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インタビュー

『ルポ 悼みの列島』の著者

室田 元美さん

  • 2010.11.15
  • 聞き手:じょうづかさえこ
  • 撮 影:落合由利子

室田元美さん

知られざる加害の地を訪ねて

 ふぇみんのライターとしてもおなじみの室田元美さんは、4年前から、戦争時に自分の町や村で起こったことを語り継ぐ人々を訪ね歩いてきた。
 軍需工場を支える神奈川県・相模湖ダム建設のために中国や朝鮮から強制連行された人々に起こったこと。福岡県・八幡製鉄所の強制連行の語り部「ペさん」の話。北海道の猿仏村で陸軍飛行場建設で亡くなった人の骨を掘るアジアの若者たち…。
 『月刊 自然と人間』の連載ルポルタージュに大幅な加筆訂正を加え8月に刊行された『ルポ悼みの列島』(社会評論社)には、全国各地の23編の物語が収められている。

 「10年前には自分が本を出すなんて考えたこともありませんでした」
 コピーライターを経て、女性誌のライターやFMラジオの旅番組の構成作家をしていた室田さんは、「憲法9条は絶対に守りたい人間ではあったけれど、積極的にデモや集会に行く人間ではなかった」と言う。
 そんな室田さんを行動にかきたてたのは、2001年の9・11とその後の動きだった。
 「ショックと言うより、ついに起こってしまったという感じでした。報復戦争を支持する政府や、世論の高まりを感じ、自分が大事にしているささやかな日常さえも奪われる。そんな危機感で、テレビの前に座っていられなくて…」
 インターネットで探して、東京・明治公園のデモに一人で行った。が、飛び込んでいく勇気がなく帰ってしまう。その後、個人でも入りやすいWORLD PEACE NOWのデモに参加したことから様々な出会いの輪が広がった。
 「自分から求めて動かないと何も得られないことを改めて学びました」

 いま振り返ると、戦争の傷跡を訪ねることになる下地はいくつもあった。
 朝鮮半島で1900年に生まれた祖母。父は満州からの引き揚げ者で、被害者としての苦労話を聞いて育った。
 室田さんが育った神戸の学校には、常にクラスに数人の在日朝鮮人の友人がいた。それは何の違和感もないことだった。
 高校時代のある日、一人の男子生徒が「みんなに聞いてほしいことがある」と、自分の本名を名乗った。普段はひょうきんな彼の緊張した表情。だが、「名前なんかどうでもいいやん。同じ人間やんか」と、軽く流した。差別せず一緒に生きていければいい。在日の人たちの歴史を知らず、考えられたのはそこまでだった、という。
 「彼のカミングアウトが、アイデンティティーをめぐる重大な意味を含んでいたことには、その時はまったく気づきませんでした。差別しないことと、相手を理解することは違うんですね」

続きは本誌で...


むろた もとみ

1960年、兵庫県生まれ。高校時代は水泳部、大学ではチアリーダー。卒業後、広告会社のコピーライターを経てフリーランスに。ライターなどの仕事のかたわら、戦争の傷跡を訪ねる旅を続ける。共著に『戦争のつくりかた』(マガジンハウス)ほか。

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