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インタビュー

仏で提携産直

アンベール‐雨宮裕子さん

  • 2010.12.05
  • 聞き手:鈴木京子
  • 撮 影:落合由利子

アンベール‐雨宮裕子さん

農村と都市が出合うマルシェを

 「そのためには絶対これが必要なのよ。私はこれを日本で流行らせたいの」。そう言って、雨宮さんが引っ張ってきたのは、カラフルな買い物用カート(パニエ・ア・ルーレット)だ。
 「これがあれば、大きい野菜も丸ごと買える。フランスではマルシェ(朝市)で生産者と直接話をしながら、気に入った食材をたくさん買って帰って、家で料理するの。でも、東京には生産者と出合える本物のマルシェがなくて残念」
 つくった人の話を直接聞くこともできず、手にとって確かめることもできない野菜からは、農法やモノの善し悪しは見えてこない。良さが消費者に理解できなければ、安全でおいしくて環境に優しい農業は育たない。
 「だからマルシェが必要なの。だけど、パニエ・ア・ルーレットがなければ、カボチャやダイコンを丸ごと買って、バスに乗っては帰れないでしょ」

 水にまつわる民間伝承の研究をしていた雨宮さんは、学生時代にパリに留学し、ブルターニュ地方の民俗にすっかり魅せられて、フランスに居着いた。
 「日本語の『あおい海原』『あおい牧場』の『あおい』は、もともとは豊かな自然を指す形容詞。海に囲まれたブルターニュ半島にも、同じ発想の『グラース』という言葉がある。ブルターニュ地方は、フランスの他の地域とは言語も異なるブルトン(ケルト系民族)のつくった独立国だった。教会には豊玉姫のような海の母神の図像があって、それにまつわる昔話もいろいろあるの」
 しかし、そのブルターニュの村々が、農業の近代化に伴い一変してしまった。
 養豚や養鶏の大規模集約化が進むと農業労働者はいらなくなり、小学校もカフェもなくなった。村祭りの主役だった木製のマリア像の神輿は担ぎ手がいなくなり、閉ざされた教会の中で朽ちていく。
 「大好きなブルターニュの文化を守るためには村の活性化しかない」。雨宮さんは、農村と町をつなぐための行動を起こす。  ブルターニュの野菜は一度パリの中央卸売市場に出荷され、そこで売れ残ったものが首府レンヌに戻ってくる。以前から新鮮な野菜がほしいと思っていた雨宮さんは、近郊の有機生産者と町の消費者を直接結びつける「提携産直」グループを立ち上げることにした。



続きは本誌で...


アンベール あめみや ひろこ

1951年、千葉県生まれ。レンヌ第2大学教員。2008年からフランス在外研究センター研究員として日本在住。『分かち合う農業』(07年)『TEIKEIからAMAPへ』(10年)などをフランスで上梓。子どものころからモンペが好き。

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