戦後70年の節目を迎える夏、国内では「戦争」を欲望する勢力の声がますます大きくなり、具体的なかたちをとりはじめています。世界に目を向ければ、これまでの国境を無効化するような武装勢力の暗躍や経済危機が起こり、国家や世界秩序の枠組みが揺らいでいるのがわかります。
このようなときこそ私たちは、硬直した国際関係の概念や、インターネット的な一過性の情報、感情的反応などから離れて自分たちが暮らす足元を見つめ、それぞれが自由な立場から東アジアにおける自らの立ち位置を考えてみたいと思います。そして、時間的にも、空間的にも、日常の束縛を脱した広い見地からものごとに思いをめぐらす機会を与えてくれるのが、本というメディアです。
世の中にはアジアについてのさまざまな見方を示す名著が数多ありますが、現代企画室からも、沖縄自立論の古典といえる森秀人『〔復刻〕甘蔗伐採期の思想』などをはじめ、現在の東アジアを読み解くヒントになりそうな本をいくつか出版しています。
今回のセレクトブックは、そのような「東アジアをみつめなおす本」をテーマに選びました。
かつてオキナワは日本ではなかった。そして今でもそうではない……「復帰論」喧しい60年代前半、その議論の中に戦闘的にわけいった沖縄自立論。
アイヌ民族が死滅したことを宣告する書物に自分の写真が無断で掲載されていることを知ったひとりのアイヌ女性が提訴して勝利した裁判の全記録。日本への深い問いかけ。
徴兵・入隊から敗戦後の引揚・抑留まで、日本陸軍の「留守名簿」を手がかりに、北方部隊(樺太・千島・北海道)に動員された朝鮮人兵士の実態を追う。
20世紀を通じて「空白の海」となった日本海を再び協調の海とするには何が必要か?歴史、文化、環境など多角的な視点から問いかける。鶴見俊輔、古厩忠夫ほか。
故郷とは何でありどこにあるのか。「いまは実在しない故郷、共同体」を求めて、民族・国家・インターナショナリズムの歴史と現在を論じる。
現実に居直り、夢を冷笑し、絶望にあそぶ、世紀末精神の底知れぬ頽廃と混迷を斬り、日本ナショナリズムからの自己解放と〈世界・時代〉への回路を探る。