映画は、山形での上映に先立ち、「環境映像祭in金沢」(国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット主催)や環境問題に関するシンポジウムなどで特別上映された。それは、この映画の軸になっている「入会」が、イギリスのコモンズや、スカンジナビア諸国における万人権などと並んで、世界的に注目されているテーマだからだ。
入会とは、一定地域の住民が特定の山林などを、共同で管理し利用することだ。60年代のエネルギー革命以前、日本人の暮らしは、燃料に始まり肥料や飼料などの農業資材に至るまで、今では想像もつかないほど山に依存していた。
今、世界的な規模で環境破壊や資源枯渇の問題が進行するなか、日本の入会地がいかに持続可能な維持管理をされてきたかについて、国内外の研究者が関心を寄せる。近代以降の肥大した「公」と「私」に対し、「共」の領域を見直そうという動きである。
残念ながら、過去において日本の社会は、入り合うことを大切に生きる人たちに長く苦しい闘争を課しながら経済成長を遂げ、やがてはその存在を忘れた。
「取材を始めた当時は、安保闘争や労働運動が熱い時代だったが、その後の高度経済成長の中で、山村の入会という問題をどう位置づけるか、映画にするのがとても難しくなってしまった。それでも、いわゆる赤から緑(イデオロギーから環境)に時代の関心が移行していくなかで、その線上にこつなぎを位置づけることができた」
「山はだれのものか?」を世間に問いかけた小繋集落の半世紀は、略奪的な資源利用や環境破壊に抵抗する現代の地球市民の声に連なっている。