わたしの雑記帳

2002/6/29 小森香澄さんの裁判(2002/6/24)、傍聴報告


2002年6月24日、小雨の降るなか、傍聴券配布の列に並ぶ。前田晶子さんのお母さんの千恵子さんも傍聴にいらしていた(前回の公判の後、微力ながら小森さんと前田さんの橋渡しをさせていただくことができていた)。今回も抽選はなしで、一応、並んでいた全員が傍聴することができた。
香澄さんのご両親が、元同級生3人と学校設置者である県を相手取り訴えを起こしたのは、2001年7月23日。前回、裁判官の研修の都合で伸びたこともあって、もうすぐ一年になろうというのに、今回でまだ4回目の公判。とても時間がかかる。

今回も書類のやりとりなので、ほとんど時間はかからず、終了後、場所を移して報告会が行われた。
弁護団を代表して、栗山博史弁護士が丁寧に経過を説明してくださった。
今はもっぱら、学校とのやりとり(書類での攻防)が中心になっていること。いじめていたとされる女子生徒3人は、答弁書のなかで、香澄さんに対してきつい言い方をしたことはあっても、仲間はずれにしたことはない。いじめと言われるようなことはしていないと否定していという。

それにあわせるように学校側は(もしくは生徒たちが学校の言い分にあわせたのか?)、仲間同士の諍い(いさかい)、トラブルはあったがいじめはなかったとした。
自殺についても、学校の対応には問題がない。家庭に問題があったとした。
学校側は、保護者からの訴えに対して異常はないかと注意し、香澄さんからきちんと話を聞き、関係生徒からも話を聞いた。複数の教師が対応した、生徒指導も行った、だから安全配慮義務違反はないとしているという。

しかし、「きちんと対応した」という、その具体的な中身までは明らかにしようとはしない。いつ、どこで、誰から、どのような話を聞いたのか、具体的にはどのような指導を行ったのか、は明らかにしていない。
学校側の事後の対応のひとつに、作文・アンケートがある。それがどういうものであったのか、今まではわからなかったが、裁判をするなかで多少明らかになった。

香澄さんが亡くなったあと、吹奏楽部の生徒全員に作文を書かせたという。白い紙に、自分自身、香澄さんとどのように接してきたか、これから部をどのようにしたいか、について書かせたという。そして、その作文を元に教師が生徒にヒアリングをした。

この作文の開示請求を出すかどうか。原告弁護団は現在検討中だという。作文提出の難しさは、前田さんの作文訴訟で8年もかかってなお、請求棄却されている。たとえ作文に事実調査が含まれていたとしても、第三者への公表を目的として書かれたものではないから、教師と生徒の信頼関係を裏切ることになるというのがその主な理由だ。そう言いながら、学校側は、自分たちに都合のいいところでは平気で生徒の作文を何の許可もなく、引用したりしているのだが。被害者や遺族に徹底して隠し事をする学校に生徒との信頼関係などという言葉はけっして使ってほしくはないが。
もっとも、近年の民事法の改正により、事実認定に必要なものは原則出すように、というのが今の裁判の流れだという。例外はあるが。

学校・県側は、自分たちの持っている文書のなかから、自分たちに都合のよい部分だけを抜き出して、自殺の責任は親にあると言う。学校に責任がないと主張するには、親にその原因を求めることが一番確実な方法だ。
実際には、香澄さんのお母さんは、娘のことが心配で、何度も何度も学校に足を運んでいる。親として、娘にどう接したらよいのか、どうすれば今現在苦しんでいる娘を助けることができるのか、試行錯誤をしながらも必死に娘と学校に働きかけてきた。
学校側は、親が、学校に行けない香澄さんを追いつめたと主張する。しかし、学校には行かなくていいよと言っていた。それでも、香澄さんはどうしても吹奏楽部の練習にだけは出ようとした。そして、力つきてしまった。
お母さんは、香澄さんがどんな状態であっても愛し続けているという手紙を書いた。亡くなった後、その手紙は香澄さんのカバンのなかから見つかったという。母親の思いがけっして届かなかったわけではないと思う。それでも、どうしても、目の前の苦しさから逃げずにはいられなかった。命を断つことのほかに、この苦しさから逃れる方法はないと思いこんでしまった。ズタズタに傷ついた心で、きっとほかにいろいろなことを考えることすら、できなくなっていたのだろう。

このことで、小森さんは、心の傷、PTSDについて、もっと知りたい、みんなにももっと知って欲しいということで、7月27日に「いじめが子どもの心に与える影響」PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは」というテーマで、国立療養所天竜病院の精神科医長・白川美也子先生の講演会を相鉄線二俣川駅の二俣川ライフ5階・サンハートで、午後2時から4時30分まで企画している。
インフォメーション・コーナー参照)
そして、生きている子どもたちのために、二度といじめで苦しむ子どもが出ないように、自分たちのできる精一杯のことをしたいと前田晶子さんのお母さんとともに、語られた。

次回公判は、9月17日(火)午前10時から、横浜地裁にて。おそらく、また入り口で、傍聴券配布になると思います。



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