それでも書いた女性たち ドイツ語圏の作家と思想家
カタリーナ・ヘルマン 著 木田綾子ほか 訳
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それでも書いた女性たち ドイツ語圏の作家と思想家
- カタリーナ・ヘルマン 著 木田綾子ほか 訳
- 同学社2200円+10%
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本書は、過去250年にわたるドイツ語圏女性作家20人を紹介する。はて?ドイツの女性作家?「まえがき」によれば、ドイツの作家・批評家の著者でさえ、教科書でドイツの女性作家の作品を読んだ覚えがほぼないらしい。
だが本書には面白い女性作家がどしどし登場する。生前は哲学者の息子より有名だったベストセラー作家ヨハンナ・ショーペンハウアー、ニーチェとレーの哲学者師弟と「三位一体」関係を作ったルー・アンドレーアス=ザロメ(映画『善悪の彼岸』でドミニク・サンダがルーを演じた!)。「私たち女性に足りないのは、『芸術家の妻』である。(略)ジークフリートが槍を構えた時、(略)赤ちゃんのおむつを取り替えるために、呼び出されることもまずなかった」と書いた詩人マーシャ・カレコ。
読みたい本リストもできた。ヴィッキ・バウム『ホテルの人々』(映画『グランド・ホテル』の原作)、アンナ・ゼーガースの2作。宝の山を見つけた気分である。(雪)
- 奄美〝幻〟の「集団自決」
- 津田憲一 著
- 南方新社1600円+10%
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関東在住の著者は、戦争中の日本軍による住民虐殺の証言を伝える元教員。2017年、奄美群島・加計呂麻島で、戦争末期に軍が「米軍から守る」と説き、周到に住民の「集団自決」用「玉砕壕」を住民自身に掘らせていたことを知る。そして島を回って戦争体験者を訪ね、史料にあたり、壕を探す。実際には壕は「集団自決」には使われず敗戦となった。本書は書籍として初めてこの事実を伝えたもの。
著者は07年から沖縄・渡嘉敷島や座間味島で「集団自決」の聞き取りをし、語り部の役割を自身に課してきた。「戦争の実際は教科書に書かれなくなると消えていく。苦しいが話す」と語る人。先に“自死”させられた人の血しぶきを浴びた話。憲法9条死守のためにこれから国際法を学びたい、と言う高齢女性。「集団自決」も「集団死」も、住民を死に追いやった国の責任を覆い隠す言葉だと言う人…。
戦後80年の今、地域に根ざした出版社だからこその、貴重な記録だ。(三)
著者は、戦争に反対して平和を守り、また権力の監視を目的として防衛省(庁)の担当記者を希望、1994年から取材にあたってきた。
2021年12月24日、「台湾有事」の際、米軍が南西諸島に臨時攻撃用軍事拠点を設けることを日米共同作戦計画原案に盛り込んだという共同通信の配信記事が全国の新聞に載った。著者の取材の成果だ。
本書には、上記記事のほか、自衛隊の文官統制全廃、護衛艦の空母化、中東派遣の実態、陸自と米軍との基地共同使用という辺野古密約など、14年から24年まで著者が発表したものを収める。
安倍政権が着手した「戦争ができる国」づくりは、岸田政権の防衛費増額、敵基地攻撃能力の保有などにより、日本は実質的に「戦争をする国」となった。
軍事作戦は地域住民の生命が巻き込まれる計画である以上、住民には知る権利があり、取材を恐れてはならないと著者は語る。日本の防衛政策の現在地を知るために必読の一冊だ。(い)