともう一つはダマスカスにスンニ派の国、ドゥルーズがまとまれば、彼らには……とりあえず、われわれが支配するゴラン高原に、……いずれはフーラン地方とヨルダン北部を含む地域に、自分たち国を希望する権利がある。……このような国家の成立は、長期的に見て、この地域の平和と安全を保障するものである。これらは、すでにわれわれの射程距離内の目標である。

 石油資源は豊富だが内部抗争に苦しむイラクは、イスラエルの照準線内にある。イラクの分裂は、われわれにとって、シリアのそれよりもさらに重要である。なぜなら、イラクこそが短期的に見て、イスラエルに対する最も危険な脅威を代表しているからである》(『キヴーニム』14号、82・2)

 この記事の原文はヘブライ語だが、その全文のフランス語訳が、拙著『パレスチナ・神の伝言の土地』(86)に収録されている。

 この膨大な計画の実現のために、イスラエルの指導者たちは、アメリカの無制限の援助を思い通りに使った。レバノン侵略の最初の襲撃に投入した五〇七機の内、四五七機は、ワシントンの贈与と同意による貸し付けのお陰で、アメリカからの購入が可能になったものである。アメリカ人のロビーは、シオニストの“ロビー”の圧力の下で、自分たちの国の利益に反しても、あえて、必要な財源の獲得を引き受けた。

『キヴーニム』の計画の目標は、極めて遠大で非常に危険な対立に満ちていたが、イスラエルのロビーは、作戦の実現をアメリカに託すことに成功した。イラクに対する戦争は、その最も戦慄すべき実例の一つである。

《二つの有力な圧力団体が、紛争に際してのアメリカの攻撃開始を推進する。

 第一は、“ユダヤ・ロビー”である。なぜなら、サダム・フセインの除去とは、とりもなおさず、最も強力なアラブ人国家による脅威の粉砕だからである。……アメリカのユダヤ人は、大西洋周辺のメディアの仕組みの中で重要な役割を演じている。大統領と議会とが常に緊張関係にあるため、ホワイトハウスは、メディアを握る彼らの願望に対して最も敏感に反応せざるを得ない。

 第二は、“財界ロビー”である。……彼らは、戦争が経済を活性化させる効果を考える。第二次世界大戦と、あの膨大な軍需は、アメリカにとって、一九二九年の世界恐慌以来まだ抜け切れなかった危機に、終止符を打ってくれるものだったのではなかっただろうか?

 朝鮮戦争は、その後に、また新しいブームをもたらしてくれたのではないだろうか?

 幸多き戦争よ、なんじはアメリカに繁栄をもたらすであろう……》(『フィガロ』90・11・5)

《アメリカ=イスラエル公事委員会(AIPAC)の政治的影響力は、いくら高く評価しても、し過ぎることはない。

 ……彼らは、一九八二年から一九八八年の間に、四倍以上(一九八二年には一六〇万ドルが、一九八八年には六九〇万ドル)に増えた予算を思い通りに処理している》(『ウォール・ストリート・ジャーナル』87・6・24)

[二重の忠誠心による下院と上院の政治への支配]

 シオニスト指導者たちは、彼らのロビーのこのような役割を隠さない。ベン=グリオンは明確に、こう宣言している。《アメリカであろうとも、南アフリカであろうとも、ユダヤ人が仲間のユダヤ人に“われわれの”政府と語る時、彼はそれをイスラエル政府だと理解している》(『再び誕生したイスラエルの運命』54)

 ベン=グリオンは、世界シオニスト機構の二三回総会で、外国にいるユダヤ人の義務を、つぎのように、あけすけな率直さで正確に語った。

《すべてのシオニスト組織には、住む国の違いはあっても、集団的な義務があり、いかなる状況にあろうとも無条件でユダヤ人国家を援助しなければならず、たとえ、その振舞いが、それぞれの住む国の当局の意図と矛盾したとしても、それに左右されるべきではない》(ベン=グリオン「現代のシオニストの課題と特徴」『エルサレム・ポスト』52・8・17および『ユダヤ電報通信』51・8・8掲載記事)[原注1]

原注1[改訂版での増補]:半世紀経っても、この態度はまったく変わっていない。フランスの大法師、ジョセフ・シトルクは、エルサレムでイスラエル首相のイツァク・シャミールに対して、こう言明した。《フランスの個々のユダヤ人がイスラエルを代表している。……フランスの個々のユダヤ人が、あなたがたが守ろうとしているものの守り手であることに、確信を持たれたい》(『ラディオ・イスラエル』90・7・9放送、『ル・モンド』90・7・12&13再録)。

 フランスのユダヤ人社会の日刊紙、『ジュールJ』(90・7・12)では、つぎのように付け加えていた。

《私の心の中には二重の忠誠心などという考えは、まったくない》

 この問題に関して、これほど完璧な騙しっぷりが、ほかに考え出せるだろうか?

 他のすべての宗教と同様に尊重されてしかるべき宗教としてのユダヤ教と、政治的シオニズムとの、このような混同は、イスラエルの神の代わりにイスラエル国家への無条件の忠誠を要求するものであって、実際には反ユダヤ主義に根拠を与えることになる。

 アメリカ国務省は、これに反論せざるを得なかった。“ユダヤ教アメリカ評議会”が一九六四年五月七日に公表した同評議会宛ての手紙の中で、国務長官のタルボットは、アメリカの憲法の原理まで持ち出していた。シオニスト指導者たちの要求は、その憲法の原理に対する挑戦になっているので、タルボットは、自分の国とイスラエルとの関係を考え直さざるを得なかった。彼によれば、アメリカは、《イスラエル国家の主権と、イスラエル国家の市民の権利を、十分に尊重している。アメリカが、これほどに、その主権と市民権を尊重している例は、他にない。アメリカでは、市民の宗教的立場を基礎とした政治的および法律的関係は尊重しないし、市民を宗教によって差別しない。結果として明瞭なことは、国務省が“ユダヤ民族”という概念を、国際法の概念として尊重することはできないということである》(『ユダヤ民族の終末』56)

 だが、これは、まったく効果のない形ばかりの声明である。この法律的な指摘に対して、ロビーは何の反応も示さなかった。

 ポラード事件は、その実例の一つである。

 一九八五年一一月、戦闘的なシオニストのアメリカ人で、海軍総司令部の分析官だったジョナサン・ポラードは、自宅に、いくつかの秘密文書を持ち帰った容疑で逮捕された。FBIの尋問を受けて、彼は、一九八四年の初めから、これらの文書をイスラエルに渡して、五万ドルを受けとったことを認めた。

《ポラード事件は、何の原因もなしに突然起きたのではない。この事件は、厚かましい態度を許し、過度の依存を特徴とするアメリカとイスラエルの間の、……不健全の度を増し続ける現在の仕組みに……深く根差している。

 この状態が作られたのは一九八一年である。この年、レーガン[前年の一九八〇年に大統領に初当選]政権は、イスラエルの自衛を口実とする軍事的冒険に対して、世間が“白紙委任状”と呼ぶ無償贈与の援助を与えた。

 ……その最初の結果は、レバノン侵略だった。

 ……このようなワシントンの、ご機嫌伺いの姿勢が、エルサレムの傲慢さを増長させるに違いないことは、誰も目にも明らかだった。……良く知られているように、緊密すぎる依存関係からは、恨みに満ちた攻撃的な憎悪の情が泌み出す。……イスラエルに関する問題では、この攻撃性が無思慮な態度を取らせて、一方ではチュニスへの奇襲攻撃を生んだ。ポラード事件は、もう一方の現われ方なのであろう》(『ワシントン・ポスト』85・12・5)

《ここ何十年か、アメリカのユダヤ人たちは、アメリカの世論に働き掛けて、彼らのイスラエルに対する無条件の支持が、彼らのアメリカに対する忠誠心には影響しないと、信じてもらえるように努力してきた。現在、この点で、彼らに信頼を託せるかどうか、難しい局面を迎えたように思える。“二重に忠誠心”について語る声の方に、人々が快く耳を傾けるようになっている》(『ハアーレツ』85・12・1)

 イスラエル=シオニスト・ロビーがアメリカ政府に働き掛けて、イスラエルの政策には有益だが、アメリカの利益には反する態度を取れせた例を挙げれば、まさに枚挙に暇がない。ここでも、いくつかの例を挙げてみよう。

 上院外交委員会の委員長、フルブライト上院議員は、彼らの秘密活動を明るみに出すことを目的として、主要なシオニスト指導者たちの委員会への呼び出しを決定した。彼は、一九七三年一〇月七日に放送されたCBSの『フェイス・ザ・ネイション』のインタヴューに答えて、その調査結果の要約を語った。

《イスラエルは、下院と上院の政治を支配している》。彼はさらに付け加えた。《われわれの上院の同僚たちの約七〇%は、彼ら自身が自由と正義の原理にもとづいて抱く理想に従うよりも、ロビーの圧力に従って意見を決定している》

 つぎの選挙で、フルブライトは上院の議席を失った。

 フルブライト上院議員の調査以後にも、シオニスト“ロビー”は、アメリカの政策に対する旺盛な働き掛けを強め続けた。アメリカの下院で二二年間も議席を確保し続けてきたポール・フィンドレイは、一九八五年に発表した著書、『彼らは遠慮なく語る』の中で、シオニスト“ロビー”の実際の機能や、その影響力の強さを描き出した。この事実上の“イスラエル政府の出店”は、下院と上院、合衆国の大統領、“国務省”とペンタゴン、“メディア”はもとより、教会と同じ程度に大学までも支配している。イスラエルの要求が、どのようにして、アメリカの国益よりも優先されるのかを示す証拠と実例は、溢れるほどある。

 一九八四年一〇月三日、下院は、商務省およびその関係組織による不利な報告を押し切り、九八%の賛成によって、イスラエルとアメリカの間のすべての通商制限を解除した(同前)。毎年、すべての他の項目の予算が縮小された場合でも、イスラエルに対する財政融資は増加し続けた。最も重要な機密文書のほとんどがイスラエル政府の手に渡るほどのスパイ活動が続いていた。

 大統領候補だったこともあるアドレー・スティーヴンソンは、『フォーリン・アフェアズ』(75~76冬)に、つぎのように書いた。

《実際問題として、イスラエルに関する決定は、いかなる場合でも行政の段階では、公開されず、議論もされなかった。イスラエル政府にも同様に知らされなかった》(同前)

 レバノンで明白な侵略行為を繰り広げているイスラエルに、民間人を対象とする兵器の炸裂爆弾を供給する件では、アメリカの法律にもとづいて国防総省長官が禁輸解除に反対したのに、イスラエルは、これをレーガンから獲得し、ベイルートへの二度の奪回作戦で住民の虐殺に使用した(同前)。

 一九七三年、アメリカの提督で三軍の司令長官、トマス・ムーラーは、つぎのように証言した。ワシントン駐在のイスラエルの武官、モルデハイ・グル(のちのイスラエル軍最高司令官)[一九九七年現在、国防大臣]は、彼に対して、アメリカが“マヴェリック”と呼ぶ非常に精巧なミサイルを装填した戦闘機を供給するように要求した。ムーラー提督の記憶によると、彼はグルに対して、こう答えた。《この戦闘機を供給するのは不可能だ。われわれも一中隊分しか持っていない。しかも、これはわれわれが議会に対して、ぜひとも必要だと誓って獲得したものなのだ》。するとグルは、こう応じた。《その戦闘機を回してくれ。議会の方は、私が面倒を見る》。といった次第で、と提督は続けた。《たったの一中隊分だけしかなかった“マヴェリック”を装填する戦闘機は、イスラエルに渡ってしまった》(同前)。

[一三年間も極秘扱いされたアメリカ軍艦への攻撃]

 一九六七年六月八日、イスラエルの空軍と海軍は、精巧な電波探知機を備えたアメリカの軍艦、“リバティ”を攻撃した。その目的は、ゴラン高原への侵略計画を察知させないためだった[訳注1]。

 三八人の乗組員が死に、一七一人が負傷した。イスラエルの飛行機は、“リバティ”の上空を六時間に渡って飛び、爆撃は七〇分も続いた。イスラエル政府は、これを“間違い”だったと謝罪し、事件は一定期間の極秘扱いとなった。真相が初めて公式の場で復元されたのは、一三年後の一九八〇年である。当時の状況を調査するための委員会が、アイザック・キッド提督を議長として開かれた。そこで確認された目撃証人の一人、“リバティ”の甲板将校、エネスの証言によって、“間違い”だったという公式の説明は崩壊した。エネスは、攻撃が周到な計画の下に行われたものであり、殺人であることを立証した。トマス・L・ムーラー提督は、エネスの報告書がシオニストの画策によって封じ込まれたと証言し、この犯罪行為がなぜ見逃されたのかを説明した。《ジョンソン大統領は選挙に際してのユダヤ人の反応を恐れた。……》。提督は、さらに、こう付け加えた。《アメリカ人は真相を知ったら怒り狂っただろう》(同前)

訳注1:巻末紹介の『ユダヤ人に対する秘密の戦争』によると、当時のアメリカ国防総省安全保障局(NSA)はエジプトのナセル大統領に肩入れし、ゴラン高原向けに兵力を割こうとするイスラエル軍の動きを電波探知で分析してキプロス島のイギリス軍基地に送る過程で、実質的にアラブ軍にリークしていた。イスラエルは、その事実経過をNSAに潜入していたモグラ情報によって逐一知っており。いざとなればアラブ荷担を暴露する構えで“リバティ”を攻撃したため、アメリカは沈黙せざるを得なかった。

 一九八〇年、アドレー・スティーヴンソンは、イスラエルへの軍事援助の予算を一〇%削減する修正案を推進した。その目的は、占領地区内の入植地建設を止めさせることにあった。その際、世界中で三〇億人が飢えに苦しんでいる状況には構いもせずに、アメリカの対外援助の四三%が人口三百万人のイスラエルに与えられ、軍備増強に使われていると指摘した。

 アドレー・スティーヴンソンは、こう結論する。

《イスラエルの首相は、中東に関するアメリカの外交政策に対しては、自分の国に対してよりも、遥かに強い影響力を持っている》(同前)

[“わがままなだだっ子”の決め手は殺しの脅迫]

 まだまだ溢れるほどの実例がある

《ラビン氏は、一九六七年以来の占領地の自由奔放な併合というイスラエル労働党好みの戦略〈“土地を一坪に続いて一坪、山羊を一匹に続いて一匹”〉を長期にわたって放棄してきたが、この町への植民によるユダヤ化計画を加速する時期が来たと判断して、すでに一九六七年から三分の一をユダヤ人のみの専有と定めていた東エルサレム地区内で、五三ヘクタールの土地を没収した。到達目標は、一九九六年と予測されている和平交渉に際して、“交渉の余地なし”という既成事実を作り出すことにある。

 この新しい挑発行為は、アラブ諸国からの激しい抗議を招いた。その上に、一九九〇年にも一度、イスラエルを“わがままなだだっ子”だと批判したことのあるドール上院議員が、エルサレムからアメリカの大使を召喚せよと提案したことによって、さらに深刻な事態となった。アラブ諸国は、フランスが独自に五月二日に行ったのと同様に、国連の安全保障委員会を緊急に開催せよと要求した。同委員会での採決の結果、一五の理事国の内、一四か国が、ラビンに対して土地の没収計画を撤回せよと求める決議案に賛成した。残る一か国のアメリカは、一九七二年以来で三〇回目を数えるイスラエル支持の拒否権行使を決定した。……

 このようなアメリカの孤立状態は、トマス・フリードマンのようなアメリカのロビーの代表者を、不安に陥れている。彼は、『ニューヨーク・タイムズ』(95・5・15)に、つぎのような意見を寄せている。〈最も重大な問題はエルサレムの国際管理規則との関係ではない。エルサレムは、とにもかくにも、イスラエルの首都であり続けるだろう。……重大なのは、アメリカが、イスラエルとアラブとの紛争の唯一の仲介者として、パレスチナ人との交渉を指導するだけの信用を維持できるどうか、ということの方ではないのだろうか?〉》(『ハアーレツ』95・5)

 アメリカ=イスラエル公事委員会(AIPAC)の年次総会に招かれて出席したクリントン大統領は、アメリカのイスラエルに対する目一杯の軍事援助について、つぎのように強調した。

《アメリカ合衆国は約束を守った。イスラエルの軍事的な力は、これまで以上の最も“鋭い”状態にある。航続距離の長い世界で最優秀の戦闘機、F15Iを売ることにも同意した。湾岸戦争後に始まった二百機の戦闘機と戦闘ヘリコプターの引き渡しも続けている。すべての新型のミサイル攻撃からイスラエルを防衛することができる“アロウ”の生産に向けて、三五億ドルの予算を組んだ。複数のロケット弾の発射が可能な超近代的システムも、イスラエルに対しては輸出禁止を解除する。

 ……イスラエルにおける高度技術の能力を高めるために、スーパー・コンピュータを供給し、アメリカの宇宙ロケット発射装置の状況に関する情報アクセスを許可したが、これは、アメリカがいまだかつて行ったことのないことである。

 ……われわれの戦略と情報に関しての協力関係は、同じく、いまだかつてなく緊密である。われわれは何年も掛けて、大規模な共同の機動演習を行い、イスラエルにあらかじめ軍需物資を備蓄できる設備を拡張してきた。ペンタゴンは、イスラエルの部隊に高度技術の物資を供給するために、三百万ドルの購入契約に署名した……》(『中東インタナショナル』95・5・26)

 すべての手段は、シオニスト“ロビー”にとって善である。予算に関する圧力から、精神的な強請に至り、メディアや編集者によるボイコットなどは、お安い御用で、決め手は殺しによる脅迫まで揃っている。

 ポール・フィンドレイは、つぎのように主張していた。

《イスラエルの政策を批判する者は、苦しく絶え間ない復讐に悩まされ、イスラエル・ロビー・によって、収入の道さえも閉ざされる。大統領も彼らを恐れる。議会は彼らの要求のすべてに応じる。最も有名な大学では、彼らに反対する講義がまるで組まれていない。メディアの大物と軍の首脳は彼らの圧力に屈している》(『下院公聴会記録』パート9、63・5・23)


(27)第2節:フランスのイスラエル=シオニスト・ロビー