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インタビュー

在韓軍人軍属裁判などの通訳

赤池 すなおさん

  • 2009.07.15
  • 聞き手:室田元美
  • 撮 影:落合由利子

赤池 すなおさん

「言葉」で韓国の原告たちを支える

 静まりかえった法廷で、裁判の始まりとともに一人の女性が正面に進み出る。
 「私は事実を正しく通訳することを誓います」。彼女は「グングン裁判」(在韓軍人軍属裁判)や、「ノー! ハプサ」(NO!合祀・訴訟)の通訳を務める、赤池すなおさん。裁判では弁護士とは別の意味で、韓国人の原告たちにとって頼みの綱になる。自分たちの訴えが、どれほど言葉の通じない被告や裁判官、法廷を埋める人々に受け入れてもらえるか…それはすべて、韓国語を操る赤池さんに託されているからだ。

 「グングン裁判」は、アジア・太平洋戦争中に日本軍に徴用された韓国人が謝罪と未払い賃金の支払いや遺骨返還などを求めた裁判。「ノー! ハプサ」は靖国神社に合祀されている韓国人遺族らが、合祀取り消しを求めている裁判である。原告のそばに必ず赤池さんの姿がある。
 「もともと通訳を目指していたわけではないんです。韓国に留学したのがきっかけで、裁判の支援者から話せるならお願いします、と頼まれて。法律を勉強したわけでもないし、『供託金って何?』。最初はもう、わからないことだらけでした」と穏やかに話す赤池さん。大学を卒業後、編集プロダクションで出版の仕事に携わっていた。
 30歳が近づくころ、「生活を変えてみたくなって」ソウルへの留学を決意。それまで多少、韓国語を習っていたのも「日本語と近いから覚えやすいよ」と韓国通の父親にすすめられたからだった。
 「『現代語学塾』で韓国語を習ったのですが、そこでは金嬉老事件の裁判支援もしていました。こんな事件があったのか、と初めて知ったんです。大学では差別について学び、在日韓国朝鮮人の方の証言も聞いたけれど、『見た目は同じなのに差別があるんだなあ』と思ったくらいでした。言葉を勉強していても、自分が日韓の問題にかかわることになろうとは思いもしませんでしたね」

 ソウルへの出発も間近に迫った1994年。赤池さんは突然、母親からルーツを明かされる。母方の祖父は韓国人で、戦前、来日して日本人の祖母と結婚したのだと。「うちの父も知らないことでした。私? なんだ、そうだったのか、ぐらいで。血の1/4は韓国人なわけですけど、そういうことで深刻になったり、ドラマチックに考えたりするのは好きじゃなくて」。
 「国籍なんて政治の世界でのことだから」と、赤池さん。政治によって国と国との境界がつくられる。支配する側、される側ができる。それは国籍に翻弄されていまだ安らかな戦後を迎えられない原告の人たちの存在とも重なるようだ。

続きは本誌で...

あかいけ すなお

1965年、愛知県生まれ。10歳の時に千葉へ。大学卒業後、編集プロダクションで働き、94年から1年半ソウルに留学。帰国後フリーで編集を続けるかたわら、韓国語のVTR翻訳や通訳、戦後補償裁判の通訳として活躍している。東京在住。
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