WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • インタビュー

インタビュー

上関原発建設予定地から発信

高島 美登里さん

  • 2010.04.15
  • 聞き手:柏原登希子
  • 撮 影:飯田典子

高島 美登里さん

スナメリもお年寄りも輝く町に

 包み込むように両手のひらを広げ「カンムリウミスズメはこのくらいの大きさ、波にプカプカ浮いているの」。「スナメリは世界で一番小さいクジラ。船に乗ってて誰かがフーッと大きなため息をついたと思ったらスナメリの息づかいだった」。高島さんの口から語られる、見たこともない生き物たちの様子。この生き物たちは山口県南東部、瀬戸内海に面した上関町長島に生息している希少生物だ。
 しかしここに中国電力(中電)による上関原発の建設計画がある。計画が持ち上がった1982年から町は賛成・反対に二分され今も緊迫した攻防が続く。
 「長島の自然を守る会」の高島さんは、日本生態学会などの研究者と連携して中電の環境アセスメントの不備を追及し、計画の中止を訴え続けてきた。

 高島さんが初めて長島に行ったのは86年。「反対する人の気持ちが知りたくて」島民の9割が建設に反対する長島対岸の祝島へ。「すごく重かった。島の人はやさしいけど、底にある生活の厳しさは出しちゃあない。外にいる私が現地で感じ取るしかないなと。今も島に行く時は、懐かしさ半分、自分を問い直し、襟を正す気持ちになる」。
 しかし長島の自然の美しさには驚いた。「物心ついた時、広島の海は埋め立てと汚染で遊泳禁止。瀬戸内海は濁って汚いって思ってたのに、エメラルドグリーンの海が広がっててね」。
 99年に中電から環境影響調査書が出た。どうもおかしい。祝島島民の一人は「スナメリのことが書いてない。ハヤブサもあの辺りでよう見るから巣があるんじゃないかのお」と言った。スナメリはワシントン条約保護動物、ハヤブサは環境省準絶滅危惧種。高島さんは早速報告書の内容を分野別に専門家に送った。そして現地調査に来た専門家はびっくり。加藤真さん(京都大学教員)は「高島さん、ここは世界遺産にするところですよ」と叫んだ。埋立予定地の長島・田ノ浦湾は、豊後水道からの黒潮と関門海峡からの潮流が合流し、周囲の広葉樹林からの湧水が出る地理的条件に加え、埋め立てや海砂採取などの開発からも逃れた、希少生物が多く存在する「生物多様性のホットスポット」だったのだ。
 「ここは原発だろうがリゾートだろうが作らせちゃいけない。この自然を守るのがライフワークになる」と、99年に高島さんは仲間と「長島の自然を守る会」を設立した。地元漁師の協力も得て調べるほど希少な生き物たちを発見していく。カンムリウミスズメ(世界自然保護連合〈IUCN〉指定絶滅危惧種)は世界で唯一、周年の生息を確認した。オオミズナギドリ(山口県準絶滅危惧種)が夜中に鳴き交わす声の位置を確認し、翌朝船をチャーターして岩によじ登り、ヒナを発見。世界初の「内海での繁殖」を確認した。

続きは本誌で...

たかしま みどり

1952年広島市生まれ。海も山もきれいなので「山口県人になる」と18歳で決意。23歳で山口県職員労働組合へ。「長島の自然を守る会」代表。「上関自然の権利訴訟」も呼びかける。
スナメリ通信http://green.ap.teacup.com/sunameri/
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ