現在、全国で約4万7000人の子どもたちが社会的養護、つまり、児童養護施設や里親に委託されて暮らしている。しかし、彼らの声が社会に届くことは少ない。
渡井さん自身も両親が不仲で、父親は酒を飲み、母は家出を繰り返していた。小学校の時に母に連れられて母子生活支援施設に入るが、母が園長と大げんかして退所。父の元に戻っても続かず、4年生の時には妹と弟と別れ、ひとりだけ児童養護施設に入れられてしまった。
「当時は説明もなくて、自分が悪い子だったから入所したと思い込んでいた。今は、子ども権利ノートで入所理由が説明されるらしいですが」
施設の生活は規則正しく、学校に通えるのはよかった。
だが一回家に戻された。母は今度こそちゃんと働くと期待させたが、裏切られた。部屋は足の踏み場もなくなり、食べ物はなく、万引きもした。
そして6年生の時、今度はきょうだい3人が同じ児童養護施設に入った。グループホーム形態の施設で一軒家に子どもたちが暮らしていた。
「人並みの生活ができたのは良かったけれど、でも安心できる暮らしではなかった」
弟が大きい子にぶたれても、職員はかばわない。安心からは遠かった。それでも学校に通い、勉強できる環境になったし、徐々に友人もできた。