化粧水をたっぷりしみこませたコットンを薄くはがして、顔の上に乗せる「ローションパック」。家で簡単にできるとあって、若い女性を中心に人気の美容法だ。指先を使ってコットンをはがしていくのは、脳の活性化にもいいと言われている。見よう見まねで顔にコットンをはりつけた女性たちは、お互い顔を見合わせて「やだっ、おかしい?」と大笑い。
ファンデーションはつけずに、おしろいをはたいて、ほお紅をさし、眉を整える。「もっとやりたい」というアクティブな人には、まぶたにアイシャドウも入れてぼかす。
そういったメイクをボランティアでやっている美容師さんやメイクアップアーティストは少なくない。「美容セラピー」という言葉もあるくらいで、専門的に研究している美容家や心理学者もいるという。
「私はちょっと違うかもしれませんね。何より楽しんでもらいたいし、私自身、一緒に遊んでいる感じなんです」
今の若い人はこんなの付けているのよ、と、つめに付けるシールを買って持って行くこともある。オレンジの香りの香水を手につけてメイクをすると、「あ、いいにおい」とみんな目を細める。どれも、沖さんが思いついて取り入れることにした小道具だ。
「高齢者の施設って、いい香りが漂っていてもいいのに、あるのは消毒液のにおいぐらい。寂しいですよね。香りには思い出を呼び覚ます効果もあるでしょう? すごく喜ばれます」