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インタビュー

映画『こつなぎ』制作者

菊地 文代さん

  • 2009.10.25
  • 聞き手:鈴木京子
  • 撮 影:谷隆行

菊地 文代さん

エンドマークをつけて世に送り出す

 菊地文代さんの手がけた最新作が、10月12日、山形国際ドキュメンタリー映画祭の特別招待作品として上映された。『こつなぎ―山を巡る百年物語』である。岩手県小繋集落の農民が、入会権を求めて1917年(大正6)に提訴した裁判は、75年(昭和50)の和解まで争われた。映画は、その半世紀の物語を、3人のジャーナリストが残したモノクロの記録と、現在の表情を追うカラーの映像によって描き出す。
 この映画で観客に見てほしかったのは、裁判もさることながら、「50年前の日本のある地域の現実」と菊地さんは言う。「ひっそりと、でも激しい気持ちを持ち続けて、そこに生きている人がいる。それを伝えるための力を十分に持つ映像です。撮ったフィルムを生かすためには、エンドマークをつけて世に出すしかないですから」

 映画は、山形での上映に先立ち、「環境映像祭in金沢」(国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット主催)や環境問題に関するシンポジウムなどで特別上映された。それは、この映画の軸になっている「入会」が、イギリスのコモンズや、スカンジナビア諸国における万人権などと並んで、世界的に注目されているテーマだからだ。
 入会とは、一定地域の住民が特定の山林などを、共同で管理し利用することだ。60年代のエネルギー革命以前、日本人の暮らしは、燃料に始まり肥料や飼料などの農業資材に至るまで、今では想像もつかないほど山に依存していた。
 今、世界的な規模で環境破壊や資源枯渇の問題が進行するなか、日本の入会地がいかに持続可能な維持管理をされてきたかについて、国内外の研究者が関心を寄せる。近代以降の肥大した「公」と「私」に対し、「共」の領域を見直そうという動きである。
 残念ながら、過去において日本の社会は、入り合うことを大切に生きる人たちに長く苦しい闘争を課しながら経済成長を遂げ、やがてはその存在を忘れた。
 「取材を始めた当時は、安保闘争や労働運動が熱い時代だったが、その後の高度経済成長の中で、山村の入会という問題をどう位置づけるか、映画にするのがとても難しくなってしまった。それでも、いわゆる赤から緑(イデオロギーから環境)に時代の関心が移行していくなかで、その線上にこつなぎを位置づけることができた」
 「山はだれのものか?」を世間に問いかけた小繋集落の半世紀は、略奪的な資源利用や環境破壊に抵抗する現代の地球市民の声に連なっている。

続きは本誌で...

きくち ふみよ

1930年東京生まれの東京育ち。好きなものだらけで、ピアニストのグレン・グールドは特に好き。えんじ色の緞帳(どんちょう)が重々しく開き音楽が聞こえてくる、映画館全体の雰囲気で映画好きに。『パリの屋根の下』など、生き生きとした庶民の姿に胸が躍る。http://blog.livedoor.jp/kotsunagi/
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